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第一章
三話 心の中心へ
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レフトは歩いている。
距離にするのが恐ろしいほど歩いている。相当な時間も経過しているだろう。だが不思議なことに疲労はない。いくらでも歩いていられる。
「物理の法則が通用しないってのは、いいんだか悪いんだか…不思議な気分だわ…」
ぶつぶつぼやいていると遠方に人が立っているのが確認できる。スラリとした体型からおそらく女性…そして知っている人物…。
「たどり着いたのねレフト」
「…アレサ、やっぱりそうだったか」
「よかった、迷って精神崩壊する者が多いのよ」
「精神崩壊…ここはいったいどこなの?」
「私もよく知らないけど、ここはあなたの心の中らしいわ」
「…心の中…」
ずいぶんとありきたりな世界だな。
気を失って精神世界をさまようだの定番すぎるだろ…と思うレフト。
「前に聞いたことがあるの。人は悪魔と一定時間以上接触すると体調を崩したり、ショックで気を失うことがあるらしいわ」
「…そうなのか…」
「個人差があるらしいんだけど。とはいえ気を失うレベルの人はごく僅かみたいよ」
「ごく僅かな人なのかな」
「うん、ごく僅かね」
二人はニタニタと笑い、この状況を楽しんでいるようだ。
「ホープが教えてくれたのよ」
「先生は…悪魔…なんだね…」
「うん。私以外の悪魔と接触したことで今回は気を失ったのだと思うわ」
「…アレサはどうやってこの世界に来たの?」
レフトは一番の疑問を聞いた。
アレサは意志があるように見えて現実世界と変わらないようだが…。
「それだけあなたは私を鮮明に記憶しているということよ」
「…記憶?」
「この姿はあなたのイメージがつくったもの。ここでの出来事はつじつまが合わないこともあるでしょうが現実世界とは違うと認識できたからこそ私をイメージできたのよ」
「…あくまでも自分のイメージでしかないと……悪魔だけに」
「…」
場の空気が凍りつく。
「…なるほどね、自分のギャクを自分が笑うってのはどうかと思うわ…」
「冷静さと世界を認識できるようになってあなたは今、この世界をコントロールできるようになった。それが何を意味するかわかるかしら?」
アレサはゆっくりとレフトに近づく。
接近に戸惑うレフト。
「それは…」
「それは? 何かしら?」
「自分を…コントロールできる…こと?」
言葉を発したその瞬間、目の前が真っ白になり、正面のアレサを含めた全てが崩れ落ちた。
真っ白い空間にレフトだけが存在している。目を閉じて、ここはどこだと頭で思考すると、何故かここは「心の中心」と認識できる。
ゆっくりと周囲を見渡すとここが白い炎の中だということがわかる。
「到着していたのか…」
レフトは座り深呼吸をして、心を無にした。
様々な出来事やこれからすべきことが多数あるのだが、それらを一時的に忘れて心を空っぽにするよう努めた。
だんだんと出来事や考え事が消滅していく手応えを感じた。
だが、突然、正体不明の物体が現れて、人の姿を形成していく。白い皮膚に黒い服、まるでモノクロのようだ。
レフトはその正体に心当たりがあった。
自分の中にある唯一コントロールできていないところ…それ…。
次回へ続く
距離にするのが恐ろしいほど歩いている。相当な時間も経過しているだろう。だが不思議なことに疲労はない。いくらでも歩いていられる。
「物理の法則が通用しないってのは、いいんだか悪いんだか…不思議な気分だわ…」
ぶつぶつぼやいていると遠方に人が立っているのが確認できる。スラリとした体型からおそらく女性…そして知っている人物…。
「たどり着いたのねレフト」
「…アレサ、やっぱりそうだったか」
「よかった、迷って精神崩壊する者が多いのよ」
「精神崩壊…ここはいったいどこなの?」
「私もよく知らないけど、ここはあなたの心の中らしいわ」
「…心の中…」
ずいぶんとありきたりな世界だな。
気を失って精神世界をさまようだの定番すぎるだろ…と思うレフト。
「前に聞いたことがあるの。人は悪魔と一定時間以上接触すると体調を崩したり、ショックで気を失うことがあるらしいわ」
「…そうなのか…」
「個人差があるらしいんだけど。とはいえ気を失うレベルの人はごく僅かみたいよ」
「ごく僅かな人なのかな」
「うん、ごく僅かね」
二人はニタニタと笑い、この状況を楽しんでいるようだ。
「ホープが教えてくれたのよ」
「先生は…悪魔…なんだね…」
「うん。私以外の悪魔と接触したことで今回は気を失ったのだと思うわ」
「…アレサはどうやってこの世界に来たの?」
レフトは一番の疑問を聞いた。
アレサは意志があるように見えて現実世界と変わらないようだが…。
「それだけあなたは私を鮮明に記憶しているということよ」
「…記憶?」
「この姿はあなたのイメージがつくったもの。ここでの出来事はつじつまが合わないこともあるでしょうが現実世界とは違うと認識できたからこそ私をイメージできたのよ」
「…あくまでも自分のイメージでしかないと……悪魔だけに」
「…」
場の空気が凍りつく。
「…なるほどね、自分のギャクを自分が笑うってのはどうかと思うわ…」
「冷静さと世界を認識できるようになってあなたは今、この世界をコントロールできるようになった。それが何を意味するかわかるかしら?」
アレサはゆっくりとレフトに近づく。
接近に戸惑うレフト。
「それは…」
「それは? 何かしら?」
「自分を…コントロールできる…こと?」
言葉を発したその瞬間、目の前が真っ白になり、正面のアレサを含めた全てが崩れ落ちた。
真っ白い空間にレフトだけが存在している。目を閉じて、ここはどこだと頭で思考すると、何故かここは「心の中心」と認識できる。
ゆっくりと周囲を見渡すとここが白い炎の中だということがわかる。
「到着していたのか…」
レフトは座り深呼吸をして、心を無にした。
様々な出来事やこれからすべきことが多数あるのだが、それらを一時的に忘れて心を空っぽにするよう努めた。
だんだんと出来事や考え事が消滅していく手応えを感じた。
だが、突然、正体不明の物体が現れて、人の姿を形成していく。白い皮膚に黒い服、まるでモノクロのようだ。
レフトはその正体に心当たりがあった。
自分の中にある唯一コントロールできていないところ…それ…。
次回へ続く
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