この七日間はノンフィクションです。ただし、七つの嘘が紛れています。

双守桔梗

文字の大きさ
10 / 11
本編

7.旅の終わり【どこかの崖】

しおりを挟む
 崖のような場所に立つ、白いワンピースを着たとうと青空が映る。微かに波の音が聞こえる。

、大丈夫?」
 藤佳が少し心配そうに声をかける。
「うん。なんとか固定できたよ」
 オーバーサイズの半袖パーカーと短パン、ポニーテール姿の真理乃が、言葉を発しながら画面に映る。

 真理乃は藤佳の隣に並ぶと正面を見た。
 時折り、少し強い風が吹いているようで、二人の髪や裾などが大きく揺れる。

「おばあ様、お母様、お父様、かごみやさん、すめらぎくん、お久しぶりです」
 そう言った真理乃の声は少し震えていて、表情は硬くて暗い。だが、藤佳に手を握られた瞬間、真理乃はハッとして、徐々に表情が柔らかくなる。

「そもそもこの映像を見てくれているかは分からないけど……。仮に見てくれていたとしても、あまり長々と話していたら最後まで聞いてくれないだろうから……なるべく手短に話すね」
 真理乃の声はもう震えておらず、真っすぐに前を見て、はっきりと言葉を発している。

「これ以上、藤佳ちゃんと彼女の家族に危害を加えないでください。それから藤佳ちゃんとの約束を守って、アタシ達の仲を認めてください。お願いします」
 真理乃がそう言った後、彼女と一緒に藤佳も深く頭を下げた。

 しばらくして、彼女達は少し仄暗い瞳で顔を上げる。

「もし、このお願いを聞いてくれない場合は……諸々の証拠をネットに公開します。これは脅しではなく本気です。実はあの日、おじいちゃんの別荘にカメラを設置していたの。藤佳ちゃんとアタシの、思い出ムービーみたいなものを作るために。それでね、おじいちゃんが回収してくれていた、カメラを確認したらこれも映ってたよ」

 その次の瞬間、藤佳が同じ歳くらいの少女少年と言い争っている、少しだけ画質の荒い映像に切り替わる。少しして、藤佳は二人の手によって突き落とされ、助けにきた真理乃と一緒に階段を転げ落ちる。

 崖の上に立つ藤佳と真理乃の映像に戻る。

「こんな風に他にも、藤佳ちゃんのご両親が経営していた旅館への嫌がらせの証拠も掴んでいるから。お金で雇った人の証言とかね……」

 真理乃はほんの一瞬、罪悪感のようなものを滲ませた。だがすぐに、まるで悪役を演じるように、「後は言わなくても分かるよね?」とニヒルに笑った。

「私からも少しだけ言わせてもらうわ。もし、貴方達があの時の約束を破ると言うのなら……私は真理乃をどこかへ連れ去ります。もっと言うなら……真理乃と心中する覚悟だってあるわ」

 藤佳は真理乃と繋いでいた手を離すと、すぐにそれを彼女の腰に回して引き寄せる。それから妖艶な表情で、真理乃の髪に軽く口づけた後、真剣な顔で正面を睨みつける。

 真理乃は目を見開き、少し動揺しているようだったが、すぐに咳払いをしてから表情を引き締めた。

「アナタ達はアタシに、それぞれ理想の『真理乃』像を押しつけてきた。お母様とかごみやさんには性別すら歪められた」
 そう言っている内に、真理乃はだんだん悲しげな顔になっていく。しかし、そこで言葉を区切った後、力強い瞳を正面に向けた。

「そんなアタシに藤佳ちゃんは……アタシの大切な恋人はこう言ってくれたの。『樹津田真理乃の人生も存在も、全て貴方だけのものだから……。誰かの理想通りに生きるんじゃなくて、真っすぐ自分を生きて』って……」

 真理乃の声は穏やかで、藤佳に対する愛おしさが溢れ出ている。そして、真理乃の表情からも彼女の心が、藤佳のおかげで救われている感じがひしひしと伝わってくる。

「だからアタシは藤佳ちゃんと――に決めました。さようなら……」

 強い風が吹いた所為で一部、真理乃の声が聞き取れない。

 藤佳と真理乃は再び手を繋ぎ、そのままこちらに背中を向けた。

「さいごに、一言だけ言わせてください。これはアタシ達の……」
 真理乃は空を見上げて、呟くように言葉を発した。

「復讐物語」
「心中物語」

 二人の声が重なる。その刹那、強い風が吹いた。

 風でカメラが倒れたようで、緑がかった地面だけが映る。波と少し強い風の音が聞こえる中、画面はそのままで短いエンドロールが流れた。

 その後、画面はフェイドアウトして、端に【END】の文字が表示される。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

