ガニメデ氷層都市の最終日

ラプ太郎

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ガニメデ氷層都市の最終日

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第一章 氷の下の楽園

私——レイラ・ヴァスケスは、ガニメデ第三氷層都市「クリオポリス」の熱管理技術者として十二年間勤務してきた。三十五歳。地球生まれだが、もはや木星の重力井戸の底に適応した体だ。

クリオポリスは、ガニメデの氷殻内部、表面から3.2キロメートルの深さに構築された人類最大の氷層都市だ。人口八万五千人。氷の融解熱を利用した地熱発電、氷中のアンモニアと一酸化炭素を原料とする化学合成農業、そして——最も重要なのは、木星の強烈な放射線から完全に遮蔽された安全な居住環境。

「レイラ、第七セクターの熱交換器に異常があります」同僚のディエゴ・サントスが報告してきた。ブラジル系の機械技師で、私の最も信頼できるパートナーだ。

私は中央管制室のホログラム・ディスプレイを確認した。都市の三次元構造図が浮かび上がる。クリオポリスは、氷層内に彫り込まれた六十四の球形居住ドーム、それらを繋ぐ四百二十本のトンネル、そして都市全体を取り囲む熱管理システムで構成されている。

「温度差が0.3ケルビン低下」私はデータを解析した。「熱交換効率が92.7%に落ちています。許容範囲ですが、トレンドが——」

「悪化しています」ディエゴが私の言葉を継いだ。「過去七十二時間で、0.8%の低下。このペースだと、十日以内に臨界値を割ります」

都市長のアマンダ・リー——五十代の華人系女性で、冷徹な判断力を持つ——が管制室に入ってきた。彼女に随行しているのは、副都市長のイワン・ペトロフ、ロシア出身の元宇宙飛行士。資源管理官のプリヤ・シャルマ、インド系の経済学者。医療主任のハッサン・アル=ファティ、エジプト出身の医師。セキュリティ主任のジェームズ・オコナー、アイルランド系の元軍人。通信技師のユキ・タナカ、日本からの移民二世。生物学者のエルザ・ミュラー、ドイツの遺伝子工学専門家。そして地質学者のカルロス・メンドーサ、メキシコ系の氷層構造の権威。

「状況は?」アマンダが端的に尋ねた。

「熱交換システムの効率低下です」私は報告した。「原因は特定できていませんが、おそらく——」

「氷層の移動」カルロスが割り込んだ。「私の最新の地震波トモグラフィーでは、都市周辺の氷層に微細な歪みが検出されています。ガニメデの潮汐加熱パターンが変化している可能性があります」

ガニメデは木星の強力な潮汐力によって内部が加熱されている。その熱が氷を融かし、氷殻と岩石核の間に液体の海を形成している——深さ百キロメートルを超える、太陽系最大の地下海。私たちの都市は、その海の「天井」である氷殻の中に埋め込まれている。

