22 / 26
後編
十一話 寄り添う者たち
しおりを挟む
「くっ…」
クロバの胸を破邪の短剣で突いたライト。
正気に戻った彼女だが、神木は複数の枝でライトを攻撃。
「…ライト……そんな…」
尖った枝は彼の身体に深く突き刺さり傷口から吸血をする。
血の気が引き顔色が悪くなるライト。
「もう大丈夫……大丈夫だよクロバ…」
彼はクロバに倒れ込み意識を失う。
負傷したジェネラルも座り込み絶体絶命となる三人。
神木はクロバを再度ターゲットとして認識。
「…血の誓い……戦士協会…みんな…大嫌いよっ!!」
なんと彼女はこの危機的状況にて眠れる能力を開花させた。
剣に火炎を纏い魔法剣を構えた。
「ふふふ…見事だぞクローバー…見事……」
凛々しく構えるクロバの姿を見たジェネラルは感極まり安堵、そして意識を失った。
枝でクロバに先制攻撃をする神木だが、火炎剣により切断され、幹に炎が放たれる。
「これで血の誓いは終わりよ。これからの戦士協会は御神木に依存しない」
剣の炎を払い気絶した二人を見るクロバ。
神木から活力が失われてゆく。
「どうやら眠る力が少し目覚めたようですね、戦士クローバー」
「誰?」
周囲から神木とは比べものにならない力を感じたクロバ。
「戦士協会の理事や魔法協会委員長殿の危機で覚醒しましたか…」
「お前はバルムガイスト…」
炎上する神木を圧力により強引に分解。
バルムガイストの邪悪で強大な魔力に再び身構えるクロバ。
「おやおや、私はあなたの味方ですよ?」
「黙れ、ガイ隊長は私をコントロールするためみんなとは違う訓練をしてくれた。協会には嫌な奴らもいるけど、私は戦士協会の一員として、戦士のすべき責務を全うする」
剣を強く握り魔法剣を構えるクロバ。
「戦士…あなたが戦士とは…困った人だ」
クスクスと笑うバルムガイスト。
「何がおかしい?」
「あなたは自分のすべき事から逃げているだけでしょう?運命に逆らう哀れな者が少し力をつけたとて、私の相手にはなりません。自分の無力を再認識し運命を受け入れなさい」
バルムガイストは右手を払い強風を発生させる。
とっさに防御する彼女だが凄まじい風圧に吹き飛ばされ壁に激突してしまう。
戦力差がありすぎるため全く手が出せないクロバであった。
「くっ…強すぎる…貴様いったい…」
「私は味方ですよ、さあクローバー、目覚めるのです…」
クロバに迫るバルムガイストだが、何者かの気配に気づき退却をする。
「ちっ…またしても邪魔が……クローバーよまたお会いしましょう」
バルムガイストは人目を気にして急いで転移。
強敵が去ったことで脱力するクロバ。
「…あいつは…人ではない…」
洞窟内から黒煙が発生し警備隊が到着した。
神木が焼けた際に発生した煙が結果的にクロバを助けたのだった。
セイントフェザーは遅れて現場に到着、周囲を見て回る。
戦士協会の決まり事であった血の誓いが廃止され多くの戦士たちは混乱した。
クロバはこの混乱に乗じて協会へと無事復帰。
彼女が御神木を焼いた事実はバルムガイスト以外誰も知らない。
事態を重くみた戦士協会は上層部を一層、新体制にて再起を決意。
荒々しかった内情やらは落ち着き、理知的な戦士も増えた。ジェネラルは残留こそしたが理事は降格。
新理事には総合の幹部ユシアが赴任した。
負傷したライトもどさくさに紛れ魔法協会へ復帰。
ディアトラはセイントフェザーにライトの重要性を諭されしぶしぶ納得。
理事の想いとは逆に彼の復帰を多くの魔法使いたちは喜んだ。
一見、落ち着きを取り戻したようにみえるワイト国だが、邪悪はゆっくりと確実にその手をのばしていた。
「いってくるね、今日は早く帰れると思うわ」
「分かった、こっちも事務仕事が終わったら帰宅する」
「うふふ、研究はいいのかしら?」