【完結】【ママ友百合】ラテアートにハートをのせて

千鶴田ルト
恋愛
専業主婦の優菜は、夫・拓馬と娘の結と共に平穏な暮らしを送っていた。 そんな彼女の前に現れた、カフェ店員の千春。 夫婦仲は良好。別れる理由なんてどこにもない。 それでも――千春との時間は、日常の中でそっと息を潜め、やがて大きな存在へと変わっていく。 ちょっと変わったママ友不倫百合ほのぼのガールズラブ物語です。 ハッピーエンドになるのでご安心ください。

身体だけの関係です‐三崎早月について‐

みのりすい
恋愛
「ボディタッチくらいするよね。女の子同士だもん」 三崎早月、15歳。小佐田未沙、14歳。 クラスメイトの二人は、お互いにタイプが違ったこともあり、ほとんど交流がなかった。 中学三年生の春、そんな二人の関係が、少しだけ、動き出す。 ※百合作品として執筆しましたが、男性キャラクターも多数おり、BL要素、NL要素もございます。悪しからずご了承ください。また、軽度ですが性描写を含みます。 12/11 ”原田巴について”投稿開始。→12/13 別作品として投稿しました。ご迷惑をおかけします。 身体だけの関係です 原田巴について https://www.alphapolis.co.jp/novel/711270795/734700789 作者ツイッター: twitter/minori_sui

身体だけの関係です‐原田巴について‐

みのりすい
恋愛
原田巴は高校一年生。(ボクっ子) 彼女には昔から尊敬している10歳年上の従姉がいた。 ある日巴は酒に酔ったお姉ちゃんに身体を奪われる。 その日から、仲の良かった二人の秒針は狂っていく。 毎日19時ごろ更新予定 「身体だけの関係です 三崎早月について」と同一世界観です。また、1~2話はそちらにも投稿しています。今回分けることにしましたため重複しています。ご迷惑をおかけします。 良ければそちらもお読みください。 身体だけの関係です‐三崎早月について‐ https://www.alphapolis.co.jp/novel/711270795/500699060

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

放課後の約束と秘密 ~温もり重ねる二人の時間~

楠富 つかさ
恋愛
 中学二年生の佑奈は、母子家庭で家事をこなしながら日々を過ごしていた。友達はいるが、特別に誰かと深く関わることはなく、学校と家を行き来するだけの平凡な毎日。そんな佑奈に、同じクラスの大波多佳子が積極的に距離を縮めてくる。  佳子は華やかで、成績も良く、家は裕福。けれど両親は海外赴任中で、一人暮らしをしている。人懐っこい笑顔の裏で、彼女が抱えているのは、誰にも言えない「寂しさ」だった。  「ねぇ、明日から私の部屋で勉強しない?」  放課後、二人は図書室ではなく、佳子の部屋で過ごすようになる。最初は勉強のためだったはずが、いつの間にか、それはただ一緒にいる時間になり、互いにとってかけがえのないものになっていく。  ――けれど、佑奈は思う。 「私なんかが、佳子ちゃんの隣にいていいの?」  特別になりたい。でも、特別になるのが怖い。  放課後、少しずつ距離を縮める二人の、静かであたたかな日々の物語。 4/6以降、8/31の完結まで毎週日曜日更新です。

落ち込んでいたら綺麗なお姉さんにナンパされてお持ち帰りされた話

水無瀬雨音
恋愛
実家の花屋で働く璃子。落ち込んでいたら綺麗なお姉さんに花束をプレゼントされ……? 恋の始まりの話。

小さくなって寝ている先輩にキスをしようとしたら、バレて逆にキスをされてしまった話

穂鈴 えい
恋愛
ある日の放課後、部室に入ったわたしは、普段しっかりとした先輩が無防備な姿で眠っているのに気がついた。ひっそりと片思いを抱いている先輩にキスがしたくて縮小薬を飲んで100分の1サイズで近づくのだが、途中で気づかれてしまったわたしは、逆に先輩に弄ばれてしまい……。

処理中です...