「潮汐加熱の変化は、都市の熱収支に影響します」私は説明した。「もし氷層の温度勾配が変われば、熱交換器の効率が——」

突然、警報が鳴り響いた。

「地震です!」カルロスが叫んだ。

床が揺れた。いや、正確には揺れではない——氷層全体がゆっくりと歪んでいる。マグニチュード3.2、震源深度1.8キロメートル——都市のすぐ下だ。

揺れは十秒ほどで収まった。

「被害報告を」アマンダが命じた。

ユキが通信端末を確認した。「第二十二ドームで軽微な亀裂。自己修復ナノポリマーが既に対処しています。人的被害なし」

「地震の原因は?」イワンが尋ねた。

カルロスが地震波データを解析した。「氷層の剪断破壊です。ガニメデの潮汐応力が——」彼は画面を凝視した。そして、顔が青ざめた。「まずい。これは——」

「何です?」

「木星とガニメデの軌道共鳴が変化しています」カルロスが震える声で言った。「ラプラス共鳴——イオ、エウロパ、ガニメデの1:2:4軌道共鳴が——乱れています」

私は息を呑んだ。ラプラス共鳴は、ガリレオ衛星系の安定性を保証する重力的なバランスだ。もしそれが崩れたら——

「潮汐加熱が不規則になります」私は結論を述べた。「氷層の融解パターンが変わり、構造的安定性が——」

アマンダが厳しい表情で言った。「最悪のシナリオは?」

カルロスが計算した。「現在のトレンドが続けば、七十二時間以内に——氷層が大規模崩落を起こします。都市全体が、地下海に沈む」

沈黙。

そして、私たちは理解した——

クリオポリスに、残された時間は三日間だった。



第二章 凍った時間

緊急会議が招集された。都市の全セクター長、技術者、科学者——総勢五十名が集まった。

アマンダが状況を説明した。「カルロス博士の分析によれば、軌道共鳴の変化は避けられません。原因は——」

カルロスが補足した。「小惑星帯からの重力摂動です。六ヶ月前、大質量の小惑星が木星系に接近しました。その重力的影響で、ガリレオ衛星の軌道が微妙に変化した。わずか0.0003%ですが——数億年安定していたラプラス共鳴には、十分な擾乱です」

「つまり、防ぐことはできない?」プリヤが尋ねた。

「できません。これは太陽系スケールの天体力学です」

イワンが提案した。「では、避難を。木星軌道上のステーション、エウロパ基地、イオ採掘コロニー——」

ユキが首を振った。「通信しました。最も近いエウロパ基地でさえ、受け入れ可能人数は二万人が限界です。私たちは八万五千人——」

「では、地球への帰還船は?」ハッサンが尋ねた。

「現在、軌道上に待機している輸送船で運べるのは五千人」プリヤが報告した。「次の輸送船団の到着は、四ヶ月後です」

絶望が会議室を支配した。

私は——考え続けた。何か方法はないのか。都市を救う方法は——

その時、エルザが発言した。「もし、氷層の崩落を防げたら?」

全員が彼女を見た。

「どうやって?」アマンダが尋ねた。

「生物学的な氷層強化です」エルザが説明を始めた。「私の研究室では、耐冷性バクテリアの遺伝子改変を行っています。これらのバクテリアは、氷の結晶構造を変化させ、より強固にすることができます」

「具体的には?」

「バクテリアが生成するタンパク質が、氷の結晶界面に吸着し、微小クラックの伝播を防ぎます。実験室スケールでは、氷の破断強度を40%向上させました」

ディエゴが興奮した声で言った。「それを都市周辺の氷層に散布すれば——」

「構造的強度が向上し、崩落を防げるかもしれません」カルロスが計算を始めた。「必要な散布範囲は——都市の半径五キロメートル以内。氷の体積、約120立方キロメートル」

「そんな量のバクテリアを——」ジェームズが疑った。

「生産できます」エルザが断言した。「都市の生物反応炉を全て使えば、四十八時間で必要量を——」

私が指摘した。「しかし、散布方法は? 氷層深部にどうやってバクテリアを注入するんですか?」

沈黙。

私は——ある考えが浮かんだ。危険だが、可能性はある。

「熱水ドリルです」私は提案した。「都市の熱交換システムを改造し、高温の水を氷層に噴射する。それでトンネルを掘り、バクテリア溶液を注入します」

ディエゴが理解した。「熱水は氷を融かし、バクテリアは融解水と共に氷層全体に浸透する——」

「理論的には可能です」カルロスが頷いた。「ただし、リスクがあります。熱水ドリルは氷層を不安定化させる可能性があります。崩落を防ぐつもりが、逆に促進するかもしれない」

アマンダが私を見た。「レイラ、あなたの判断は?」

私は深呼吸した。「リスクはあります。しかし、何もしなければ確実に全滅です。ならば——」

「賭ける価値がある」イワンが同意した。

一人ずつ、賛同の声が上がった。

アマンダが決断した。「実行します。エルザ博士、バクテリア生産を最優先で。レイラ、ディエゴ、熱水ドリルシステムの構築を。カルロス、氷層の監視を継続してください。全員——残り時間は六十八時間です」

