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ベルンハルト要塞の正門前に、王都から遣わされた「聖騎士団」と名乗る一団が到着しました。
彼らは白銀の鎧に身を包み、いかにも「正義の味方」といった風情を醸し出していますが、門兵たちの圧倒的な筋肉美と威圧感に、その足元は微かに震えています。
「……ナタリー・エヴァンス! 聖教会の命により、貴女を『魔女裁判』の被疑者として召喚する! 速やかに門を開け、我らに身を委ねるのだ!」
隊長らしき男が、声を裏返しながら叫びました。
すると、要塞の重厚な扉がゆっくりと開き、中から一人の女性が姿を現しました。
ナタリーは、今日も今日とて機能性重視の訓練服に、特大のフライパンを背負った姿です。
「まあ、朝っぱらから賑やかですわね。魔女裁判ですって? 私、そんなオカルトな資格は持っていませんわ。持っているのは『筋肉指導員(自称)』の資格くらいですの」
「黙れ、悪女め! 聖女リリィ様の奇跡の力を盗み、辺境伯を呪いで操っている事実は既に明白である! ……ひっ!?」
聖騎士隊長が言い終わる前に、ナタリーの背後からルードヴィヒが音もなく現れました。
その漆黒のマントを翻し、一歩踏み出すたびに、大地が鳴動するような錯覚を周囲に与えます。
「……俺の妻が魔女だというなら、この領地にいる一万の民、そして俺自身も魔族だということになるが。その首、今日中に胴体とおさらばしたいのか?」
「べ、辺境伯……! これは教会の、引いては王家の方針ですぞ! 我らに逆らうことは、反逆と見なされます!」
ルードヴィヒが腰の剣に手をかけようとしたその時、ナタリーがその逞しい腕をそっと制しました。
「待ってください、旦那様。ここで彼らを肉塊に変えてしまっては、せっかくの『王都凱旋スクワット大会』が台無しになってしまいますわ」
「ナタリー……。お前、本当にあの蛇の巣窟へ戻るつもりか? 俺なら、ここでこいつらを殲滅して、そのまま王都へ攻め込むこともできるんだぞ」
「あら、それではただの戦争ではありませんか。美しくありませんわ。……いいですか、旦那様。私は『正論』と『筋肉』で、彼女たちの嘘を完膚なきまでに叩き潰したいのです。……あ、もちろん、護衛としてあなたの軍勢は連れて行きますけれど」
ナタリーはニヤリと不敵に笑うと、震えている聖騎士たちに向き直りました。
「分かりましたわ。召喚に応じましょう。ただし、移動は私のペースで行わせていただきます。……アン! 旅の準備を! プロテインの粉末を通常の三倍、それと鉄下駄を百人分用意して!」
「ナタリー様。……王都へ行くのに鉄下駄が必要な理由を、後で詳しくお聞かせ願えますか?」
アンが溜息をつきながら尋ねると、ナタリーは拳を天に突き上げました。
「決まっているでしょう! 道中の行軍すべてをトレーニングに変えるのよ! 王都に着く頃には、我が辺境伯軍の足腰は金剛石(ダイヤモンド)をも砕く硬度になっているはずだわ!」
数日後。王都へ向かう街道には、歴史上類を見ない異様な光景が広がっていました。
先頭を行くのは、豪華な馬車……ではなく、徒歩で大地を踏みしめ、重い荷物を背負って「一、二! 筋肉! 三、四! 最高!」と唱和しながら進む一千人の精鋭騎士たち。
そしてその中心で、自らも巨大な石を担いで歩くナタリーの姿。
「ナ、ナタリー様……。聖騎士の方々が、あまりのハードな行軍に次々と脱落して、後ろの馬車に収容されていますわよ……」
「あら、情けないわね。あんな貧弱な下半身で、よくもまあ魔女なんて捕らえに来られたものですわ。……ほら、旦那様! もっと大腿四頭筋を意識して! 王都の門を蹴破る時のために!」
「……ああ、分かった。だがナタリー、門を蹴破るのは俺の役目にしてくれ。お前は、その……フライパンがあるだろう」
「ふふ、それもそうですわね。役割分担は大切ですわ」
王都の住民たちは、遠くから聞こえてくる地鳴りのような足音と、謎の「筋肉コール」に怯え上がりました。
聖女リリィが「魔女が軍勢を率いて、呪いの呪文を唱えながら近づいている」とデマを流したせいで、ナタリーたちは完全に恐怖の象徴となっていたのです。
しかし、当のナタリーはといえば……。
「見て、アン! 王都の門が見えてきたわ! あの門を潜った瞬間、私の広背筋がどれほど解放感を味わうか……ああ、楽しみで眠れませんわ!」
「……もう、勝手にしてくださいまし」
ついに、ナタリーは王都の地に足を踏み入れました。
それは、婚約破棄され、泥を塗られて追放された日から数ヶ月。
