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本編
7.旅の終わり【どこかの崖】
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崖のような場所に立つ、白いワンピースを着た藤佳と青空が映る。微かに波の音が聞こえる。
「真理乃、大丈夫?」
藤佳が少し心配そうに声をかける。
「うん。なんとか固定できたよ」
オーバーサイズの半袖パーカーと短パン、ポニーテール姿の真理乃が、言葉を発しながら画面に映る。
真理乃は藤佳の隣に並ぶと正面を見た。
時折り、少し強い風が吹いているようで、二人の髪や裾などが大きく揺れる。
「おばあ様、お母様、お父様、かごみやさん、すめらぎくん、お久しぶりです」
そう言った真理乃の声は少し震えていて、表情は硬くて暗い。だが、藤佳に手を握られた瞬間、真理乃はハッとして、徐々に表情が柔らかくなる。
「そもそもこの映像を見てくれているかは分からないけど……。仮に見てくれていたとしても、あまり長々と話していたら最後まで聞いてくれないだろうから……なるべく手短に話すね」
真理乃の声はもう震えておらず、真っすぐに前を見て、はっきりと言葉を発している。
「これ以上、藤佳ちゃんと彼女の家族に危害を加えないでください。それから藤佳ちゃんとの約束を守って、アタシ達の仲を認めてください。お願いします」
真理乃がそう言った後、彼女と一緒に藤佳も深く頭を下げた。
しばらくして、彼女達は少し仄暗い瞳で顔を上げる。
「もし、このお願いを聞いてくれない場合は……諸々の証拠をネットに公開します。これは脅しではなく本気です。実はあの日、おじいちゃんの別荘にカメラを設置していたの。藤佳ちゃんとアタシの、思い出ムービーみたいなものを作るために。それでね、おじいちゃんが回収してくれていた、カメラを確認したらこれも映ってたよ」
その次の瞬間、藤佳が同じ歳くらいの少女少年と言い争っている、少しだけ画質の荒い映像に切り替わる。少しして、藤佳は二人の手によって突き落とされ、助けにきた真理乃と一緒に階段を転げ落ちる。
崖の上に立つ藤佳と真理乃の映像に戻る。
「こんな風に他にも、藤佳ちゃんのご両親が経営していた旅館への嫌がらせの証拠も掴んでいるから。お金で雇った人の証言とかね……」
真理乃はほんの一瞬、罪悪感のようなものを滲ませた。だがすぐに、まるで悪役を演じるように、「後は言わなくても分かるよね?」とニヒルに笑った。
「私からも少しだけ言わせてもらうわ。もし、貴方達があの時の約束を破ると言うのなら……私は真理乃をどこかへ連れ去ります。もっと言うなら……真理乃と心中する覚悟だってあるわ」
藤佳は真理乃と繋いでいた手を離すと、すぐにそれを彼女の腰に回して引き寄せる。それから妖艶な表情で、真理乃の髪に軽く口づけた後、真剣な顔で正面を睨みつける。
真理乃は目を見開き、少し動揺しているようだったが、すぐに咳払いをしてから表情を引き締めた。
「アナタ達はアタシに、それぞれ理想の『樹津田真理乃』像を押しつけてきた。お母様とかごみやさんには性別すら歪められた」
そう言っている内に、真理乃はだんだん悲しげな顔になっていく。しかし、そこで言葉を区切った後、力強い瞳を正面に向けた。
「そんなアタシに藤佳ちゃんは……アタシの大切な恋人はこう言ってくれたの。『樹津田真理乃の人生も存在も、全て貴方だけのものだから……。誰かの理想通りに生きるんじゃなくて、真っすぐ自分を生きて』って……」
真理乃の声は穏やかで、藤佳に対する愛おしさが溢れ出ている。そして、真理乃の表情からも彼女の心が、藤佳のおかげで救われている感じがひしひしと伝わってくる。
「だからアタシは藤佳ちゃんと――に決めました。さようなら……」
強い風が吹いた所為で一部、真理乃の声が聞き取れない。
藤佳と真理乃は再び手を繋ぎ、そのままこちらに背中を向けた。
「さいごに、一言だけ言わせてください。これはアタシ達の……」
真理乃は空を見上げて、呟くように言葉を発した。
「復讐物語」
「心中物語」
二人の声が重なる。その刹那、強い風が吹いた。
風でカメラが倒れたようで、緑がかった地面だけが映る。波と少し強い風の音が聞こえる中、画面はそのままで短いエンドロールが流れた。
