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第2章 眠れない騎士アランの憂鬱
12.最後まで_②
しおりを挟む一瞬だけ目を丸くしたあと、アランは応えるように触れるだけのキスをして、そしてゆっくりとでも確実に腰を押し進めた。フェリーチェの一番奥に行き当たるまで惑いなく。
その重たい質量と圧迫感が、フェリーチェの内側を押し広げて満たしていく。
「……ッ、あ、んん……!」
「……っは、はぁ……」
痛みに呻くフェリーチェとは真逆の、どこか恍惚とした吐息がアランの口から漏れる。
その様はまるで正反対なのに、おそらく考えていることはふたり同じだった。
「――最後まで、はいった」
「い、言わなくていい、です、そんな、こと……」
「だって、したかったんでしょう?」
そうだけど。確かにそう言ったけれど。
何より安堵する自分が居るとは思いもよらなかった。
まさか転生した先で初体験をするなんて思ってもいなかった。
むしろフェリーチェの初体験を、自分が奪ってしまったのではないのだろうか。
もはやだんだんややこしくなってくる。自分はいったい誰なのだろう。
「リーチェ」
あぁ。そうだ。少なくとも今は。
そう呼んでくれるひとがいる。
ここに居る自分を、アランは受け容れてくれている。
「ごめんね、そんなもたないや」
言葉のわりに悪びれる様子もなく笑ったアランは、今までで一番飾らない笑みを浮かべていた気がした。
それから両手がぐっと、フェリーチェの腰を掴む。更に腰が押し付けられて、思わず声が漏れた。
「っ、あ……!」
「はぁ、やば……気持ち過ぎて、オレの方がぜんぶ、持ってかれそ」
小さく呟いて、引き抜かれた腰がぎりぎりのところで止まり、また同じ場所を辿りながら押し付けられる。
ゆっくりと繰り返される行為にベッドが軋み、肌のぶつかる音がやけに響いた。
「ぁ、や……っ」
「あーー……声、かわってきたね。かわいい声。気持ち良い?」
アランはそれしか言わない。かわいいって、そればかり。
それが彼なりの流儀なのだろうか。きっと他の女の子にも言っている。
わかっているのに。
体が先に喜んで、彼のものを締め付ける。
その反応にまたアランは目を細める。
こっちは笑う余裕もないというのに、その笑みが途端に憎らしくなる。
そんなフェリーチェの気持ちが見透かされているのか、アランがそっと顔を寄せてきた。
「オレ、嘘は言わないよ? リーチェの体、気持ち良いし、オレに乱されるリーチェは」
腰の動きは止まらない。額に汗を滲ませて、なのにアランは心底楽しそうにささやいた。
「堪らなくかわいい」
言葉と同時に最奥を抉るように突かれた。悲鳴ににも似た嬌声を、アランの唇が受け止める。
絶対、わざと。ゆるやかに動きがはやくなってくる。
舌が触れるともう反射的に、自分も応えるようになってしまった。
知らず両腕がアランの首元にまわる。この後の予感に体が勝手に動いていた。
また自分が締め付けたのか、彼のものが大きくなったのかは分からない。互いの口元で小さく喘ぐだけ。
それからあとは、彼の為の時間だった。
沈む下半身を更に強く押し付けながら、吐息の熱さと心臓のはやさだけが、見えない欲情を伝えている。
痛みに慣れると次に感じるのは快楽の波だけ。もうひとりでは堪えることができないところまで、いつの間にか来てしまっていた。
熱くて大きな手が頬に触れ、半ばむりやり顔を合わせられる。
その瞬間の顔を見られたくないフェリーチェの気持ちを分かっていて、わざと鼻先を掠める距離の先でアランの瞳が細められた。
ずっと、笑っている。なのに腰は止まらない。
無意識に、反射的に、動いていた。
初めて自分から、それが欲しくなってしまった。
「あぁ、やっと、キスしてくれた」
そう言ってどこか嬉しそうに笑う彼を、いつかどこかで見たような気がするけれど、やっぱり思い出せない記憶のなか。
なのに胸の奥が知らず疼く。
掻き消すようにせりあがってくる目の前の欲望にすべてを委ねた。
アランがちゃんと連れていってくれるって言ったから。大丈夫だと思えた。
「……っ、は、リーチェ……」
「……ッ、あっ、イ、く……! アラン、さま……!」
どくんと大きく心臓が鳴る。
自分のだろうか、それとも。
きつく閉じた瞼の裏側に、白く弾ける衝動に、フェリーチェの意識も体も全部もっていかれてしまう。
抱きしめられる腕の強さと、自分の抱き締める感触だけがやけに鮮明だった。
その瞬間、ようやくアランの顔から笑みが消える。
最初で最後ならもっとちゃんと、その顔を見ておけば良かった。
その頃にはフェリーチェの意識はもうここには無かったのだけれど。
こうしてひとりめのイベントが、なんとか終わりを迎えたのだった。
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