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後編
十二話 ダークライト
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森へ帰還しヘクセンスを休ませた二人。
ライトはまだ眠っておりジンが付きっきりで看ている。
「うむ遅かったな…」
「魔王ブラットに会った…」
「うむ」
カノンから魔王の言葉を聞き、眉間にシワがよるジン。
「これで壁内に魔王がいるのは確定です。しかしもう一度パレス内へ侵入するのは不可能となりました」
「ええそうね、今回の一件でパレスは厳戒態勢…監視がきつすぎて…」
「うむ…して魔王は……」
珍しくジンがカノンに詰め寄る。
「…」
口を閉ざすカノン。
「ジン様、魔王に一矢報いはしましたが…討伐は難しいです」
「うむ…単に魔力どうこうではなかろう?…地の利は向こうにあるだろうし…」
腕を組み考え込むジン。
「魔物はもちろんだけど、住民たちも魔王をかばったのよ…」
「うむ」
重苦しい空気が漂う室内。
「ジン様、ここへ戻る前、カノン様にライトの過去の話をしました。それにお伝えすべき事が多々あるのです」
「うむ」
リリはジンにクローバーの件を要件のみ伝える。
協会を壊滅させアークメイジとなったことなど、カノンに話した内容を淡々と説明した。
ジンは思考深い性格でリリが話す内容を頭で整理しつつ、物事の本質を見極めようとしている。
「うむ…カノンと同じだ、どうあれライトやリリ殿を信じる。それに戦士協会についてはいろいろとな……」
「ふふふ」
「いろいろって何よ」
「うむ…その…いろいろ…だ」
「はいはい、そうですか…」
「それではラーナブルン討伐に向かったライトの話をいたします」
アークメイジラーナブルンは魔力が吹き出す危険地域へ逃亡した。現在の協会理事ディアトラが単身討伐に向かい、住んでいた館ごと始末した…というのが報告書にある内容だ。
ライトが単身討伐へ向かうのに前後し総合は魔法協会へ調査目的で立ち入った。
召集を拒んだディアトラへの事情聴取がメインと思われる。
総合の幹部数名と護衛に戦士協会ユシアが部下を連れて魔法協会へ押し掛ける。
邪悪が少しずつ姿を現し、暗雲立ち込めるワイト国。
ライトとクローバーは破滅へとすすむ協会に何を見るのか…。
…なるほど、この強大な魔力をコントロールできれば魔法の真理を悟ることが…。
ライトは危険地域の溢れる魔力を見て、久しく眠っていた魔法使いが目を覚ます。この地域は異端の魔法使いや犯罪者がその魔力を求め潜伏していることで有名だ。そんな者たちを拉致し研究材料とするアークメイジラーナブルン。
ライトの正義はラーナの所業が許せなかった。
ヘクセンスを守るため。
不振な動きをみせるディアトラ。
そしてアークメイジ。
ラーナブルンを討てば全てが解決する…。
そう信じて危険地域へ足を踏み入れた。
「あれか…」
高等魔法使いらしく正装に身をつつむライト。
ここなら被害を気にする必要はないし、魔力を取り込めばどんな相手にも負けない。
彼は魔法で協会を変える、変えられると信じていた。
「…」
古びた館の前に人がいる。
まるでライトがここへ来るのを待っていたようである。
地味な装いの人物はすらりとした体型の女性。
とても国が恐れるアークメイジには見えない。
そう、この人物こそがラーナブルン。
「まさかあなたがここへ来るとは…驚きです」
「驚いたのはこちらですラーナ様…本当にご存命だったとは…」
「委員長ライト、事はあなたが思っている以上に複雑なのです」
「複雑だろうがあなたを討てば国は救われる、私はそう信じています」
ライトはラーナと対峙し身構える。