「大丈夫だよ、二人の時間をつくるほうが大切だと思う」
「そう言ってくれると嬉しいわ、それじゃあ」
クロバとライトは一緒に暮らし始めた。
お互いを尊重した同棲は二人の距離をぐっと縮めた。
戦士たちはあのクロバが男をつくったことに絶句、
だが魔法使いたちはその逆であった。
ライトはクロバと過ごすことで禁忌の分野から手を退いたのだった。
人徳があり慕う者が多いライトだが、探究者としての一面を心配する声は多数あったのだ。
「何か委員長、穏やかになったよね?」
「そうか?もともと穏やかだろ」
「そうなんだけど、なんか笑うようになった気がする」
「ああ、それな。ここへ入るといつも難しい顔ばかりだったもんな」
「まああの方も人の子ってことだよ」
研究所はライトの話題でもちきりだ。
そんな生活をしている二人だが、またしても突然総合から呼び出されることになった。
「こんにちは、クロバ様とライト様ですね」
「はい、総合協会に呼び出されて…」
受付応対はライトがする。
相変わらず総合の建物は質素なつくりで部屋は簡素。
クロバは椅子に座りひと休みする。
「今日は人が少ないのね…珍しい」
「そうですね…うふふ戦士クロバ、やっとお会いできましたね」
「えっと…あなたは?」
「失礼、私は戦士協会の理事に新任したユシアと申します」
清楚でとても戦士に見えぬ風貌の女性。
この人物はジェネラルの後任で戦士協会を見事に立て直したデキる女性だ。
「ユシア様、こちらこそ失礼を。お名前は聞いておりましたが……」
「お気になさらず。さあ会議室へ向かいましょう。この召集はワイト国の今後が決まるとのことらしいです」
「ワイト国の…今後…」
受付を済ませクロバと合流するライト。
「会議室へとのことだってさ……んっ?」
クロバに話すライトだがユシアを見て一瞬考え込む。
「…戦士協会のユシア様…ですね?」
「はじめましてですねライトさん、はい私はユシアです」
「ライトはユシア様を知っていたのね」
「うん…お会いするのは初めてだけど」
「ふふふ、では皆で会議室へ向かいましょう」
…戦士協会ユシア、魔法使いたちの評価が最悪の女性だ。良くも悪くも執行するその行動力に周囲は迷惑しているらしい。魔法使いを駒扱いするその思考はお互いを尊重する路線に反しているが、多数の功績が彼女を評価し理事に就任した経緯がある。
魔法使いを踏み台に出世した、そう思う人が多いのだ。
会議室には総合の幹部らしき多数の人物が着席しており、セイントフェザーも確認できる。
「戦士クロバ、魔法使いライト、そちらへ座って下さい。ユシア理事はこちらへ」
議長らしき人物が三人に指示する。
厳格な雰囲気のなか、クロバたちが着席すると会議は始まる。
「突然の召集に応じていただきありがとうございます。これから説明する内容はワイト国の今後を左右することとなります」
議長らしき人物は淡々と話すが周囲はわざつく。
「ライト…私、少し怖いわ」
「大丈夫、まずどういうことか聞かないと話にならないよ」
「それはそうだけど…」
周囲を気にせず議長は説明を続ける。
「魔闘士ファジはある人物から力を授かったとの報告があり緊急召集したのがこの集まりの経緯です」
議長の言葉に会議室は沈黙する。
「ラーナブルン」
その名に周囲は驚く。
「ラーナブルン?」
クロバはライトに聞く。
「魔法協会を追放された……アークメイジだよ」
「アークメイジって…」
「ラーナはディアトラ様に討たれたと聞いたけど…」
ラーナの名前が出たことで会議室は軽いパニック状態となった。
「皆さん静粛に」
「…」
議長の声でひとまず落ち着く室内だが、討たれたと思われた人物が何故浮上したのか疑問は残る。
「ラーナブルンが本当に存在しているかは現在調査中ですが、もし生存が確認できればワイト国はかつてない危機的状況となるでしょう」
