【R18】悪役令嬢フェリーチェの、××回めの転生日記 ~一度きりの関係のはずのサブキャラが、フラグをもってやってくる!~

藤原いつか

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第2章 眠れない騎士アランの憂鬱

13.選ばれなかったゆめうつつ_①

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 ――あたたかい。

 体温の高い生き物に包まれている感触がする。
 誰かに抱かれて眠るような記憶は無いので、あくまで想像でしかないけれど。

 寒い日によくふとんの中で、同じく寒がりなクロを抱いて眠っていたことを思い出した。
 前世の記憶だ。途端に鼻の奥がつんとする。
 そういえばこの世界で初めて目覚めた時も、日記を抱いて眠っていたっけ。

 その痛みでフェリーチェは目を覚ました。

 ぼんやりと霞みがかる頭で一番に思ったこと。
 微睡みはほんの一瞬で、すぐに思考は最優先事項へと切り替わる。

(帰らなくちゃ……!)

 シンデレラではないけれど、まさに今のフェリーチェはその状態だった。

 慌てて起き上がろうとして、自分の上に太くて長い腕が伸びていることに気付く。
 アランの腕だ。隣りで眠る、半裸のアランの姿がそこにあった。

 フェリーチェの頭の裏側にもあって、どうやら腕枕をしてくれていたらしい。夢の中の温もりの正体はこれだったのか。

 フェリーチェが僅かに身じろぎすると、アランが眉根を寄せて微かに呻く。
 ぎくりと心臓が跳ね、咄嗟に動きを止め息を呑んだ。今目を覚まされると非常に困る。

 しばらくするとアランは寝返りをうち、剥き出しのままの肩が上下し出した。また眠ってしまったようだった。

 その様子にほっと胸を撫で下ろし、アランの腕から解放されたフェリーチェは脱げかけたままの服を胸元に掻き集めながら、ゆっくりと行動を開始する。

 なるべく気配を押し殺しながらベッドから下り、脱ぎ捨てられていた自分のものを手早く拾い集めた。

(まさか寝ちゃうとは……! いや、気絶? とにかくはやく、ここを出ないと……!)

 時間を確認しようとしたけれど、時計が見当たらない。
 カーテンの隙間から覗く窓の向こうはまだ明るい。
 おそらくそこまで長い時間は経っていないはず。
 
 身支度を整えるのもそこそこに、フェリーチェはさっと自身を確認する。
 リボンにボタンに身に付けていた衣服に欠けはないか。アクセサリーは身に付けて来なかった。髪をまとめていた留め具もリボンもちゃんとある。
 決して忘れものをしないように、自分の痕跡を残さないように。

 抱かれた痕が残るのは当然だ。すべては消せない。
 だけどその相手が自分フェリーチェであることを、決して残していくわけにはいかなかった。

 アランが目覚めるまで待つことは決してしない。
 それが今回一番気をつけていたことで、一番最初に決めていたこと。
 もっと言うと、アランには役割を終えた後、必ず眠っていてもらう必要があった。
 
 情事に疎いので事後の様子はイメージしきれず、最悪の事態に備え睡眠薬まで持参してきたくらいだ。でないと彼を選んだ意味がない。

 アランには、ひみつがある。

 彼は女性を抱いたあとに、忘れてしまうのだ。その直前での出来事を。
 だけど彼はその行為をやめられない。誰かを抱かずにはいられない。
 でないと、眠れないのだ。
 それは彼が王城でまだ王位継承権を持っていた時に、覇権争いで受けた呪いだった。
 
 そのひみつはゲーム内でヒロインがアランと初めて結ばれた後に知る事実。アランは平時は隠している情報だ。

 来る者は拒まないし、必要時には自分からも声をかける。設定に違わぬ遊び人でチャラ男。
 完全に割り切った関係を促して、事後は一切関わらせない。
 文字通りその場限りの関係だからだ。

 フェリーチェはそれを利用したのだ。


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