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第一章
二十話 男が隠すもの
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集落に戻ったレフトたちはすぐにレオを休ませようとした。
だが彼はどうしても二人に伝えたいことがあると言う。
「ジジにはいちょう周辺警備をお願いしたわ。身体に負担となるだろうから…簡潔にね」
「はい…」
レフト、アレサ、ミーナの四人はレオの話を聞く。
「リバスの理想が実現できれば世界は瞬く間に復興再生すると思います」
いきなり結論を話すレオ。
ミーナもレオが再生会なる組織に属している事実を知らなかったようだ。
「魔法を使える者とは直接交渉する姿や、統括なのに抑えて込まない不思議な魅力があり彼女を慕う人は多いんです」
「慕うって……あなたまさか、洗脳されているの…」
アレサはさらに続けようとしたが、レフトがそれを制止した。
「リバスは再生だの巨大な団体をつくるとか言っていたが……多くの人たちは今、そんな団体などは求めていないんだ」
「…」
レフトは冷静だ。
世界を牽引するリーダーは確かに必要ではあるが…まだそういう人物を決める段階ではないと思われる。
「個人が自分を守れる世界になればいいよね…」
レフトは優しくレオに伝える。
ミーナも続けてレオと話す。
「あなたは洗脳されていようが私を救ってくれた。だから私はあなたを信じるわ」
ミーナの言葉に涙するレオ。
「リバスをこのまま放置するのは危険だと思う」
「私もそう思うわ」
「危険なことは俺にもわかっていました。ですから…リバスは…悪魔だと…」
悪魔というワードが発せられ黙り込む二人。
「…悪魔は恐ろしい。彼女の下にいれば、優れた医療設備により多くの人を救えますが、その代償は…全てを再生会に捧げることです…」
「…」
「治療が必要な子供から高齢者まで多くの命を救ってきましたが…」
「…目の前の大切な人を救えなかった…」
アレサの強烈な言葉がレオに刺さる。
「はい…世界を救える、世界は変わるんだと思っていたけど……そばにいてくれた大切な人を守れなかった…」
レオは咳き込みつらそうだ。
「守ってくれたでしょ。救ってくれたわ」
突然ミーナが大声を出す。
「…だいたい話が見えてきたわ」
アレサが呟く。
ミーナはレオの手を握りゆっくりとした口調で話す。
「レオ…私はあなたと一緒に暮らしたい。あなたはどうしたいの?」
ミーナはレオに真意を問う。
沈黙するレオだがミーナは引かずレオの目をみる。
するとレオはレフトをみて話し出す。
「レフトさん、リバスを追い詰めたり、拒否することは多くのメンバーを敵に回すことになります。可能なら復興機関と連携できるよう取り次いでもらえないでしょうか…」
レオはあくまでもリバスと争うことを避けたいようだ。
「取り次ぐって…レオあなた…レフトは…」
「レオさん、復興機関はどの組織、勢力、いかなる国の干渉は一切受けない中立を貫く団体です。再生会がどのような組織かわからないけど連携はできないと思います」
「…」
「今、理由があって機関を離れているため、私はただの一般人で、決断する権利などありませんよ」
拒否されたレオは落ち込む。
ミーナはそんな彼を抱きしめる。
「レフトさんに頼むのは間違っているわよ」
「レオ…あなた、ミーナを助けるため再生会を離反したんでしょ」
「…はい」
「だけど再生会はそれを許さなかった。あなたが優秀な人材であることから連れ戻そうとしたが…」
「くっ…」
アレサは淡々と話す。
レオは観念したのか口を開く。
「アレサさんの言う通りです。いかなる治療、薬を持ってしてもミーナを救うことはできなかった」
レオにのしかかっていた重圧はなくなったようだ。
「非現実的な幻獣の血を求めたことで職を失いました。そして期をみて脱走しここへきました」
「…」
皆、レオの話を静かに聞いている。
「そこでアレサさんレフトさんと出会いました。俺はゾルム様の存在に驚きましたが、二人にはそれ以上の衝撃を受けました。それと同時に二人と協力すれば再生会へ戻れるんじゃないかと思ったんです」
「協力?」
「すみません」
「それで…追手にわざと捕まり私たちの情報を流した」
「そうです」
事実を知り泣き崩れるミーナ。
「レオ、レフトの存在が知れた以上、私たちはここにはいられない。再生会にあなたが報復されようが、売られた私たちにはあなたを助ける義理はない」
「その通りです。全ては俺が…」
「自分を責めても事態は解決しない。人間は弱い生き物だからあなたの行動を誰も悪く言えないと思うわ」
「レオさん、彼女を守ってあげて下さいね」
「これ以上話しても意味は無いし、あなたの体調が悪化するわ」
二人は話を終わらせ去った。
「…よく耐えたねアレサ」
「私を交渉の材料にするならまだいいけど…レフトを売ったアイツは許せないわ」
「葛藤があったと思う」
「レフトは腹が立たないのかしら」
「なんか、闘技大会の時、必死に負傷者の救護をしている姿をみているから…」
「みているから同情したの?」
「いや、上手く言えないけどレオさんは医者なんだと思う」
「…私にはそれ…理解できそうもないわ」
「ふっ…」
「何笑ってんのよっ」
絶望するレオたちとは対照的にアレサとレフトは和やかだ。
自分の行動で自ら追い込まれてしまったレオはどう動くのか。
ミーナの考えはどうなのか。