議長が話している最中に発言を求める人物がいる。
若々しく凛々しい表情の人物。
「ヘクセンス、止めろ…」
「委員長、このままだと魔法使協会が疑われます。最近様子がおかしいディアトラ様をご存知でしょう?」
「だからといってここで話すと魔法使いは不利になる、冷静になるんだ」
ヘクセンスをなだめるライト。
「魔法使いヘクセンス、何か意見が?」
議長はヘクセンスに問う。
皆が一斉に彼を見る。
「はい、議長よろしいでしょうか?」
「…くっ…」
押し負けたライトは黙り彼を見る。
「許可する」
「ありがとうございます、そして説明中に申し訳ございません。私は魔法協会ヘクセンスと申します」
「ヘクセンスさんは自分が所属する協会を守りたいのね」
「うん、だけどここで発言したとて協会を守ることはできない、未知の部分が多すぎる…」
考え込むライト。
「皆さんご存知のようにラーナブルンは魔法協会に所属し多大な功績を残した大魔法使いです。しかし突如闇へ堕ちたように邪悪な魔力を放ち、アークメイジとなりました」
「ヘクセンス殿、あなたは皆にラーナブルンの説明をしたいのですか?」
「議長失礼しました、私…いえ、私たち魔法使いはこの件については無関係です。アークメイジラーナは現理事のディアトラ様に討たれました」
「はい、その通りです。ですが何故ディアトラ氏は本日不在なのでしょうか?」
「…そ、それは…体調が…」
議長の問いに言葉が詰まるヘクセンス。
「ディアトラ氏とラーナブルンは師弟関係だったとか?」
「…はい…」
追い詰められるヘクセンス。
議長はどうやらいくつかの情報をもっているようで、無策のヘクセンスが勢いだけで太刀打ちできるわけがない。
「議長」
「ちょっとライト…」
突然挙手するライト。
「おやおや今度は協会委員長ですか?」
ヘクセンスに続きライトの挙手に周囲の眼は冷たい。
「もし本当にアークメイジが生存しているのなら私が討伐します」
ライトの言葉に皆が絶句した。
しかしセイントフェザーはその発言を聞きクスクスと笑う。
「委員長殿、それは協会を通して手続きを…」
「魔法使いが問題を起こしたのならば解決するのも魔法使いであるべきでしょう。それに事態は一刻を争うようなので…」
「委員長……」
ライトの行動に心打たれるヘクセンス。
「アークメイジはワイト国のために私が滅ぼします」
ライトの発言に室内は大混乱となった。
議長でさえもどう対処すべきか困惑している。
「一時中断とします。再開は放送で連絡致しますので、それまでご休憩ください」
一時中断。
幹部たちはライトの発言をどう対処するのか。
ラーナブルンは本当に存在するのだろうか。
「リリ、あなた確かライトがアークメイジになるのを阻止したわよね?」
「はい、なんとも皮肉なお話です」
「そ、そうよね…アークメイジになりそうな奴がアークメイジを倒すって…なんの冗談よ…」
「ライトの発言に場は混迷を極めました」
「これは…良くも悪くも爆弾発言ね」
「さらにこのタイミングでラーナの生存が確認されたとの報告があって…」
「なるほど、それで結局ライトが討伐に向かったというわけね」
「はい…」
うつむくリリ。
「リリ?」
「ラーナブルンとの戦いはライトとクローバーの運命を明確にしました」
「…そう…」
「続きを…お話しますか?」
「いや、ひとまず森へ帰りましょう、ヘクセンスを休ませないと」
「そうでしたね、私をかばってくれた恩人ですものね」
「リリ、あの攻撃、無効化できたでしょ…」
「さすがカノン様、その通りです。男性は女性を守る時に凄まじい力を発揮するので、ヘクセンスには奮起してもらいました」
「ふふ」
「森に帰還し落ち着きましたら続きをお話します」
「うん、そうしましょう」
次回へ続く。