私たちは散った。そして、人類史上最も困難な氷層工学プロジェクトが始まった——

二十四時間後、私とディエゴは第一号熱水ドリルを完成させていた。

「テスト開始」私は制御パネルを操作した。

熱交換器から抽出した高温水——摂氏90度——が、特殊ノズルから噴射された。氷が瞬時に融解し、直径30センチメートルのトンネルが形成されていく。

深度10メートル、20メートル、50メートル——

「順調です」ディエゴが報告した。「掘削速度、毎時8メートル。目標深度500メートルまで、あと——」

突然、警報が鳴った。

「氷層応力が急上昇!」カルロスの緊急通信が入った。「熱水ドリルの影響で、周辺の氷が熱膨張しています。マイクロクラックが——」

地震が起きた。マグニチュード4.1——先ほどより強い。

都市が、悲鳴を上げた。

「ドリル停止!」私は叫んだ。

熱水の噴射が止まった。だが、地震は続いた。

十五秒後、ようやく揺れが収まった。

ユキから報告が入った。「第七、第十二、第十九ドームで亀裂拡大。自己修復システムが対処していますが——ナノポリマーの在庫が不足しています」

私は絶望した。熱水ドリルは——逆効果だった。

その時、エルザから通信が入った。

「レイラ、別の方法があります」

「何ですか?」

「バクテリアを——直接、地下海に散布するんです」

私は驚いた。「どういうことですか?」

「氷層と地下海の境界には、無数の微細なクラックがあります。そこから海水が氷層内に浸透している。もし、地下海にバクテリアを放出すれば、自然に氷層全体に拡散します」

カルロスが賛同した。「理論的には可能です。対流による拡散——四十八時間あれば、都市周辺をカバーできるかもしれない」

「しかし」私は問題点を指摘した。「地下海まで、どうやって到達するんですか? 深さは3.2キロメートル。熱水ドリルは使えない」

沈黙。

そして、ディエゴが言った。「既存のルートがあります」

全員が彼を見た。

「第四十七ドーム——十年前、建設中に放棄された区画です。そこのシャフトは、地下海まで貫通しています」

私は記録を確認した。確かに——第四十七ドームは、建設中に予期せぬ氷層クラックに遭遇し、放棄された。そのクラックは、地下海まで続いている——

「しかし、そのシャフトは不安定です」カルロスが警告した。「いつ崩落してもおかしくない」

ディエゴが私を見た。「でも、行くしかない」

私は頷いた。

「準備します」



第三章 深海への降下

エルザのバクテリア培養は完了していた。特殊な耐圧容器に封入された、百リットルのバクテリア溶液——これが、八万五千人の命を救う鍵だった。

私、ディエゴ、そしてカルロスの三人チームが、第四十七ドームに向かった。ジェームズが警備として同行した。

放棄されたドームは、薄暗く、静寂に包まれていた。壁には建設途中の配管が露出し、床には凍結した水たまりが散在していた。

「シャフトは、ここです」カルロスが指し示した。

床に、直径2メートルの円形開口部があった。その下は——暗黒。ヘッドライトで照らしても、底は見えない。

「深度3.2キロメートル」カルロスが繰り返した。「気温はマイナス80度。気圧は地球の1.2倍——ガニメデの重力は地球の0.146倍ですが、氷の重みで圧力が高まっています」

