[完結]おっさん、異世界でスローライフはじめます 〜猫耳少女とふしぎな毎日〜

桃源 華

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第10話:獣人差別の現実

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王都の城門をくぐった瞬間、
俺はなんとも言えない
違和感を覚えた。

「……なんか、視線を感じるな」

「んー……ミュリ、
なんか嫌な感じがする」

ミュリが小さく耳を伏せながら、
しっぽを体に巻きつけた。

「どうした?」

「なんかね、ここの人たち……
あたしのこと、じろじろ見てる」

そう言われて周囲を見渡すと、
確かに王都の住人たちの視線が
ミュリに集中している。

「あいつ、獣人か……」

「まさか、あんなのが城に
入るのか?」

「まったく、不愉快だな……」

「……おい」

俺は思わず低い声を出して
しまった。何だ、このあから
さまな態度は。

獣人族が人間社会で肩身の狭い
思いをしているとは聞いたこと
があったが、ここまで露骨だと
は思わなかった。

ミュリは無理に明るい顔を
作って笑っているが、
しっぽの先はピクリとも
動かない。

「……気にするな、ミュリ」

「うん、大丈夫!」

笑顔を見せるが、
耳は少し垂れている。

くそっ、なんだこの空気。
こんなものがまかり通って
いるのか、この国は。

謁見の間にて

俺とミュリは、国王陛下に
謁見するために城の奥深くへ
と通された。

王座の前には、国王らしき
人物が座っており、
その周囲には数人の家臣たちが
控えていた。

「おお、そなたが
レオン・シュナイダー殿だな」

国王は威厳のある声でそう
言った。

「初めまして、国王陛下。
今回の一連の事件について
報告に参りました」

俺がそう言って一礼すると、
家臣の一人がふとミュリを
見て鼻を鳴らした。

「……それにしても、
そちらの獣人の娘は
何者ですかな?」

「俺の仲間です」

そうはっきり言った瞬間、
家臣たちの表情が険しく
なった。

「ほう、仲間、とな?」

「レオン殿、あまり獣人を
身近に置くのはお勧め
しませんぞ。彼らはしょせん、
我ら人間の社会には不釣り合い
な存在……」

「おい」

俺の声が低くなる。

「今、なんて言った?」

「ほう? 事実を述べた
だけですが?」

「獣人が人間社会に不釣り合い? 
何を根拠にそんなことを?」

「獣人というのは、我々とは
異なる種族。礼儀も教養も、
人間の社会に適応する知能も
低い。ましてや、このような
神聖な場に獣を連れてくる
など……」

「ふざけんな」

俺は一歩前に出た。

「ミュリは俺の大切な仲間だ。
獣人だからって、人間より
劣っていると決めつけるのは
おかしいだろ」

「な……!」

「だいたい、お前たちは獣人と
まともに話したことがあるのか? 
彼らがどんな思いで生きている
のか知ってるのか?」

家臣たちは動揺した表情を
見せたが、すぐに鼻で笑った。

「話をする必要などない。
彼らは我々と異なる存在。
ただそれだけのことです」

「お前、それ本気で
言ってるのか?」

「当然ですとも。獣人など、
所詮は我々人間の下にいる者
たち。彼らが人間と対等に
扱われるなど、ありえませんな」

「……」

俺は横目でミュリを見た。

彼女はずっと黙っていた。

耳も垂れ、しっぽは完全に
動きを止めている。

「……ミュリ?」

「……大丈夫」

ミュリは小さな声でそう
言った。

「大丈夫じゃねぇだろ」

「ううん、本当に大丈夫。
……昔から、こういうの
慣れてるから」

「……!」

「子どものころから、
ずっとこうだったよ。
『獣人だから』っていう
理由だけで、いっぱい
差別されてきた」

ミュリは微笑んでいた。

だけど、その笑顔は
あまりにも痛々しかった。

「……」

俺は拳を握った。

「ふざけんなよ……!」

「な、なんですかな!?」

「獣人だからって理由で、
差別されるのが当たり前? 
それが普通? 
ふざけんなよ!!」

俺は強い口調で言い放った。

「俺は認めねぇぞ、そんなもの! 
ミュリは誰よりも優しくて、
頑張り屋で、俺の大切な仲間だ! 
それを『人間じゃない』ってだけ
で見下すとか、どんだけ腐って
んだ、お前らの価値観は!」

「な、何を無礼な!」

「無礼なのはどっちだよ!! 
いいか、俺は獣人と人間の
共存を目指す! そして、
こんなバカげた差別意識を
ぶっ壊してやる!!」

「なっ……!!」

謁見の間が一瞬静まり返る。

国王がゆっくりと口を開いた。

「……レオン殿」

「……はい」

「そなたの言葉、実に興味深い」

国王は目を細め、考え込むような
表情を見せた。

「確かに、獣人と人間の間には
長きに渡る確執がある。だが、
それを変えるというのなら……
そなたに、その証を見せて
もらおう」

「証、ですか?」

「そなたが本当に獣人との共存を
望むなら、実際に獣人たちの
地位を向上させる策を
示してみよ」

「……!」

なるほど、そういうことか。

俺の理想をただの理想で終わら
せるか、それとも本当に
実現させるか——
それは俺次第ってことか。

「……わかりました。
必ず証明してみせます」

「よかろう。ならば、
まずはそなたの力を見せて
もらうとしよう」

国王がにやりと笑った。

「ちょうど、
王都である問題が起きて
いてな……」
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