「あなたは何も分かっていない…」
「えっ…」
ラーナは右手を払い風の刃、かまいたちを発生させライトを攻撃。
それは見事にクリーンヒットしライトは一撃で沈んでしまった。
気絶した彼に近づくラーナ。
「…本命のご登場、でしょうかね」
ライトを守るように立ち塞がる人物。
「私が相手になる」
戦士クロバだ。
ライトには話さず尾行していた彼女。
「……この娘が……」
ラーナはクロバをみて納得している。
「アークメイジは討伐する」
剣に火炎を宿らせてラーナへ斬りかかる。
魔法剣に驚くラーナだがすぐに右腕で攻撃をガード。
「お、お前…どこでそんな剣技を…」
「私の眠る力だ、覚悟せよ」
炎の勢いが強化されラーナの腕が炎上する。
一旦距離をとり冷静になるクロバ。
魔法剣を習得してからは戦闘時に冷静な判断が可能となったようだ。
「降伏せよ、次はない」
剣をラーナへ向け勝利を確信するクロバ。
ライトを一撃で気絶させた強者ではあるが、どこか地味で凶悪なアークメイジには見えないためクロバは強気であった。
「…愚かな…自分のすべき事から逃げて、良く分からない方向へ進む…哀れな娘よの…」
炎上している腕を切り落とすラーナ。
「なにっ…」
「運命から逃げた気でいるようだがな…お前はあのお方の手の内で踊らされているにすぎぬ」
「あの…お方?」
「ふふふ、少しくらいなら大丈夫でしょう、委員長と共に眠るがいいわ」
ラーナは再びかまいたちを放ちクロバを攻撃。
だが、クロバへ命中する寸前で風の刃は分解される。
「ほう」
「ラ、ライト…」
ローブの袖を破り、強烈な魔力を纏うライト。
「クロバ来てくれてありがとう」
「あなた…傷が……」
「大丈夫、ラーナ様の相手をするから…少し下がって…」
ライトの眼に狂気を感じたクロバはゆっくりと後退。
「おやおや、一発受けて目が覚めたかしら?」
「さあどうでしょうか…」
…ラーナ様を討つには全魔力を解放する必要がある。
とにかく力だ、魔力だ。
目の前にいるのは敵だ…討つべき敵なんだ。
彼に宿る魔力が徐々に邪悪さを増してゆく。
不気味でおぞましい魔力を放つライトをみたクロバは座り込んでしまう。
「委員長、君が禁忌に手を染め、禁断の研究をしていることは弟子から聞いていたが…」
ラーナはライトを見て笑い、己の魔力を解放。
一瞬だが周囲の空間が歪み、禍々しく洗練された魔力を身に纏う。
「これで分かっただろう委員長?君は既にアークメイジなのだよ」
「…そ、そんなバカな…」
「ライト…嘘……違う、嫌…嫌よ…あなたはアークメイジじゃない…」
「私たちの纏う魔力は同質、そしてその邪悪な風貌をみた者は皆、恐怖するだろう。そこの戦士のようにな」
ライトは魔力を飛散させ膝をつく。
「そんな……アークメイジ………そんな…」
頭を抱え苦悩するライト。
魔法使い協会のため、慕ってくれる仲間のため、ワイト国のため、そして愛する者のため。
学び、研究し、戦ってきた彼だが、手は既に血塗れだったのだ。
「ここは溢れる無限の魔力があり、自分が望む事全てを可能にできる。委員長、アークメイジは魔法の真理を悟った者が到達するただの地点にすぎぬのだよ」
「あぁ…そんな……ライト…」
泣き崩れるクロバ。
「…」
自分の手を見て固まるライト。
「君のワイト国を守りたい、協会を発展させたいという願いは本物だった。だがそこの戦士を愛するようになり願いは変わった」
「…」
ラーナは魔力武装を解きライトに近づく。
放心状態の彼は両膝をつき脱力。
「君がここへ来たのは…師である私を止めるためだろう?」
「…ラーナ様……」
「ライト…どういうことなの…ラーナブルンが師?」
「驚くことはない、私は魔法の基礎を教えただけであり、それを吸収し実力にしたのは本人が努力した結果だ」