私たちは耐寒スーツを着用した。生命維持装置、通信機、そして——バクテリア容器。

「ロープで降下します」ディエゴがウインチを設置した。「降下速度、毎分50メートル。到達まで、約六十分」

ジェームズが警告した。「通信は途切れる可能性があります。氷層が電波を減衰させます」

私は覚悟を決めた。「行きましょう」

ロープに身を預け、暗闇に降下し始めた——

深度500メートル。氷の壁が、不気味な青い光を放っていた。これは、氷の結晶構造による光の散乱——

深度1000メートル。温度計はマイナス90度を示していた。スーツのヒーターがフル稼働している。

深度1500メートル。通信が途切れ始めた。ディエゴの声が、ノイズに埋もれる——

深度2000メートル。壁に、巨大な亀裂が見えた。幅数メートル、長さは測定不能。氷層の深部応力が——

その時、氷が軋んだ。

「危ない!」カルロスが叫んだ。

亀裂が拡大し、氷の塊が崩落してきた。私はロープにしがみついた。氷塊が、私の横を落下していく——

十秒後、崩落が止まった。

「大丈夫ですか!?」ディエゴの声が、かろうじて聞こえた。

「大丈夫です......続けます」

深度2500メートル。ロープが揺れた。何かが——

見上げると、ロープが擦り切れていた。氷の鋭いエッジで——

「まずい......」

深度2800メートル。ロープが——切れた。

私は落下した。

暗闇の中、数秒間——永遠のように感じた——

そして、水に着水した。

地下海だ。

液体の水——ガニメデの氷殻の下、百キロメートルの深さを持つ、太陽系最大の海。

私は浮上した。ヘッドライトで周囲を照らす。

氷の天井が、頭上数メートルにあった。そして、周囲は——無限の暗闇。

通信機は完全に死んでいた。

私は、孤独だった。

だが、使命は残っていた。

バクテリア容器を確認した——無傷だった。

私は容器を開けた。そして、百リットルのバクテリア溶液を——地下海に放出した。

溶液が広がっていく。バクテリアが、海水と混ざり、対流に乗って拡散していく——

計算では、四十八時間で都市周辺の氷層に到達する。

私の任務は——完了した。

だが、私自身は——

ロープは切れた。通信は途絶えた。地上まで3キロメートル——

生還の見込みは、ない。

私は——ここで死ぬのか。

暗闇の中、私は浮かんでいた。地下海の水温は、摂氏2度——氷点下ではない。塩分と圧力が、凝固点を下げている。

スーツのヒーターは、あと六時間持つ。酸素は、八時間。

十分な時間——死を待つには。

だが、その時——

何かが見えた。

光——

いや、生物発光だ。

地下海に——生命がいる。

私は泳いだ。光に向かって。

そして——信じられないものを見た。



第四章 氷の下の生命

それは、巨大なクラゲのような生物だった。

直径十メートル、半透明の傘状の体。無数の触手が、優雅に波打っている。そして、体全体が青白く発光していた。

ガニメデの地下海に——生命が存在する。

私は科学者としての興奮を抑えきれなかった。これは、人類史上最大の発見だ——

クラゲが近づいてきた。触手の一本が、私に触れた——

その瞬間、私の脳内に——映像が流れ込んできた。

地下海の歴史。何億年も前、ガニメデが形成された時——氷と岩石の集積。木星の潮汐加熱が始まり、内部が融解し——地下海が生まれた。

そして、その海に——原始的な生命が誕生した。

化学合成。岩石核から湧き出る熱水に溶けた鉱物を栄養源として——バクテリア、アーキア、そしてより複雑な多細胞生物へと進化した。

太陽光のない、永遠の暗闇の中で——生命は、独自の道を歩んだ。

クラゲは——この生態系の頂点捕食者だった。知性を持ち、記憶を持ち——そして、テレパシー能力を持っていた。

私の脳内に、さらなる映像が流れ込む。

クラゲは、私たちを知っていた。

十二年前、クリオポリスが建設された時——都市の熱が、地下海に届いた。温度の変化、化学物質の流入——クラゲたちは、上の世界に何かがいることを認識した。

そして、観察し続けていた。

人間という、奇妙な生物を。

氷を掘り、都市を作り、光を灯す——地下海の住人にとって、理解しがたい行動。

だが、クラゲは知性を持っていた。観察し、学習し——そして、理解しようとした。

そして今——私が、地下海に降りてきた。

クラゲは——私を助けようとしている。

触手が、私の体を包み込んだ。優しく、傷つけないように。

そして——私を持ち上げ、泳ぎ始めた。