かつての令嬢とは似ても似つかない、圧倒的な「物理の化身」となった彼女の、復讐……もとい、筋肉による再教育の始まりでした。
彼らは白銀の鎧に身を包み、いかにも「正義の味方」といった風情を醸し出していますが、門兵たちの圧倒的な筋肉美と威圧感に、その足元は微かに震えています。
「……ナタリー・エヴァンス! 聖教会の命により、貴女を『魔女裁判』の被疑者として召喚する! 速やかに門を開け、我らに身を委ねるのだ!」
隊長らしき男が、声を裏返しながら叫びました。
すると、要塞の重厚な扉がゆっくりと開き、中から一人の女性が姿を現しました。
ナタリーは、今日も今日とて機能性重視の訓練服に、特大のフライパンを背負った姿です。
「まあ、朝っぱらから賑やかですわね。魔女裁判ですって? 私、そんなオカルトな資格は持っていませんわ。持っているのは『筋肉指導員(自称)』の資格くらいですの」
「黙れ、悪女め! 聖女リリィ様の奇跡の力を盗み、辺境伯を呪いで操っている事実は既に明白である! ……ひっ!?」
聖騎士隊長が言い終わる前に、ナタリーの背後からルードヴィヒが音もなく現れました。
その漆黒のマントを翻し、一歩踏み出すたびに、大地が鳴動するような錯覚を周囲に与えます。
「……俺の妻が魔女だというなら、この領地にいる一万の民、そして俺自身も魔族だということになるが。その首、今日中に胴体とおさらばしたいのか?」
「べ、辺境伯……! これは教会の、引いては王家の方針ですぞ! 我らに逆らうことは、反逆と見なされます!」
ルードヴィヒが腰の剣に手をかけようとしたその時、ナタリーがその逞しい腕をそっと制しました。
「待ってください、旦那様。ここで彼らを肉塊に変えてしまっては、せっかくの『王都凱旋スクワット大会』が台無しになってしまいますわ」
「ナタリー……。お前、本当にあの蛇の巣窟へ戻るつもりか? 俺なら、ここでこいつらを殲滅して、そのまま王都へ攻め込むこともできるんだぞ」
「あら、それではただの戦争ではありませんか。美しくありませんわ。……いいですか、旦那様。私は『正論』と『筋肉』で、彼女たちの嘘を完膚なきまでに叩き潰したいのです。……あ、もちろん、護衛としてあなたの軍勢は連れて行きますけれど」
ナタリーはニヤリと不敵に笑うと、震えている聖騎士たちに向き直りました。
「分かりましたわ。召喚に応じましょう。ただし、移動は私のペースで行わせていただきます。……アン! 旅の準備を! プロテインの粉末を通常の三倍、それと鉄下駄を百人分用意して!」
「ナタリー様。……王都へ行くのに鉄下駄が必要な理由を、後で詳しくお聞かせ願えますか?」
アンが溜息をつきながら尋ねると、ナタリーは拳を天に突き上げました。
「決まっているでしょう! 道中の行軍すべてをトレーニングに変えるのよ! 王都に着く頃には、我が辺境伯軍の足腰は金剛石(ダイヤモンド)をも砕く硬度になっているはずだわ!」
数日後。王都へ向かう街道には、歴史上類を見ない異様な光景が広がっていました。
先頭を行くのは、豪華な馬車……ではなく、徒歩で大地を踏みしめ、重い荷物を背負って「一、二! 筋肉! 三、四! 最高!」と唱和しながら進む一千人の精鋭騎士たち。
そしてその中心で、自らも巨大な石を担いで歩くナタリーの姿。
「ナ、ナタリー様……。聖騎士の方々が、あまりのハードな行軍に次々と脱落して、後ろの馬車に収容されていますわよ……」
「あら、情けないわね。あんな貧弱な下半身で、よくもまあ魔女なんて捕らえに来られたものですわ。……ほら、旦那様! もっと大腿四頭筋を意識して! 王都の門を蹴破る時のために!」
「……ああ、分かった。だがナタリー、門を蹴破るのは俺の役目にしてくれ。お前は、その……フライパンがあるだろう」
「ふふ、それもそうですわね。役割分担は大切ですわ」
王都の住民たちは、遠くから聞こえてくる地鳴りのような足音と、謎の「筋肉コール」に怯え上がりました。
聖女リリィが「魔女が軍勢を率いて、呪いの呪文を唱えながら近づいている」とデマを流したせいで、ナタリーたちは完全に恐怖の象徴となっていたのです。
しかし、当のナタリーはといえば……。
「見て、アン! 王都の門が見えてきたわ! あの門を潜った瞬間、私の広背筋がどれほど解放感を味わうか……ああ、楽しみで眠れませんわ!」
「……もう、勝手にしてくださいまし」
ついに、ナタリーは王都の地に足を踏み入れました。
それは、婚約破棄され、泥を塗られて追放された日から数ヶ月。
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