「努力した結果って…」
「頭角をみせたライトをディアトラは縛った。その結果、彼は協会を窮屈と感じ、本音や本心を隠し、人目を避けて研究をするようになった…」
「…」
ディアトラの言葉を聞いたライトは拳を強く握る。
「でもライトは穏やかで、噂に聞く邪悪なアークメイジには見えないわ、これは何かの間違いよ」
必死にライトを守るクロバ。
「それは私とて同じよ。私はアークメイジですと申告する者なぞいない。心の底にある小さな闇は魔力との結合を果たそうと必死になるのよ。魔法使いは常にこの闇と戦っている、だから他人を想う余裕なぞ無い、組んで仲間を想う君たち戦士とは別の人種なのさ」
「…でも、でもライトは…」
「ええ、分かっている…委員長は違う、闇を受け入れてそれを力とした…本当にすごいよ」
「…」
「さて…君たちとはもっと話がしたかったけど…」
ラーナは腕を再生させてライトへ真っ黒なガラス玉のような球体を渡す。
「戦士クローバー、そして委員長ライト、私たちは戦う運命なのです」
ライトの肩に触れ再び魔力を解放するラーナブルン。
「ライトっ」
その魔力でライトを吹き飛ばすラーナ。
脱力状態の彼は大ダメージを受けてしまう。
「おのれ」
抜刀しラーナへ攻撃するクロバ。
「そうだ、それでいい。私を討つがいい」
クロバの剣を両手で受け止めるラーナ。
邪悪な魔力はより濃くなり周囲は暗黒に包まれてゆく。
「覚悟をみせてもらおうか、戦士クローバー。そしてガイスト様の言葉が真実かどうか…」
「ガイスト?…まさか…バルムガイスト…」
「さあ勝負だ」
ラーナは溢れる魔力を取り込み結界を展開。
三本の支柱をつくりそこから自身へ魔力供給させている。
「これは…」
「魔法陣。あなたが本当にガイスト様の言う存在であるならこの結界を破り私を倒す…」
「ふふふ」
「おや、この状況で笑うかしら?」
剣を構えてゆっくり目を閉じるクロバ。
「ライトが強大な力を持つ魔法使いでありながらも、その魔力を封印して、私との穏やかな生活を優先してくれた。すごく嬉しかった、これで自分は運命から解放されたと思ったわ…」
「…むむ」
クロバを警戒し身構えるラーナ。
「人がいない禁足地でライトは気絶、そしてこの二人きりの状況。あなたやバルムガイストは私に目覚めろとしつこく迫ったけど…」
剣を振り三本の支柱を破壊。
ついに眠る真なる力を解放するクロバ。
「…な、なるほど…やはりあなたは…里から逃げた…勇者……」
「ちょっとリリ、どういうことっ!!」
話の途中で大声をあげるカノン。
滅多に感情を出さぬジンも驚きの表情である。
「魔王が姿を見せた以上、もう隠す必要はないのでお話します。戦士クローバーはカノン様と同郷、ピアー村出身で村が魔物に支配されるきっかけをつくった人物です」
「なっ…」
「うむ…」
「カノン様の聖剣は本来クローバーが…」
「そ…そんな…じゃあクローバーは……」
「はい、クローバーは勇者です」
「うむ、まさか勇者は二人…いるのか」
リリに問うジン。
カノンは肘をつき状況を整理している。
「クローバーは…自分の運命から逃げましたがその代償は……」
「リリ……分かった…もう分かったわ」
「カノン様…」
「うむ」
「ライトがおかしくなった理由が、今分かったわリリ……あなた、本当につらかったわね…」
「…」
カノンの言葉に眼を瞑りため息をつくリリ。
「うむ……理解した…クローバーはもう…」
「そう、戦士クローバーはもうこの世にいない…ライトはそれを嘆き邪神を…」
「大切な人を失った者は誰もがある事を願うのです」
「…」
「…」
カノンとジンは黙り込んでしまう。
「それは死者の蘇生です」
「…」
クローバーはもうこの世にいない。
彼女にいったい何があったのか?