上方へ。氷の天井に向かって。

私は理解した。クラゲは、私を地上に返そうとしている。

だが、どうやって? 3キロメートルの氷層を——

その時、私は見た。

氷の天井に——無数の垂直なトンネルがあった。

自然に形成された、氷の亀裂。地下海の熱水が上昇し、氷を融かして作った経路——

クラゲは、そのトンネルに私を押し込んだ。

そして、下から——熱水の噴流が発生した。

間欠泉だ。地下海の熱水が、周期的に噴出している——

私は熱水に乗って、上昇し始めた。

急速に、加速して——

氷のトンネルを通り、上へ、上へ——

数分後——私は第四十七ドームに射出された。

熱水と共に、空中に放り出され——床に落下した。

「レイラ!」ディエゴの声が聞こえた。

彼らは、まだそこにいた。救助を試みていた——

私は意識を失う直前、クラゲの最後のメッセージを受け取った。

『氷の上の者たちよ、生き延びろ。私たちは、あなたたちを見守っている』

そして——暗闇に落ちた。



第五章 新しい世界

目覚めると、医療ベイにいた。

ハッサンが私の容態を確認していた。「良かった、意識が戻りましたね」

「バクテリアは......?」

「成功しました」エルザの声が聞こえた。「地下海に散布されたバクテリアは、予想通り氷層に浸透しています。都市周辺の氷の強度が、既に20%向上しました」

カルロスが補足した。「氷層の崩落リスクは、劇的に低下しています。現在の予測では——都市は安定します」

私は安堵した。「では、全員——」

「救われました」アマンダが現れた。「あなたのおかげで、レイラ」

だが、私は首を振った。「私だけじゃありません。クラゲが——」

私は説明した。地下海で見たこと。クラゲの知性。テレパシー。そして、私を救ってくれたこと。

全員が、信じられないという顔をした。

「地下海に、知的生命が......?」エルザが興奮した。

「証拠はありますか?」イワンが尋ねた。

私はヘルメットカメラの記録を再生した——だが、地下海の暗闇では、ほとんど何も映っていなかった。わずかに、生物発光の痕跡が——

「これでは、確証とは......」

その時、ユキが報告した。「地下海から、信号を受信しています」

全員が驚いた。

「信号? どんな?」

「低周波音波です。パターンがあります——まるで、言語のような」

ユキは信号を音声に変換した。

部屋に、不思議な音が響いた。

低く、うねるような——だが、明らかにランダムではない。構造化された、意味を持つ音。

エルザが解析を始めた。「これは——」彼女は画面を凝視した。「数学的パターンです。素数列、フィボナッチ数列——知性の証明」

カルロスが付け加えた。「そして、空間座標が含まれています。クリオポリスの位置を示している——」

アマンダが決断した。「応答してください。ユキ、同じパターンで返信を」

ユキが信号を送信した。

数分後——返答が来た。

より複雑なパターン。映像情報が含まれていた——

画面に、クラゲの姿が浮かび上がった。

そして、私の脳内で聞いた声と同じメッセージが、翻訳されて表示された。

『氷の上の者たちよ、私たちはあなたたちの隣人だ』

『何億年も、私たちは暗闇で生きてきた』

『だが、あなたたちが来て——初めて、私たちは知った』

『氷の上にも、世界があることを』

『これから、私たちは共に生きる』

『氷の下と、氷の上で』

『新しい時代の始まりだ』

沈黙が、管制室を支配した。

そして——歓声が上がった。

私たちは、孤独ではなかった。

ガニメデに、私たちは二つの文明が共存している。

人類と、クラゲ——氷層都市と、地下海都市。

それから三ヶ月——

クリオポリスは完全に安定した。バクテリアによる氷層強化は成功し、都市はかつてないほど堅牢になった。

そして、私たちはクラゲとの交流を深めていった。

地下海への調査ポッドを送り込み、クラゲの生態、文化、技術を学んだ。

彼らは、化学合成に基づく独自のバイオテクノロジーを発展させていた。有機物を精密に制御し、生物機械を作り出す技術——

一方、私たちは彼らに、光、電気、機械工学の概念を教えた。

技術交換が始まった。クラゲのバイオテクノロジーと、人類の機械工学——二つが融合し、新しい技術体系が生まれた。

私は、クラゲとの共同プロジェクトのリーダーに任命された。

プロジェクト名——「シンビオシス」。共生。
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