その後、画面はフェイドアウトして、端に【END】の文字が表示される。
「真理乃、大丈夫?」
藤佳が少し心配そうに声をかける。
「うん。なんとか固定できたよ」
オーバーサイズの半袖パーカーと短パン、ポニーテール姿の真理乃が、言葉を発しながら画面に映る。
真理乃は藤佳の隣に並ぶと正面を見た。
時折り、少し強い風が吹いているようで、二人の髪や裾などが大きく揺れる。
「おばあ様、お母様、お父様、かごみやさん、すめらぎくん、お久しぶりです」
そう言った真理乃の声は少し震えていて、表情は硬くて暗い。だが、藤佳に手を握られた瞬間、真理乃はハッとして、徐々に表情が柔らかくなる。
「そもそもこの映像を見てくれているかは分からないけど……。仮に見てくれていたとしても、あまり長々と話していたら最後まで聞いてくれないだろうから……なるべく手短に話すね」
真理乃の声はもう震えておらず、真っすぐに前を見て、はっきりと言葉を発している。
「これ以上、藤佳ちゃんと彼女の家族に危害を加えないでください。それから藤佳ちゃんとの約束を守って、アタシ達の仲を認めてください。お願いします」
真理乃がそう言った後、彼女と一緒に藤佳も深く頭を下げた。
しばらくして、彼女達は少し仄暗い瞳で顔を上げる。
「もし、このお願いを聞いてくれない場合は……諸々の証拠をネットに公開します。これは脅しではなく本気です。実はあの日、おじいちゃんの別荘にカメラを設置していたの。藤佳ちゃんとアタシの、思い出ムービーみたいなものを作るために。それでね、おじいちゃんが回収してくれていた、カメラを確認したらこれも映ってたよ」
その次の瞬間、藤佳が同じ歳くらいの少女少年と言い争っている、少しだけ画質の荒い映像に切り替わる。少しして、藤佳は二人の手によって突き落とされ、助けにきた真理乃と一緒に階段を転げ落ちる。
崖の上に立つ藤佳と真理乃の映像に戻る。
「こんな風に他にも、藤佳ちゃんのご両親が経営していた旅館への嫌がらせの証拠も掴んでいるから。お金で雇った人の証言とかね……」
真理乃はほんの一瞬、罪悪感のようなものを滲ませた。だがすぐに、まるで悪役を演じるように、「後は言わなくても分かるよね?」とニヒルに笑った。
「私からも少しだけ言わせてもらうわ。もし、貴方達があの時の約束を破ると言うのなら……私は真理乃をどこかへ連れ去ります。もっと言うなら……真理乃と心中する覚悟だってあるわ」
藤佳は真理乃と繋いでいた手を離すと、すぐにそれを彼女の腰に回して引き寄せる。それから妖艶な表情で、真理乃の髪に軽く口づけた後、真剣な顔で正面を睨みつける。
真理乃は目を見開き、少し動揺しているようだったが、すぐに咳払いをしてから表情を引き締めた。
「アナタ達はアタシに、それぞれ理想の『樹津田真理乃』像を押しつけてきた。お母様とかごみやさんには性別すら歪められた」
そう言っている内に、真理乃はだんだん悲しげな顔になっていく。しかし、そこで言葉を区切った後、力強い瞳を正面に向けた。
「そんなアタシに藤佳ちゃんは……アタシの大切な恋人はこう言ってくれたの。『樹津田真理乃の人生も存在も、全て貴方だけのものだから……。誰かの理想通りに生きるんじゃなくて、真っすぐ自分を生きて』って……」
真理乃の声は穏やかで、藤佳に対する愛おしさが溢れ出ている。そして、真理乃の表情からも彼女の心が、藤佳のおかげで救われている感じがひしひしと伝わってくる。
「だからアタシは藤佳ちゃんと――に決めました。さようなら……」
強い風が吹いた所為で一部、真理乃の声が聞き取れない。
藤佳と真理乃は再び手を繋ぎ、そのままこちらに背中を向けた。
「さいごに、一言だけ言わせてください。これはアタシ達の……」
真理乃は空を見上げて、呟くように言葉を発した。
「復讐物語」
「心中物語」
二人の声が重なる。その刹那、強い風が吹いた。
風でカメラが倒れたようで、緑がかった地面だけが映る。波と少し強い風の音が聞こえる中、画面はそのままで短いエンドロールが流れた。
その後、画面はフェイドアウトして、端に【END】の文字が表示される。
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