クロバの胸を破邪の短剣で突いたライト。
正気に戻った彼女だが、神木は複数の枝でライトを攻撃。
「…ライト……そんな…」
尖った枝は彼の身体に深く突き刺さり傷口から吸血をする。
血の気が引き顔色が悪くなるライト。
「もう大丈夫……大丈夫だよクロバ…」
彼はクロバに倒れ込み意識を失う。
負傷したジェネラルも座り込み絶体絶命となる三人。
神木はクロバを再度ターゲットとして認識。
「…血の誓い……戦士協会…みんな…大嫌いよっ!!」
なんと彼女はこの危機的状況にて眠れる能力を開花させた。
剣に火炎を纏い魔法剣を構えた。
「ふふふ…見事だぞクローバー…見事……」
凛々しく構えるクロバの姿を見たジェネラルは感極まり安堵、そして意識を失った。
枝でクロバに先制攻撃をする神木だが、火炎剣により切断され、幹に炎が放たれる。
「これで血の誓いは終わりよ。これからの戦士協会は御神木に依存しない」
剣の炎を払い気絶した二人を見るクロバ。
神木から活力が失われてゆく。
「どうやら眠る力が少し目覚めたようですね、戦士クローバー」
「誰?」
周囲から神木とは比べものにならない力を感じたクロバ。
「戦士協会の理事や魔法協会委員長殿の危機で覚醒しましたか…」
「お前はバルムガイスト…」
炎上する神木を圧力により強引に分解。
バルムガイストの邪悪で強大な魔力に再び身構えるクロバ。
「おやおや、私はあなたの味方ですよ?」
「黙れ、ガイ隊長は私をコントロールするためみんなとは違う訓練をしてくれた。協会には嫌な奴らもいるけど、私は戦士協会の一員として、戦士のすべき責務を全うする」
剣を強く握り魔法剣を構えるクロバ。
「戦士…あなたが戦士とは…困った人だ」
クスクスと笑うバルムガイスト。
「何がおかしい?」
「あなたは自分のすべき事から逃げているだけでしょう?運命に逆らう哀れな者が少し力をつけたとて、私の相手にはなりません。自分の無力を再認識し運命を受け入れなさい」
バルムガイストは右手を払い強風を発生させる。
とっさに防御する彼女だが凄まじい風圧に吹き飛ばされ壁に激突してしまう。
戦力差がありすぎるため全く手が出せないクロバであった。
「くっ…強すぎる…貴様いったい…」
「私は味方ですよ、さあクローバー、目覚めるのです…」
クロバに迫るバルムガイストだが、何者かの気配に気づき退却をする。
「ちっ…またしても邪魔が……クローバーよまたお会いしましょう」
バルムガイストは人目を気にして急いで転移。
強敵が去ったことで脱力するクロバ。
「…あいつは…人ではない…」
洞窟内から黒煙が発生し警備隊が到着した。
神木が焼けた際に発生した煙が結果的にクロバを助けたのだった。
セイントフェザーは遅れて現場に到着、周囲を見て回る。
戦士協会の決まり事であった血の誓いが廃止され多くの戦士たちは混乱した。
クロバはこの混乱に乗じて協会へと無事復帰。
彼女が御神木を焼いた事実はバルムガイスト以外誰も知らない。
事態を重くみた戦士協会は上層部を一層、新体制にて再起を決意。
荒々しかった内情やらは落ち着き、理知的な戦士も増えた。ジェネラルは残留こそしたが理事は降格。
新理事には総合の幹部ユシアが赴任した。
負傷したライトもどさくさに紛れ魔法協会へ復帰。
ディアトラはセイントフェザーにライトの重要性を諭されしぶしぶ納得。
理事の想いとは逆に彼の復帰を多くの魔法使いたちは喜んだ。
一見、落ち着きを取り戻したようにみえるワイト国だが、邪悪はゆっくりと確実にその手をのばしていた。
「いってくるね、今日は早く帰れると思うわ」
「分かった、こっちも事務仕事が終わったら帰宅する」
「うふふ、研究はいいのかしら?」
「大丈夫だよ、二人の時間をつくるほうが大切だと思う」
「そう言ってくれると嬉しいわ、それじゃあ」
クロバとライトは一緒に暮らし始めた。
