扉を開けたらそこは異世界

さやかとゆうきの母

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異世界の扉

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「見張っていたけど、実際、あちらからこちらに行くことはできません。シンクがそう設定していたからです」
「それは、」

 爺さんがこちらの世界に来た時、古田さんは同行しなかっただよな。
 だったら、なんで今ここにいるんだ。
 やっぱり、爺さんが招き入れたのか。

「私が気が付いたのはシンクが扉を閉じた後だったんですけどね」
 
 べきっ。
 何かが壊れたような音がした。
「こっちが必死で扉を開けようと努力している間、自分はちゃっかり奥さん作って、子供まで産ませてさ」

 古田さんの様子がおかしい。
 なんだか、いつもの彼女じゃない。

「自分がこの世界にいられないから家族の面倒を見てくれなんて。勝手よね。奥様がいい人だからよかったけど」
 なんだか、愚痴を聞かされている気分だ。
「私は精霊なのよ。何が悲しくて人間の姿でいなくちゃいけないの。でも、この世界には精霊がいないし」
 愚痴がどんどん深刻なモノになっていく。
「古田さん、」

「はい、一郎坊ちゃま」
 できれば、坊ちゃまは止めてほしい。
「話をまとめると爺さんは別の世界の人間で、古田さんは爺さんに召喚された精霊。で、爺さんが死んだからこの世界にやってきたということになるのかな」
「大雑把ですけど、その通りです」

 古田さんは精霊。ということは、
「ひょっとして、古田さんは人間の姿に変化しているのかな」
「あら、よくわかりましたね。こちらでは精霊の姿は異形ですから。目立たないように人間に変化しました」

 精霊の姿って一体。
 ファンタジーにありがちなあの姿なのかな。
「見せましょう」

 ぱっ。
 突然、古田さんの姿が消えた。


「古田さん、」
「こちらです、一郎ぼっちゃま」
 ふわふわと浮かぶゴムまりくらいの球体。

「これが精霊の姿」
「移動は楽なんですが、人の姿の方が便利ということもあるんです」

 確かに人間の姿なら手足があるし。料理や洗濯、ほかにもいろいろなことができるはず。
「言っときますが精霊の姿でも仕事はできますよ」

 ふわふわとカップが浮かんで僕の手の中に落ちてきた。
 正直、これは人によってはかなりのホラーだ。

「実際、こっちの方がいいんです。人間に変化するのはそれなりに魔力を使うんです」
 魔力を補充したくてもこちらにはほとんど、魔力がないんです。
「そっか、向こうは魔法を使えるんだ」
 それってリアルファンタジーの世界じゃないか。

「なので、時々、扉をくぐって魔力を補充していました」
「えっ、向こうに行ったら扉が開かなくなるんじゃないのか」
「この扉を開けられるのは魔力を持った人だけです」

 だけど、向こうからは開かなかったとさっき、言ったじゃないか。
「いろいろ、都合よく改善しているんです。だけど、坊ちゃまが扉を開けられたのは魔力を持っているからですよ」
 さすが、シンクの孫ですね。
「えっ、」
 なんか、さらっと妙なことを聞いたような……。

「それで扉をくぐらないんですか」
 
「古田さん、さりげなく話をそらさないでくれますか。なんで、僕に扉をくぐらせようとしているんです」
「そちらの展開の方が面白いからです。それに孫が祖父の世界にお里帰りというのも面白いのでは」
「あのねぇ、」

 家の中に異世界の扉もあるのも信じられないことだけど。普通、爺さんが異世界人だとあっさり受け入れる奴がどこにいる。
 しかも、扉をくぐらせようとする使用人がいるが信じられない。
 頭が痛くなってきた。

「あちらに行っても大丈夫ですよ。あそこは王家の庭につながっています」
「古田さん、」
「はい、」

「ひょっとして、僕に何か隠しているんじゃないか」
「……、」
 急に黙り込んでしまった彼女。ちなみに精霊の姿ではなく人間に戻っている。

 年齢不詳も当たり前の話だ。 魔法で作り上げた姿なので老化の気配が見えなかったのだろう。

「やたらと、扉をくぐらせようとしているし、ひょっとして、あちらの人と打ち合わせがしてあるんですか」
「何を根拠に、」

 古田さんは焦ったように、僕からの視線を避けた。
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