リリが抱えてきた真実を聞いた二人は言葉を失う。
次回へ続く。
ライトはまだ眠っておりジンが付きっきりで看ている。
「うむ遅かったな…」
「魔王ブラットに会った…」
「うむ」
カノンから魔王の言葉を聞き、眉間にシワがよるジン。
「これで壁内に魔王がいるのは確定です。しかしもう一度パレス内へ侵入するのは不可能となりました」
「ええそうね、今回の一件でパレスは厳戒態勢…監視がきつすぎて…」
「うむ…して魔王は……」
珍しくジンがカノンに詰め寄る。
「…」
口を閉ざすカノン。
「ジン様、魔王に一矢報いはしましたが…討伐は難しいです」
「うむ…単に魔力どうこうではなかろう?…地の利は向こうにあるだろうし…」
腕を組み考え込むジン。
「魔物はもちろんだけど、住民たちも魔王をかばったのよ…」
「うむ」
重苦しい空気が漂う室内。
「ジン様、ここへ戻る前、カノン様にライトの過去の話をしました。それにお伝えすべき事が多々あるのです」
「うむ」
リリはジンにクローバーの件を要件のみ伝える。
協会を壊滅させアークメイジとなったことなど、カノンに話した内容を淡々と説明した。
ジンは思考深い性格でリリが話す内容を頭で整理しつつ、物事の本質を見極めようとしている。
「うむ…カノンと同じだ、どうあれライトやリリ殿を信じる。それに戦士協会についてはいろいろとな……」
「ふふふ」
「いろいろって何よ」
「うむ…その…いろいろ…だ」
「はいはい、そうですか…」
「それではラーナブルン討伐に向かったライトの話をいたします」
アークメイジラーナブルンは魔力が吹き出す危険地域へ逃亡した。現在の協会理事ディアトラが単身討伐に向かい、住んでいた館ごと始末した…というのが報告書にある内容だ。
ライトが単身討伐へ向かうのに前後し総合は魔法協会へ調査目的で立ち入った。
召集を拒んだディアトラへの事情聴取がメインと思われる。
総合の幹部数名と護衛に戦士協会ユシアが部下を連れて魔法協会へ押し掛ける。
邪悪が少しずつ姿を現し、暗雲立ち込めるワイト国。
ライトとクローバーは破滅へとすすむ協会に何を見るのか…。
…なるほど、この強大な魔力をコントロールできれば魔法の真理を悟ることが…。
ライトは危険地域の溢れる魔力を見て、久しく眠っていた魔法使いが目を覚ます。この地域は異端の魔法使いや犯罪者がその魔力を求め潜伏していることで有名だ。そんな者たちを拉致し研究材料とするアークメイジラーナブルン。
ライトの正義はラーナの所業が許せなかった。
ヘクセンスを守るため。
不振な動きをみせるディアトラ。
そしてアークメイジ。
ラーナブルンを討てば全てが解決する…。
そう信じて危険地域へ足を踏み入れた。
「あれか…」
高等魔法使いらしく正装に身をつつむライト。
ここなら被害を気にする必要はないし、魔力を取り込めばどんな相手にも負けない。
彼は魔法で協会を変える、変えられると信じていた。
「…」
古びた館の前に人がいる。
まるでライトがここへ来るのを待っていたようである。
地味な装いの人物はすらりとした体型の女性。
とても国が恐れるアークメイジには見えない。
そう、この人物こそがラーナブルン。
「まさかあなたがここへ来るとは…驚きです」
「驚いたのはこちらですラーナ様…本当にご存命だったとは…」
「委員長ライト、事はあなたが思っている以上に複雑なのです」
「複雑だろうがあなたを討てば国は救われる、私はそう信じています」
ライトはラーナと対峙し身構える。
「あなたは何も分かっていない…」
「えっ…」
ラーナは右手を払い風の刃、かまいたちを発生させライトを攻撃。
それは見事にクリーンヒットしライトは一撃で沈んでしまった。
気絶した彼に近づくラーナ。
