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ようこそ摩訶不思議堂へ 不思議な時計
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🕰 摩訶不思議な時計
あの不思議な饅頭屋「摩訶不思議堂」が消えてから、もう一年。
京都の大学を卒業した真(しん)くんは、就職して毎日忙しく働いとった。
会議に追われ、満員電車に詰められ、
気づけば朝が来て夜が終わる。
子どものころ夢見た自由は、どこへ行ってしもたんやろか――
そんなある日。
出張帰りの夜、四条通りを歩いてると、
また見覚えのある金色の文字が目に飛び込んできた。
「摩訶不思議堂」
そこには、前と同じおばあさん。
今度は、ガラスのケースいっぱいに古い時計を並べていた。
「おお、坊や、また来よったかいな。」
「えっ!? 一年前に店、消えてたじゃないですか!」
「せやろ? でも“時間”は場所を選ばんねん。」
おばあさんは微笑んで、小さな懐中時計を取り出した。
金色に輝くその時計の針は、止まっとる。
「これ、壊れてるんですか?」
「ちゃう。“動いてへん時間”を見せる時計や。」
真くんが首をかしげてると、
おばあさんは懐中時計を手渡した。
「ええか? “針”を右に回したら、
“あのとき戻りたい時間”に帰れる。
左に回したら、“まだ見ぬ未来”が見える。」
半信半疑で、真くんは右に一回転させた。
ふっと風が吹いて――気がつくと、そこは高校の教室やった。
窓の外は夕焼け。
前の席では、かつての同級生・葵(あおい)が笑っていた。
卒業前に、告白できんかったあの子。
真くんの胸がぎゅっと締めつけられる。
「……もう一回だけ言わせてくれ。」
彼は勇気を出して声をかけた。
「葵、俺――」
その瞬間、また風が吹き、現実に戻った。
おばあさんは静かに笑って言った。
「ほらな。戻りたい時間は、思い出として生きとる。
ほんまに戻る必要なんて、ないんや。」
真くんは時計を見つめて、静かにうなずいた。
「……じゃあ、左に回したら?」
おばあさんはにやっと笑った。
「そっちはあかん。
未来は“見たら変わる”さかいな。」
おばあさんが茶を淹れる音だけが、静かに響いた。
そして真くんが顔を上げたとき、店はもう消えていた。
その夜、真くんは夢を見た。
どこかで聞いた声が言う。
「“今”を生きることが、いちばん摩訶不思議なんやで。」
🌕
あの不思議な饅頭屋「摩訶不思議堂」が消えてから、もう一年。
京都の大学を卒業した真(しん)くんは、就職して毎日忙しく働いとった。
会議に追われ、満員電車に詰められ、
気づけば朝が来て夜が終わる。
子どものころ夢見た自由は、どこへ行ってしもたんやろか――
そんなある日。
出張帰りの夜、四条通りを歩いてると、
また見覚えのある金色の文字が目に飛び込んできた。
「摩訶不思議堂」
そこには、前と同じおばあさん。
今度は、ガラスのケースいっぱいに古い時計を並べていた。
「おお、坊や、また来よったかいな。」
「えっ!? 一年前に店、消えてたじゃないですか!」
「せやろ? でも“時間”は場所を選ばんねん。」
おばあさんは微笑んで、小さな懐中時計を取り出した。
金色に輝くその時計の針は、止まっとる。
「これ、壊れてるんですか?」
「ちゃう。“動いてへん時間”を見せる時計や。」
真くんが首をかしげてると、
おばあさんは懐中時計を手渡した。
「ええか? “針”を右に回したら、
“あのとき戻りたい時間”に帰れる。
左に回したら、“まだ見ぬ未来”が見える。」
半信半疑で、真くんは右に一回転させた。
ふっと風が吹いて――気がつくと、そこは高校の教室やった。
窓の外は夕焼け。
前の席では、かつての同級生・葵(あおい)が笑っていた。
卒業前に、告白できんかったあの子。
真くんの胸がぎゅっと締めつけられる。
「……もう一回だけ言わせてくれ。」
彼は勇気を出して声をかけた。
「葵、俺――」
その瞬間、また風が吹き、現実に戻った。
おばあさんは静かに笑って言った。
「ほらな。戻りたい時間は、思い出として生きとる。
ほんまに戻る必要なんて、ないんや。」
真くんは時計を見つめて、静かにうなずいた。
「……じゃあ、左に回したら?」
おばあさんはにやっと笑った。
「そっちはあかん。
未来は“見たら変わる”さかいな。」
おばあさんが茶を淹れる音だけが、静かに響いた。
そして真くんが顔を上げたとき、店はもう消えていた。
その夜、真くんは夢を見た。
どこかで聞いた声が言う。
「“今”を生きることが、いちばん摩訶不思議なんやで。」
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