ダークライトラブストーリー2

雪矢酢

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後編

八話 アークメイジ

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「…」


「リリ、答えて…」


うつむき無言のリリを見るカノン。


「…ライトは……ライトの本心は…あなたを…リリを…憎んでいる?」


「…カノン様、私は一度消滅した存在です。屁理屈みたいですが、そのおかげであなたに会えました」


「…」


「ライトの憎しみが私にだけむけば良かったのですが…」


顔をあげカノンを見るリリ。


「リリ…だけに?まさかライトは…世界を…」


「ライトは魔法協会の人徳ある有能な委員長でした…ですがある事件をきっかけにアークメイジになってしまったのです」


「アークメイジ?」


「はい、アークメイジは世界にとって脅威の存在で、魔王に匹敵する邪悪な魔法使いです」


「邪悪な魔法使いって…ライトが…そんな…」


「世界の脅威たる魔王と邪悪で全てを破壊するアークメイジ…私は世界を崩壊しかねない強大な二つの力を封印している、それをお伝えしたかったのです」


「…以前、ライトは話していたわ」


「カノン様?」


「自分が…怖い……魔力を全開にすると無差別に破壊してしまうのではないかと、自分を恐れていた…」


「ライトが…言ったのですか…」


「そうよ…」


沈黙する二人。
ライトの封印がどのくらいの規模なのか知らないカノン。
ライトが力を恐れている事実を聞き言葉を失うリリ。


「ねえリリ」


「……失礼しました、少し驚いてしまって…」


「いいのよ、私はわがままだからライトもあなたも消滅してほしくないの」


「カノン様…」


「アークメイジが危険な存在なら…殴ってでも正気に戻すわ…多少痛めつけてもライトなら大丈夫でしょう…」


「…カノン様らしい…お言葉で……」


偽りなきカノンの言葉、それを聞きリリは涙した。


「ちょっと…リリ…大丈夫?」


「申し訳ないです、ではライトに何があったのか、先ほどの話の続きを…」







人を討つことができず傷心したクロバ。
ライトは繊細な彼女が気になり、見舞い、励ました。
そんなこんなで彼女は無事回復。
人目を避けて静まった訓練場で密かにリハビリを初めていた。


「ふぅ…」


戦士協会の訓練場にて剣を振るうクロバ。


「ほう、見事なものですね戦士クローバー」


「誰?」


無人のはずな訓練場に気配を感じるクロバ。
視線の先には黒いローブに身を包んだ者がいた。
不気味な姿に身構えるクロバ。


「これは失礼、私はバルムガイスト」


「バルムガイスト?」


「おやおや、もう私の名を知る者すらいないとは…残念です」


「そ、そんなことよりここは関係者以外立入禁止よ」


「ふふふ、戦士としての実力は申し分ないですが、ファジを討てなかったとか…」


「き、貴様…」


「私はあなたの価値を知っています」


「なんだと…」


「戦士協会はあなたを評価していますが、仲間たちはどうでしょうか?」


訓練場内は特殊空間魔法が発動しており、なんと別フロアにいる戦士たちの会話が突然聞こえてくる。


「こ、これはいったい…」


「あなたには現実を知ってほしくてね。さあ戦士たちの声をお聞きください」


…魔法使いと組むとは戦士の恥だろう。
…女に戦士はつとまらんだろよ。
…あいつはいつかオレが蹴落としてやるぜ。
…ムリムリ、すんげー強いから返り討ちになるぞ。
…いやいや、隊長の訓練でさ、あいつは対人での致命的弱点、人を殺めることができない教育をされたんだぜ。