「…本命のご登場、でしょうかね」
ライトを守るように立ち塞がる人物。
「私が相手になる」
戦士クロバだ。
ライトには話さず尾行していた彼女。
「……この娘が……」
ラーナはクロバをみて納得している。
「アークメイジは討伐する」
剣に火炎を宿らせてラーナへ斬りかかる。
魔法剣に驚くラーナだがすぐに右腕で攻撃をガード。
「お、お前…どこでそんな剣技を…」
「私の眠る力だ、覚悟せよ」
炎の勢いが強化されラーナの腕が炎上する。
一旦距離をとり冷静になるクロバ。
魔法剣を習得してからは戦闘時に冷静な判断が可能となったようだ。
「降伏せよ、次はない」
剣をラーナへ向け勝利を確信するクロバ。
ライトを一撃で気絶させた強者ではあるが、どこか地味で凶悪なアークメイジには見えないためクロバは強気であった。
「…愚かな…自分のすべき事から逃げて、良く分からない方向へ進む…哀れな娘よの…」
炎上している腕を切り落とすラーナ。
「なにっ…」
「運命から逃げた気でいるようだがな…お前はあのお方の手の内で踊らされているにすぎぬ」
「あの…お方?」
「ふふふ、少しくらいなら大丈夫でしょう、委員長と共に眠るがいいわ」
ラーナは再びかまいたちを放ちクロバを攻撃。
だが、クロバへ命中する寸前で風の刃は分解される。
「ほう」
「ラ、ライト…」
ローブの袖を破り、強烈な魔力を纏うライト。
「クロバ来てくれてありがとう」
「あなた…傷が……」
「大丈夫、ラーナ様の相手をするから…少し下がって…」
ライトの眼に狂気を感じたクロバはゆっくりと後退。
「おやおや、一発受けて目が覚めたかしら?」
「さあどうでしょうか…」
…ラーナ様を討つには全魔力を解放する必要がある。
とにかく力だ、魔力だ。
目の前にいるのは敵だ…討つべき敵なんだ。
彼に宿る魔力が徐々に邪悪さを増してゆく。
不気味でおぞましい魔力を放つライトをみたクロバは座り込んでしまう。
「委員長、君が禁忌に手を染め、禁断の研究をしていることは弟子から聞いていたが…」
ラーナはライトを見て笑い、己の魔力を解放。
一瞬だが周囲の空間が歪み、禍々しく洗練された魔力を身に纏う。
「これで分かっただろう委員長?君は既にアークメイジなのだよ」
「…そ、そんなバカな…」
「ライト…嘘……違う、嫌…嫌よ…あなたはアークメイジじゃない…」
「私たちの纏う魔力は同質、そしてその邪悪な風貌をみた者は皆、恐怖するだろう。そこの戦士のようにな」
ライトは魔力を飛散させ膝をつく。
「そんな……アークメイジ………そんな…」
頭を抱え苦悩するライト。
魔法使い協会のため、慕ってくれる仲間のため、ワイト国のため、そして愛する者のため。
学び、研究し、戦ってきた彼だが、手は既に血塗れだったのだ。
「ここは溢れる無限の魔力があり、自分が望む事全てを可能にできる。委員長、アークメイジは魔法の真理を悟った者が到達するただの地点にすぎぬのだよ」
「あぁ…そんな……ライト…」
泣き崩れるクロバ。
「…」
自分の手を見て固まるライト。
「君のワイト国を守りたい、協会を発展させたいという願いは本物だった。だがそこの戦士を愛するようになり願いは変わった」
「…」
ラーナは魔力武装を解きライトに近づく。
放心状態の彼は両膝をつき脱力。
「君がここへ来たのは…師である私を止めるためだろう?」
「…ラーナ様……」
「ライト…どういうことなの…ラーナブルンが師?」
「驚くことはない、私は魔法の基礎を教えただけであり、それを吸収し実力にしたのは本人が努力した結果だ」
「努力した結果って…」
「頭角をみせたライトをディアトラは縛った。その結果、彼は協会を窮屈と感じ、本音や本心を隠し、人目を避けて研究をするようになった…」
「…」
