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第2章 眠れない騎士アランの憂鬱
11.最後まで_①
しおりを挟むやめてって、言ったのに。
優しい時とはまるで真逆の本気のアランは、フェリーチェの最初の望み通りに決して止めることはしなかった。
「……やだ、本当に、もう……やめて、アラン様……恥ずかしい……」
「……そういう反応の方が、余計に男はそそられるんだよ」
僅かにくぐもったその声が、自分の脚の間からする。
吐息の合間に水音が絡み、濡れた音が部屋に響いていた。
耳を塞いでしまいたくなるけれど、両手は顔を隠すのに使ってしまっている。
舐められている。やだって何度も言ったのに。
その方が絶対にいいからと、アランは優しい顔で笑いながら、フェリーチェの誰にも見られたことのない部分を暴き、唇を寄せ、舐め上げた。
やがてその舌が一番敏感な部分に触れると、そこをずっとひたすらに舐められて、食べられて、吸われて、甘噛みされて。
その隙をつくように指がフェリーチェの内側にいれられる。恥ずかしさに意識をとられて先ほどより痛みは感じなかった。先にさんざん舌で掻き回されていたからかもしれない。
体の奥から何かが零れる感触がした。アランが指先でそれをすくい、わざと音をたてて同じ場所に押し込める。時に舌先ですすりながら。
恥ずかしくて泣きながら懇願するのに、アランはやめてはくれない。
止めないでと言ったのは自分だ。分かっているけれど、
舌と、指が。今度は同時にはいってくる。
それを感じるだけで頭が沸騰しそうだった。
両手で顔を覆いながら、もうほとんど泣いている。
持ち上げられている脚がずっと小刻みに震えて引き攣れそうそう。
「ちゃんと尖ってる、かわいいね」
「……っ」
いちいち、口にするのを、本当にやめてほしい。
フェリーチェは半分泣きながら、先ほど初めて体が覚えた感覚に突き落とされるのを必死に堪えていた。
初めての絶頂はあまりにも刺激が強すぎて、その予兆に心は竦むのに、なのに体だけはそれを快楽の至上として容易に受け容れ始めている。
気持ちが体に置いて行かれている感覚こそが、こわいと思った。まるで自分のものではなくなっていくようだった。
少なくとも今フェリーチェの体は、アランの落とし込む快楽に翻弄されるがままだ。
「イっていいのに」
「い、いや……自分じゃなくなりそうで、なんだか、こわい」
「……本当に初めてなんだね、どうしよう、かわいいなぁ」
アランが笑いながら零して、だけど僅かに眉根を寄せる。
それから「そろそろきっつい」と小さく呟くと、自身のベルトを片手で器用に緩めた。カチャリと小さく響く金属音。
フェリーチェはそれに気付かない。自身の脚が、片方だけ持ち上げられていることも。
「ごめんね、そろそろ、挿入れてみてい?」
「え……?」
「さっきよりは、解れたと思うんだけど……痛かったら言って、すぐやめる」
「まっ、あ、アランさ、ま……!」
充分に濡れたその入口に、ぐ、っと。その切先が押し付けられる。
指よりもぜんぜん太くて大きい。ちらりと一瞬見えただけではよく分からなかったけれど、体を割ってはいろうとするその質量に、無意識に体が強張った。
けれどアランは躊躇いなくその先端を推し進めてくる。
「……やばい、まじで、きっつ……」
「アラン様、やっぱり、待っ」
「リーチェ、もう少しだけ、力抜ける?」
呼吸を乱しながら言われ、咄嗟に首を振ってしまう。
それを見てアランは腰を止めた。無理に押し進めることもしないけれど退く気も一切見せず、そのままそっとフェリーチェの頬に手の平を寄せた。
その手があまりにも優しくて、フェリーチェは無意識に止めていた呼吸を思い出す。
「じゃあ、キスしよ」
それどころではない。
痛みと異物感と拒絶感に下半身が重たく疼いている。いったん抜いて欲しい。
だけどアランの顔を見るとそれは言えなかった。
余裕の顔をしているけれど額には汗を浮かべ、なにかをきつく堪えていることが、経験の浅いフェリーチェにも分かったからだ。
そしてそれは、自分がそうさせている。
おそらくアランにとってフェリーチェの誘いはこれ以上ないくらい面倒なものだっただろう。
自分から誘ってきたと思ったら実は処女で、かかる労力も時間もきっと想定外だったはず。
それなのに彼にだけ無体を強いるには流石に申し訳なさ過ぎた。
自分の痛みばかりに呻いてもいられない。
これは確かに自分で望んだ行為なのだから。
「リーチェ、舌、だして」
言われるままに舌を突きだすと、アランの舌先が口外で絡められた。
ゆるく触れて離れるだけの、つたない愛撫に下腹部が疼く。
きつく吸われる感触をもう知っていて、知らずそれを求めていた。なぜかその方が体が安心することを。
唾液が下る。舌を伝って、零れた喉元が上下して、アランの目が細められる。
瞬後、アランの片手が頭の後ろにまわってきて、思い切りきつく抱き締められて、唇ごとかぶりつかれた。
ぐちゃぐちゃになるようなキス。
抱きつきたかったのはフェリーチェも同じで、ほとんど無意識に腰を押し付けていた。自分から。
まだ触れ合っていた部分の熱がくちゅりと鳴る。
「し、て……ください、アランさま……」
「……いいの? 本当に」
どうしてまだ、それを確かめてくれるんだろう。
だけどもう戻れない。
「最後までして、アラン様」
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