「そ、そんな…」


「くっくっくっ、その隊長…」


高笑いするバルムガイストは血塗れの剣を見せる。


「その剣は…隊長が持つディフェンダー…」


「訓練を勝手に改変した隊長を君に変わり処刑しておきましたよ」


血塗れのディフェンダーをクロバに差し出すバルムガイスト。


「あ、あなた何者よ…私は…」


震える手で自分の剣を握りバルムガイストと対峙するクロバ。


「おやおや、隊長だけでは不満ですか…なら戦士協会ごと…」


その時、バルムガイストは何かを感じて空間魔法を解除する。


「…」


「邪魔が入ったか、また今度ゆっくりとお話しましょう」


バルムガイストは転移し、その場に座り込むクロバ。


「おい、クロバ、しっかりせい」


「…」


訓練場に白銀の鎧をまとった老戦士と竜人らしき二名の戦士が駆けつける。


「ドラル、クロバを医務室へ」


「はっ、直ちに」


ドラルはまたしても放心状態となったクロバを医務室へ向かう。


「ジェネラル様、ガイ隊長のディフェンダーが…」


もう一人の竜人が血塗れのディフェンダーを拾う。


「…うむ」


「まさかガイ隊長はクロバに…」


「…クロバは…人を殺せぬ……どうやら闇がここにも迫ってきたか…」



ワイト国の闇、魔闘士ファジはクロバとライトが倒したのだが、近頃協会関係者の怪死が多発。
事態を重くみた総合は魔法使いライトを呼び出し話を聞いた。


「ようこそ魔法協会委員長殿」


総合協会は地味な建物で、魔法や戦士協会程人員はいない。
民家をそのまま事務所として使用し一般人のような人物が受付対応している。


「すみません、こちらに召集されたのですが…」


「はいライト様ですね、あちらの部屋でお待ちください」


奥の部屋を指差す受付。
古くて地味ではあるが、よく見ると建物の構造は合理的だ。
広い受付は混雑回避の機能を発揮し、スムーズな対応は他の協会にはない。
案内された部屋はお世辞にもきれいとはいえないが、何か不思議な空間である。


「なんとも不思議な空間だ…見た目に騙されるな…ということか……」


「ふふ、さすが委員長、他の魔法使いたちとは違う、完成された存在のようね」


音もなく部屋へ入室してきたのは総合のセイントフェザーだ。


「あ、あなたは…セイントフェザー…」


「また会えましたね」


…全く気配を感じなかった。
それにここまで洗練された魔力を感じるのは初めてだぞ。


「えっと…」


「ふふ、気になりますか?」


「えっ…」


「魔力のことや私がどうやって部屋へ入室したのかと」


「それは…」


戸惑うライトをニコニコ笑うセイントフェザー。


「ライト、聞いてください」


「はい…」


「ファジは悪でしたが、組織をつくり、どうあれ秩序があった」


「そうですね、悪人でしたが、カリスマ性というか、親しみやすさというか……慕う者たちが多数いました」


「悪が討たれ、隠れていた邪悪が姿を見せたようなのです」


「隠れていた邪悪?」


…ファジが裏組織首領のはず。
まさか奴を裏で操った存在がいた…。


「総合の幹部や魔法協会でも何名かが消息不明になったと報告があったでしょう?」


「はい、ですが、それは我々が調べる必要はないと…」


「なるほど…」


セイントフェザーはその言葉を聞き考え込む。
協会幹部の怪死は市民たちでも噂になっている。
魔法協会ではこの件の調査を禁止と決めた。
原因不明な一件を調べ、行方不明が多発すると協会運営が困難になるからだ。


「ディアトラは総合に任せるということね」


「えっと…」


「ふふ、ごめんなさいね。上司を悪く言うつもりはないのよ。魔法使いたちは自ら動くには時間がかかる、あなたが一番理解しているでしょう」


「そ、そうですね。ディアトラ様は慎重な方で、同じ思考の者たちで周囲を固めています…」


「ライト、この際だから伝えますが、あなたは総合に配属となります」


「えっ…総合協会にですか…」


「はい、総合も動きが強烈に遅いので、すぐにとはいきませんが…これは確定です」


「…この一件を片付けて、それを手柄とし総合になる…それがあなたの絵ですか…セイントフェザー様」


「さあね、私はあなたをずっと評価していたわ、魔法協会の委員長は人格者で魔法使いらしくない」


ニコニコ笑い話すセイントフェザー。
その笑みは無邪気な乙女のようであり、とても協会の主には見えない。


「分かりました、総合の件はひとまず忘れ、目の前の一件を早急に解決致します」


ライトはセイントフェザーに頭を下げて任務を引き受ける。


「ライト、あなたの決意に感謝致しますが…十分に気をつけて下さい」


「ふふ、お願いして、今度は気をつけて下さいですか?」


「身の心配ではありませんよ、あなたのその隠している力のことです」


「…」


「戦士クローバーを組ませた本当の理由は、彼女はあなたの支えとなり、魔力研究を中止させるためです。アークメイジを誕生させるわけにはいきません」


「…なるほど…全てお見通しというわけだったのですね」


…セイントフェザー…。
やはり注意すべき存在だったね。
でもこの研究はきっとワイト国の役に立つ。


「仕方ありませんね、ここできちんと上下関係を決めておきましょうか…いつかの続きを今ここで」


考え込むライトを圧倒する魔力を放つセイントフェザー。


「そ、そんな魔力を放てばここは簡単に崩壊……」


…そ、そうか、ここは常に高度な魔法障壁が発動しているんだ。
迂闊だった…セイントフェザーは監視をしていたんだ。


「さあ遠慮はいりませんよライト、その全てを解放してみなさい」


セイントフェザーは無骨な杖を召喚し目の前に浮遊させる。
特殊空間にて対峙するライトとセイントフェザー。


「はあぁっ」


ライトは拳を握り魔力を解放する。
荒れ狂う魔力はセイントフェザーを攻撃するが、浮遊する杖がその魔力を吸収、彼女は微動だにしない。


「その魔力の行く末は私が見届けましょう」



次回へ続く。
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