『悪役令嬢は平民になってもモテすぎて困ってます!~地味ライフのはずがイケメンだらけの薬草店になりました~』

みなこん。@イラストレーター

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『悪役令嬢はモテすぎた結果、結婚しました!~無表情騎士と新婚スローライフ、始まります~』

続・第3話:プロポーズ未遂と騎士の誓い

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王都へ向かう前夜。
 薬草店は、いつもより静かでした。

 荷物の準備は整い、婚約報告書類も封筒に収め、
 明日には、わたくしたちは再び“貴族の世界”へと足を踏み入れる――

 なのに、心だけが落ち着きませんでした。

 

 わたくしは、ひとり裏庭に出て、月を見上げておりました。

「……久しぶりに、王都へ戻ることになりますのね」

 
 その背後に、足音がひとつ。
 振り返らずとも、誰だかわかります。

「アレクシス様」

「ああ。……眠れないのか?」

「いえ。むしろ、緊張で変に元気ですわ」

 しばし、ふたりで無言のまま空を仰ぐ。
 星の瞬きが、静かに流れていく中――

 

「……ロゼリア」

「はい?」

「今日、少しだけ話をしてもいいか」

「もちろんですわ」


 アレクシス様は、わたくしの隣に立ち――
 不器用に、けれど誠実に、ひとつの“箱”を差し出した。


「これは……?」

「指輪、というには粗末だ。王都のものには見劣りするだろう」

「そんなこと……!」

「でも、“誓い”にはなると思った」

 そっと開いた箱の中には、銀色の細い指輪。
 華美な装飾はないけれど、丁寧に磨かれたその光は、まるで彼の心そのもののようで――

「騎士としてではなく、男として――」

「…………」

「お前を、守りたい。共に生きたい。……それが、俺の“誓い”だ」

 不器用すぎる、言葉。
 けれど、そのひとつひとつが、何よりも――まっすぐで、愛おしかった。

「アレクシス様」

 わたくしは、その箱を胸に抱きしめて、そっと微笑んだ。

「……もしこれが“正式なプロポーズ”ではなかったとしても」

「……ああ」

「わたくしにとっては、十分すぎるくらいに“幸せ”ですわ」

 そして、自分から手を伸ばして――彼の手を、そっと取った。

「ふたりで歩く未来に、わたくし、迷いはありません」

「……ありがとう」

 月の光が、ふたりの影を重ねる。
 静かに触れ合う掌の温度が、確かな約束となって、わたくしたちの胸に刻まれた夜でした。
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