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第一章
カンナギ・ガンスリンガー 7
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一限目が終わった後から、煌津は合間の休み時間を利用して、それとなく彼女の姿を探した。何せ銀髪の子だ。目立つはずだと踏んで、他のクラスを覗いてみるが、それらしい子はいなかった。考えてみれば同級生かどうかもわからないのだから、見つからなくても仕方ないかもしれない。
『吐菩加美依身多女』
定期入れを取り出して、内側に書かれた文字を眺める。
(あの子が書いたのか?)
一字一字漢字変換して、スマホで検索してみる。出典の怪しそうなサイトが表示される。
〈三種祓詞〉
〝三種祓詞「吐菩加美依身多女 祓い給え 清め給え」は、神道に伝わる穢れを祓う言葉です。
読み方は「トホカミエミタメ ハライタマエ キヨメタマエ」と読み、これを唱える事で、自分の穢れや、外からやって来る穢れを祓うのです。〟
「神道……」
トホカミエミタメなら何となく覚えがある。こういう漢字を書くとは知らなかったが、ちょっとマニアックなオカルト系の漫画で言葉自体は知っていたのだ。
銀髪で、他人の定期入れの内側に、マジックで神道の言葉を書く女子。
(絶対目立つでしょ)
そう考えた後、今朝の事を思い返す。
あの時、駅前で囚われた不思議な、暗い感情に飲み込まれている感覚。彼女が現れなかったら、自分はどうなっていただろうか。自分の中で、『何かをやってしまっていい』、『箍を外してしまっていい』という感覚が大きくなっていた。
あれはつまり、『穢れ』ではなかったのか。ウイルスのように飛来して、内側で勢力を増していく『穢れ』。そしてもし、あの異様な感覚を、彼女が定期入れに書いたこの言葉が祓ったのだとしたら。
普通の人なら鼻で笑うだろうが、煌津には、この発想を確信するに至る過去の体験がある。
(見つけないと)
とりあえず、すぐに次の授業だ。そのあと昼休みになる。そこでもう一度探しに行こう。
「てか、あたしさあ。見ちゃったんだよねえ、朝の」
「え……まじで?」
クラスの後方で声がした。どこか得意げな声が。
「ヤバぁ。オカ研じゃーん」
「いや別にオカ研じゃねーし。違うの。朝練で早かったからさあ、警察が来た直後くらいだったのかなー。ビニール? みたいなのかける時に……」
――呪。
黒い霧のような闇が、煌津の周囲に立ち込め始めている。
悪い予感がする。
絶対にいる。この教室の中に――……
「首がさあ、雑巾みたいに捩じれた――」
呪。呪。呪。
「女の人の顔と目が――」
『吐菩加美依身多女』
定期入れを取り出して、内側に書かれた文字を眺める。
(あの子が書いたのか?)
一字一字漢字変換して、スマホで検索してみる。出典の怪しそうなサイトが表示される。
〈三種祓詞〉
〝三種祓詞「吐菩加美依身多女 祓い給え 清め給え」は、神道に伝わる穢れを祓う言葉です。
読み方は「トホカミエミタメ ハライタマエ キヨメタマエ」と読み、これを唱える事で、自分の穢れや、外からやって来る穢れを祓うのです。〟
「神道……」
トホカミエミタメなら何となく覚えがある。こういう漢字を書くとは知らなかったが、ちょっとマニアックなオカルト系の漫画で言葉自体は知っていたのだ。
銀髪で、他人の定期入れの内側に、マジックで神道の言葉を書く女子。
(絶対目立つでしょ)
そう考えた後、今朝の事を思い返す。
あの時、駅前で囚われた不思議な、暗い感情に飲み込まれている感覚。彼女が現れなかったら、自分はどうなっていただろうか。自分の中で、『何かをやってしまっていい』、『箍を外してしまっていい』という感覚が大きくなっていた。
あれはつまり、『穢れ』ではなかったのか。ウイルスのように飛来して、内側で勢力を増していく『穢れ』。そしてもし、あの異様な感覚を、彼女が定期入れに書いたこの言葉が祓ったのだとしたら。
普通の人なら鼻で笑うだろうが、煌津には、この発想を確信するに至る過去の体験がある。
(見つけないと)
とりあえず、すぐに次の授業だ。そのあと昼休みになる。そこでもう一度探しに行こう。
「てか、あたしさあ。見ちゃったんだよねえ、朝の」
「え……まじで?」
クラスの後方で声がした。どこか得意げな声が。
「ヤバぁ。オカ研じゃーん」
「いや別にオカ研じゃねーし。違うの。朝練で早かったからさあ、警察が来た直後くらいだったのかなー。ビニール? みたいなのかける時に……」
――呪。
黒い霧のような闇が、煌津の周囲に立ち込め始めている。
悪い予感がする。
絶対にいる。この教室の中に――……
「首がさあ、雑巾みたいに捩じれた――」
呪。呪。呪。
「女の人の顔と目が――」
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