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第18話:選ばれた人、選ばれなかった想い
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わたくしの足は、静かに――でも、確かに、“ひとり”の元へ向かっていた。
その瞬間、誰もが息を止めた。
王子、魔法使い、元婚約者、薬師、そして完璧令嬢。
さまざまな思惑が交差する空間の中――
わたくしが辿り着いたのは。
「……アレクシス様」
名を呼ぶと、彼は少しだけ目を見開いた。
けれど、すぐに、その鋼のような瞳がやわらかく揺れて。
「わたくしが、ここに辿り着けたのは――貴方がずっと、そこに立っていてくださったからですわ」
彼は、黙って手を差し伸べてきた。
わたくしは、その手を――取った。
「わたくし、貴方の隣で、生きていきたいと思います」
その言葉が、確かに、この恋を結んだ。
沈黙のあと、最初に動いたのは――カイだった。
「……そっか。うん。知ってたよ」
そして、小さく笑って、背を向けた。
「ロゼお姉。これからは、ちゃんと名前で呼んでよね。……もう、“弟”じゃいられないからさ」
「……ありがとう、カイ」
ユリウスは少しだけ困ったように笑って、頭を掻いた。
「まあ、こうなる気はしてたよ。アレクシスさんは反則だもん。静かで強くて、ちゃんと見てる」
そして、ウインクひとつ。
「でも次は負けないよ。恋でも政治でもね。僕は王子だから、挫折しても立ち上がるのさ」
エドワードは少しだけ視線を落とし――それから、しっかりと前を向いた。
「……ああ。君はいつだって、まっすぐだったな。きっと俺が、ちゃんと向き合えていれば――」
「いいえ。わたくしたちは、“あの時”のままでいるべきではなかったのですわ」
「……そうか。そう、だな」
そして、ハロルド。
「予想通りだ。君は最後まで、自分で選ぶ人だった。だからこそ――美しい」
「ハロルド様、わたくし……」
「言わなくていい。次に誰かに恋をする日が来たら、その人はきっと幸せだ。……それで十分だよ」
エステル嬢は、紅茶を一口飲んでから、微笑んだ。
「やはり“男らしさ”だけが勝負ではないのですわね。勉強になりますわ」
「……皮肉ではなく、本心として受け取っておきますわ」
「ふふ。では、また王都でお会いしましょう。きっとまた別の舞台で、貴女を追いかける者が現れますわよ?」
そして――夜。
薬草店の裏庭。
わたくしは、アレクシスと並んで、星空を見上げていた。
「皆様、とても優しかったですわ。……少し、胸が痛みますの」
「ああ。でも、お前は悪くない。誰にも、嘘をつかなかった」
そう言って、彼はわたくしの手を取った。
「……これから、ずっと一緒にいてくれるか」
「ええ。今度は、誰にも譲りませんわ。……わたくしが、選んだ“貴方”ですから」
満天の星の下、わたくしたちは、静かに寄り添った。
――そして、ようやく。
わたくしの“平穏な薬草スローライフ”が、本当に始まる気がしたのです。
その瞬間、誰もが息を止めた。
王子、魔法使い、元婚約者、薬師、そして完璧令嬢。
さまざまな思惑が交差する空間の中――
わたくしが辿り着いたのは。
「……アレクシス様」
名を呼ぶと、彼は少しだけ目を見開いた。
けれど、すぐに、その鋼のような瞳がやわらかく揺れて。
「わたくしが、ここに辿り着けたのは――貴方がずっと、そこに立っていてくださったからですわ」
彼は、黙って手を差し伸べてきた。
わたくしは、その手を――取った。
「わたくし、貴方の隣で、生きていきたいと思います」
その言葉が、確かに、この恋を結んだ。
沈黙のあと、最初に動いたのは――カイだった。
「……そっか。うん。知ってたよ」
そして、小さく笑って、背を向けた。
「ロゼお姉。これからは、ちゃんと名前で呼んでよね。……もう、“弟”じゃいられないからさ」
「……ありがとう、カイ」
ユリウスは少しだけ困ったように笑って、頭を掻いた。
「まあ、こうなる気はしてたよ。アレクシスさんは反則だもん。静かで強くて、ちゃんと見てる」
そして、ウインクひとつ。
「でも次は負けないよ。恋でも政治でもね。僕は王子だから、挫折しても立ち上がるのさ」
エドワードは少しだけ視線を落とし――それから、しっかりと前を向いた。
「……ああ。君はいつだって、まっすぐだったな。きっと俺が、ちゃんと向き合えていれば――」
「いいえ。わたくしたちは、“あの時”のままでいるべきではなかったのですわ」
「……そうか。そう、だな」
そして、ハロルド。
「予想通りだ。君は最後まで、自分で選ぶ人だった。だからこそ――美しい」
「ハロルド様、わたくし……」
「言わなくていい。次に誰かに恋をする日が来たら、その人はきっと幸せだ。……それで十分だよ」
エステル嬢は、紅茶を一口飲んでから、微笑んだ。
「やはり“男らしさ”だけが勝負ではないのですわね。勉強になりますわ」
「……皮肉ではなく、本心として受け取っておきますわ」
「ふふ。では、また王都でお会いしましょう。きっとまた別の舞台で、貴女を追いかける者が現れますわよ?」
そして――夜。
薬草店の裏庭。
わたくしは、アレクシスと並んで、星空を見上げていた。
「皆様、とても優しかったですわ。……少し、胸が痛みますの」
「ああ。でも、お前は悪くない。誰にも、嘘をつかなかった」
そう言って、彼はわたくしの手を取った。
「……これから、ずっと一緒にいてくれるか」
「ええ。今度は、誰にも譲りませんわ。……わたくしが、選んだ“貴方”ですから」
満天の星の下、わたくしたちは、静かに寄り添った。
――そして、ようやく。
わたくしの“平穏な薬草スローライフ”が、本当に始まる気がしたのです。
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