お互いを尊重した同棲は二人の距離をぐっと縮めた。
戦士たちはあのクロバが男をつくったことに絶句、
だが魔法使いたちはその逆であった。
ライトはクロバと過ごすことで禁忌の分野から手を退いたのだった。
人徳があり慕う者が多いライトだが、探究者としての一面を心配する声は多数あったのだ。
「何か委員長、穏やかになったよね?」
「そうか?もともと穏やかだろ」
「そうなんだけど、なんか笑うようになった気がする」
「ああ、それな。ここへ入るといつも難しい顔ばかりだったもんな」
「まああの方も人の子ってことだよ」
研究所はライトの話題でもちきりだ。
そんな生活をしている二人だが、またしても突然総合から呼び出されることになった。
「こんにちは、クロバ様とライト様ですね」
「はい、総合協会に呼び出されて…」
受付応対はライトがする。
相変わらず総合の建物は質素なつくりで部屋は簡素。
クロバは椅子に座りひと休みする。
「今日は人が少ないのね…珍しい」
「そうですね…うふふ戦士クロバ、やっとお会いできましたね」
「えっと…あなたは?」
「失礼、私は戦士協会の理事に新任したユシアと申します」
清楚でとても戦士に見えぬ風貌の女性。
この人物はジェネラルの後任で戦士協会を見事に立て直したデキる女性だ。
「ユシア様、こちらこそ失礼を。お名前は聞いておりましたが……」
「お気になさらず。さあ会議室へ向かいましょう。この召集はワイト国の今後が決まるとのことらしいです」
「ワイト国の…今後…」
受付を済ませクロバと合流するライト。
「会議室へとのことだってさ……んっ?」
クロバに話すライトだがユシアを見て一瞬考え込む。
「…戦士協会のユシア様…ですね?」
「はじめましてですねライトさん、はい私はユシアです」
「ライトはユシア様を知っていたのね」
「うん…お会いするのは初めてだけど」
「ふふふ、では皆で会議室へ向かいましょう」
…戦士協会ユシア、魔法使いたちの評価が最悪の女性だ。良くも悪くも執行するその行動力に周囲は迷惑しているらしい。魔法使いを駒扱いするその思考はお互いを尊重する路線に反しているが、多数の功績が彼女を評価し理事に就任した経緯がある。
魔法使いを踏み台に出世した、そう思う人が多いのだ。
会議室には総合の幹部らしき多数の人物が着席しており、セイントフェザーも確認できる。
「戦士クロバ、魔法使いライト、そちらへ座って下さい。ユシア理事はこちらへ」
議長らしき人物が三人に指示する。
厳格な雰囲気のなか、クロバたちが着席すると会議は始まる。
「突然の召集に応じていただきありがとうございます。これから説明する内容はワイト国の今後を左右することとなります」
議長らしき人物は淡々と話すが周囲はわざつく。
「ライト…私、少し怖いわ」
「大丈夫、まずどういうことか聞かないと話にならないよ」
「それはそうだけど…」
周囲を気にせず議長は説明を続ける。
「魔闘士ファジはある人物から力を授かったとの報告があり緊急召集したのがこの集まりの経緯です」
議長の言葉に会議室は沈黙する。
「ラーナブルン」
その名に周囲は驚く。
「ラーナブルン?」
クロバはライトに聞く。
「魔法協会を追放された……アークメイジだよ」
「アークメイジって…」
「ラーナはディアトラ様に討たれたと聞いたけど…」
ラーナの名前が出たことで会議室は軽いパニック状態となった。
「皆さん静粛に」
「…」
議長の声でひとまず落ち着く室内だが、討たれたと思われた人物が何故浮上したのか疑問は残る。
「ラーナブルンが本当に存在しているかは現在調査中ですが、もし生存が確認できればワイト国はかつてない危機的状況となるでしょう」
議長が話している最中に発言を求める人物がいる。
若々しく凛々しい表情の人物。