約束の日にレフトたちはどう行動するのか。
突如現れた謎の聖女リバス、付き人のユニオンの実力は…。
次回へ続く
だが彼はどうしても二人に伝えたいことがあると言う。
「ジジにはいちょう周辺警備をお願いしたわ。身体に負担となるだろうから…簡潔にね」
「はい…」
レフト、アレサ、ミーナの四人はレオの話を聞く。
「リバスの理想が実現できれば世界は瞬く間に復興再生すると思います」
いきなり結論を話すレオ。
ミーナもレオが再生会なる組織に属している事実を知らなかったようだ。
「魔法を使える者とは直接交渉する姿や、統括なのに抑えて込まない不思議な魅力があり彼女を慕う人は多いんです」
「慕うって……あなたまさか、洗脳されているの…」
アレサはさらに続けようとしたが、レフトがそれを制止した。
「リバスは再生だの巨大な団体をつくるとか言っていたが……多くの人たちは今、そんな団体などは求めていないんだ」
「…」
レフトは冷静だ。
世界を牽引するリーダーは確かに必要ではあるが…まだそういう人物を決める段階ではないと思われる。
「個人が自分を守れる世界になればいいよね…」
レフトは優しくレオに伝える。
ミーナも続けてレオと話す。
「あなたは洗脳されていようが私を救ってくれた。だから私はあなたを信じるわ」
ミーナの言葉に涙するレオ。
「リバスをこのまま放置するのは危険だと思う」
「私もそう思うわ」
「危険なことは俺にもわかっていました。ですから…リバスは…悪魔だと…」
悪魔というワードが発せられ黙り込む二人。
「…悪魔は恐ろしい。彼女の下にいれば、優れた医療設備により多くの人を救えますが、その代償は…全てを再生会に捧げることです…」
「…」
「治療が必要な子供から高齢者まで多くの命を救ってきましたが…」
「…目の前の大切な人を救えなかった…」
アレサの強烈な言葉がレオに刺さる。
「はい…世界を救える、世界は変わるんだと思っていたけど……そばにいてくれた大切な人を守れなかった…」
レオは咳き込みつらそうだ。
「守ってくれたでしょ。救ってくれたわ」
突然ミーナが大声を出す。
「…だいたい話が見えてきたわ」
アレサが呟く。
ミーナはレオの手を握りゆっくりとした口調で話す。
「レオ…私はあなたと一緒に暮らしたい。あなたはどうしたいの?」
ミーナはレオに真意を問う。
沈黙するレオだがミーナは引かずレオの目をみる。
するとレオはレフトをみて話し出す。
「レフトさん、リバスを追い詰めたり、拒否することは多くのメンバーを敵に回すことになります。可能なら復興機関と連携できるよう取り次いでもらえないでしょうか…」
レオはあくまでもリバスと争うことを避けたいようだ。
「取り次ぐって…レオあなた…レフトは…」
「レオさん、復興機関はどの組織、勢力、いかなる国の干渉は一切受けない中立を貫く団体です。再生会がどのような組織かわからないけど連携はできないと思います」
「…」
「今、理由があって機関を離れているため、私はただの一般人で、決断する権利などありませんよ」
拒否されたレオは落ち込む。
ミーナはそんな彼を抱きしめる。
「レフトさんに頼むのは間違っているわよ」
「レオ…あなた、ミーナを助けるため再生会を離反したんでしょ」
「…はい」
「だけど再生会はそれを許さなかった。あなたが優秀な人材であることから連れ戻そうとしたが…」
「くっ…」
アレサは淡々と話す。
レオは観念したのか口を開く。
「アレサさんの言う通りです。いかなる治療、薬を持ってしてもミーナを救うことはできなかった」
レオにのしかかっていた重圧はなくなったようだ。
「非現実的な幻獣の血を求めたことで職を失いました。そして期をみて脱走しここへきました」
「…」
皆、レオの話を静かに聞いている。
「そこでアレサさんレフトさんと出会いました。俺はゾルム様の存在に驚きましたが、二人にはそれ以上の衝撃を受けました。それと同時に二人と協力すれば再生会へ戻れるんじゃないかと思ったんです」
「協力?」
「すみません」
「それで…追手にわざと捕まり私たちの情報を流した」
「そうです」
事実を知り泣き崩れるミーナ。
「レオ、レフトの存在が知れた以上、私たちはここにはいられない。再生会にあなたが報復されようが、売られた私たちにはあなたを助ける義理はない」
「その通りです。全ては俺が…」
「自分を責めても事態は解決しない。人間は弱い生き物だからあなたの行動を誰も悪く言えないと思うわ」
「レオさん、彼女を守ってあげて下さいね」
「これ以上話しても意味は無いし、あなたの体調が悪化するわ」
二人は話を終わらせ去った。
「…よく耐えたねアレサ」
「私を交渉の材料にするならまだいいけど…レフトを売ったアイツは許せないわ」
「葛藤があったと思う」
「レフトは腹が立たないのかしら」
「なんか、闘技大会の時、必死に負傷者の救護をしている姿をみているから…」
「みているから同情したの?」
「いや、上手く言えないけどレオさんは医者なんだと思う」
「…私にはそれ…理解できそうもないわ」
「ふっ…」
「何笑ってんのよっ」
絶望するレオたちとは対照的にアレサとレフトは和やかだ。
自分の行動で自ら追い込まれてしまったレオはどう動くのか。
ミーナの考えはどうなのか。
約束の日にレフトたちはどう行動するのか。
突如現れた謎の聖女リバス、付き人のユニオンの実力は…。
次回へ続く
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