この七日間はノンフィクションです。ただし、七つの嘘が紛れています。

双守桔梗

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本編

5.旅の三日目【つくもフラワーパーク】

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 徐々に遠ざかっていく景色が、窓越しに見える。

 空はオレンジ色に染まっており、西洋風の建物の近くには夏の花々が咲き誇っている。園内をゆったりと進むロードトレインや、メリーゴーランドなどもある。

「わ~……高い所から見る花達もキレイだね」
 はしゃいでいるの声が聞こえた。

「そうね」
 微笑ましそうなとうの声がした。彼女の声に反応するように、ボーイッシュな服装の藤佳が映る。彼女は微笑みを浮かべながら、座席に座っている。

 紫の座席以外は白色のゴンドラ内。藤佳の後ろには、窓越しに観覧車のフレームと夕焼け空も映っている。

「ボードゲームですごく盛り上がって、遅くまで遊んでいたから二人共、寝坊しちゃって……。ここに着いたのは結局、昼過ぎになっちゃったね」
 真理乃は少し照れくさそうに笑う。

「えぇ。だけど、夜更かしは楽しかったし、目的の乗り物には乗れたから私は満足よ。お化け屋敷では真理乃に抱きついてもらえたし」
 藤佳は愛おしそうな表情と声でそう言いながら微笑む。

「へへっ……もう平気だと思ったんだけどなぁ……。外から見る限りでは、あんまり怖そうじゃなかったし……」
 真理乃の声は恥ずかしそうで、少し悔しそうでもある。

「ふふっ……初めてここに来た時は、お化け屋敷の前を通るだけでも怖がっていたものね」
 藤佳は優しく言って、ふわふわと笑う。

「へへっ……中学生なのにお化けが怖かったなんて……ホント、情けないよね。今日も情けない姿を見せちゃったし……」
「あら、情けなくなんてないわ。とても可愛くて……私は違う意味でドキドキしたもの」
「藤佳ちゃんってばまたからかって~」
 少し照れた声で真理乃がそう言った瞬間、ずっと微笑んでいた藤佳が真剣な表情になる。

「私は本気よ。真理乃のいろんな表情や仕草に、私はいつもドキドキしているわ」
 藤佳が色っぽい表情でふわりと笑う。
「へ……そ、そうだったんだ……」
 真理乃の声は裏返っている。

 少しの沈黙。

「そ、そういえば……ここでアタシ達は恋人になったんだよね。中学二年生の冬休みに、観覧車の中で藤佳ちゃんが告白してくれて」
 真理乃は唐突に話題を変える。最初はあたふたしている感じだったが、徐々に声が落ち着いてくる。

「ふふっ……そうね。確か、今ぐらいの夕暮れ時に告白したわね」
 藤佳はちらりと窓の外を見た後、目を細めて正面を向く。

「ホントはアタシから告白したかったんだけど緊張しちゃって……先を越されちゃったんだよなぁ……」
 真理乃の声はかなり悔しそうだ。

「ふふっ……本当は貴方の言葉を待ってもよかったのだけど……。緊張している可愛い真理乃を見ていたら、気持ちが抑えきれなくて……。自然と『大好きよ』って言葉が出ていたわ」
 藤佳の表情と声から愛おしさが溢れ出ている。

「へへっ……あの時はビックリしたなぁ……フラれる覚悟で、告白しようとしてたから……。気持ちを伝えないと、きっと後悔すると思って。だけど、それ以上に……藤佳ちゃんに『大好き』って、言ってもらえてすごく嬉しかった」
「私も真理乃に好きになってもらえた事が嬉しかった。とても長い片想いだったから余計にね」

 二人共心底、嬉しそうで、観覧車内は和やかな雰囲気に包まれている。

「その後は、好きになったきっかけとかを、互いに言い合ったよね」
「えぇ。私は最初、一目惚れだったけど、真理乃の温かい笑顔と芯の強さにますます惹かれていった。そう真理乃に伝えたわ」
 藤佳は真面目な表情で言った後、穏やかな顔で微笑んだ。

「アタシは……藤佳ちゃんと一緒にいる時が一番、アタシらしくいられるって気づいて……。それと同時に恋も自覚した。隣で眠る藤佳ちゃんの体温に安心感を覚えて……許されるならずっと一緒にいたいって思った。って伝えたけど……改めて口にすると照れくさいな」
 真理乃は照れながらもはっきりとそう口にして小さく笑う。

「ふふっ……私もずっと真理乃と一緒にいたいって思っているわ」
 ここまでは藤佳も穏やかに笑っていたが、彼女の顔から突然スッ……と笑みが消える。それと同時に「例え、誰かに許されなくても……」と付け加えた後、仄暗い瞳で微かに口角を上げた。

「許されなくても……?」
 真理乃は少し不安そうだ。
「えぇ、誰かの許可なんていらない。私達の、互いの気持ちだけでいいのよ」
「そっか……それでよかったんだ」
 迷いのない藤佳の言葉に、真理乃は安心したような声を出す。

 すると藤佳は「そうよ」と相槌を打った後、微かに眉毛を下げて窓の外を見た。

「だから私は……私達の仲を引き裂いた、あの人達を恨んでいるわ」
 外に目を向けたまま、藤佳はぽつりと呟くように言った。

 真理乃は「え……」と心底、驚いたような声を漏らす。

「この感情を認めてしまったら、あの人達に負けた気がして……今まで言えなかったけどね……」
 藤佳はそう付け加えると、どこか悔しそうな表情で正面を向いた。
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