ディアトラの言葉を聞いたライトは拳を強く握る。
「でもライトは穏やかで、噂に聞く邪悪なアークメイジには見えないわ、これは何かの間違いよ」
必死にライトを守るクロバ。
「それは私とて同じよ。私はアークメイジですと申告する者なぞいない。心の底にある小さな闇は魔力との結合を果たそうと必死になるのよ。魔法使いは常にこの闇と戦っている、だから他人を想う余裕なぞ無い、組んで仲間を想う君たち戦士とは別の人種なのさ」
「…でも、でもライトは…」
「ええ、分かっている…委員長は違う、闇を受け入れてそれを力とした…本当にすごいよ」
「…」
「さて…君たちとはもっと話がしたかったけど…」
ラーナは腕を再生させてライトへ真っ黒なガラス玉のような球体を渡す。
「戦士クローバー、そして委員長ライト、私たちは戦う運命なのです」
ライトの肩に触れ再び魔力を解放するラーナブルン。
「ライトっ」
その魔力でライトを吹き飛ばすラーナ。
脱力状態の彼は大ダメージを受けてしまう。
「おのれ」
抜刀しラーナへ攻撃するクロバ。
「そうだ、それでいい。私を討つがいい」
クロバの剣を両手で受け止めるラーナ。
邪悪な魔力はより濃くなり周囲は暗黒に包まれてゆく。
「覚悟をみせてもらおうか、戦士クローバー。そしてガイスト様の言葉が真実かどうか…」
「ガイスト?…まさか…バルムガイスト…」
「さあ勝負だ」
ラーナは溢れる魔力を取り込み結界を展開。
三本の支柱をつくりそこから自身へ魔力供給させている。
「これは…」
「魔法陣。あなたが本当にガイスト様の言う存在であるならこの結界を破り私を倒す…」
「ふふふ」
「おや、この状況で笑うかしら?」
剣を構えてゆっくり目を閉じるクロバ。
「ライトが強大な力を持つ魔法使いでありながらも、その魔力を封印して、私との穏やかな生活を優先してくれた。すごく嬉しかった、これで自分は運命から解放されたと思ったわ…」
「…むむ」
クロバを警戒し身構えるラーナ。
「人がいない禁足地でライトは気絶、そしてこの二人きりの状況。あなたやバルムガイストは私に目覚めろとしつこく迫ったけど…」
剣を振り三本の支柱を破壊。
ついに眠る真なる力を解放するクロバ。
「…な、なるほど…やはりあなたは…里から逃げた…勇者……」
「ちょっとリリ、どういうことっ!!」
話の途中で大声をあげるカノン。
滅多に感情を出さぬジンも驚きの表情である。
「魔王が姿を見せた以上、もう隠す必要はないのでお話します。戦士クローバーはカノン様と同郷、ピアー村出身で村が魔物に支配されるきっかけをつくった人物です」
「なっ…」
「うむ…」
「カノン様の聖剣は本来クローバーが…」
「そ…そんな…じゃあクローバーは……」
「はい、クローバーは勇者です」
「うむ、まさか勇者は二人…いるのか」
リリに問うジン。
カノンは肘をつき状況を整理している。
「クローバーは…自分の運命から逃げましたがその代償は……」
「リリ……分かった…もう分かったわ」
「カノン様…」
「うむ」
「ライトがおかしくなった理由が、今分かったわリリ……あなた、本当につらかったわね…」
「…」
カノンの言葉に眼を瞑りため息をつくリリ。
「うむ……理解した…クローバーはもう…」
「そう、戦士クローバーはもうこの世にいない…ライトはそれを嘆き邪神を…」
「大切な人を失った者は誰もがある事を願うのです」
「…」
「…」
カノンとジンは黙り込んでしまう。
「それは死者の蘇生です」
「…」
クローバーはもうこの世にいない。
彼女にいったい何があったのか?
リリが抱えてきた真実を聞いた二人は言葉を失う。
次回へ続く。
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