「ヘクセンス、止めろ…」
「委員長、このままだと魔法使協会が疑われます。最近様子がおかしいディアトラ様をご存知でしょう?」
「だからといってここで話すと魔法使いは不利になる、冷静になるんだ」
ヘクセンスをなだめるライト。
「魔法使いヘクセンス、何か意見が?」
議長はヘクセンスに問う。
皆が一斉に彼を見る。
「はい、議長よろしいでしょうか?」
「…くっ…」
押し負けたライトは黙り彼を見る。
「許可する」
「ありがとうございます、そして説明中に申し訳ございません。私は魔法協会ヘクセンスと申します」
「ヘクセンスさんは自分が所属する協会を守りたいのね」
「うん、だけどここで発言したとて協会を守ることはできない、未知の部分が多すぎる…」
考え込むライト。
「皆さんご存知のようにラーナブルンは魔法協会に所属し多大な功績を残した大魔法使いです。しかし突如闇へ堕ちたように邪悪な魔力を放ち、アークメイジとなりました」
「ヘクセンス殿、あなたは皆にラーナブルンの説明をしたいのですか?」
「議長失礼しました、私…いえ、私たち魔法使いはこの件については無関係です。アークメイジラーナは現理事のディアトラ様に討たれました」
「はい、その通りです。ですが何故ディアトラ氏は本日不在なのでしょうか?」
「…そ、それは…体調が…」
議長の問いに言葉が詰まるヘクセンス。
「ディアトラ氏とラーナブルンは師弟関係だったとか?」
「…はい…」
追い詰められるヘクセンス。
議長はどうやらいくつかの情報をもっているようで、無策のヘクセンスが勢いだけで太刀打ちできるわけがない。
「議長」
「ちょっとライト…」
突然挙手するライト。
「おやおや今度は協会委員長ですか?」
ヘクセンスに続きライトの挙手に周囲の眼は冷たい。
「もし本当にアークメイジが生存しているのなら私が討伐します」
ライトの言葉に皆が絶句した。
しかしセイントフェザーはその発言を聞きクスクスと笑う。
「委員長殿、それは協会を通して手続きを…」
「魔法使いが問題を起こしたのならば解決するのも魔法使いであるべきでしょう。それに事態は一刻を争うようなので…」
「委員長……」
ライトの行動に心打たれるヘクセンス。
「アークメイジはワイト国のために私が滅ぼします」
ライトの発言に室内は大混乱となった。
議長でさえもどう対処すべきか困惑している。
「一時中断とします。再開は放送で連絡致しますので、それまでご休憩ください」
一時中断。
幹部たちはライトの発言をどう対処するのか。
ラーナブルンは本当に存在するのだろうか。
「リリ、あなた確かライトがアークメイジになるのを阻止したわよね?」
「はい、なんとも皮肉なお話です」
「そ、そうよね…アークメイジになりそうな奴がアークメイジを倒すって…なんの冗談よ…」
「ライトの発言に場は混迷を極めました」
「これは…良くも悪くも爆弾発言ね」
「さらにこのタイミングでラーナの生存が確認されたとの報告があって…」
「なるほど、それで結局ライトが討伐に向かったというわけね」
「はい…」
うつむくリリ。
「リリ?」
「ラーナブルンとの戦いはライトとクローバーの運命を明確にしました」
「…そう…」
「続きを…お話しますか?」
「いや、ひとまず森へ帰りましょう、ヘクセンスを休ませないと」
「そうでしたね、私をかばってくれた恩人ですものね」
「リリ、あの攻撃、無効化できたでしょ…」
「さすがカノン様、その通りです。男性は女性を守る時に凄まじい力を発揮するので、ヘクセンスには奮起してもらいました」
「ふふ」
「森に帰還し落ち着きましたら続きをお話します」
「うん、そうしましょう」
次回へ続く。
0
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる