扉を開けたらそこは異世界

さやかとゆうきの母

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アイリアとマンションで

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 そして、扉が開いた。
「まさか、こちらでも魔法が使えるとはな」

 僕は驚いたようにアイリアを見た。
 現在、僕らがいるのは山の中の洋館に引っ越す前に僕が暮らしていたマンションの一室だ。
 
 もともと、このマンション自体、僕が祖母から受け継いだものだ。

 そこに扉をつなげたのだ。
「ここが一郎が前住んでいたのね」
「そう、ここは他人に貸すつもりはないんだ。山の中まで編集の人に来てもらうのは大変だからね」
 つまり、現在はセカンドハウスということになる。

「一郎は小説家だったんだよね」
「ああ、高校生の時にネットで新人賞を取ったのをきっかけにデビューしたんだ」
 いわゆる、ネット小説だけどそこそこの収入はある。
 
 電動ケトルのスイッチを入れてお茶の用意をする。
 僕の仕事はノートパソコン一台あれば十分できる。

 家具なんかはほとんど、この家に置きっぱなしなのだ。
 服はその都度、取りに行けばいいと思っていた。

 電気や水道は止めていないし、時々掃除にきていたからさほど、汚れていない。

 しかし、こんなに簡単に空間をつなげられるなんて魔法って本当に便利だな。

「アイリアもかなりの魔法の使い手なんだな」

「お母様から魔法を教わっているからね。あれっ、」

 きょろきょろとリビング内を見ていた彼女がひょいと拾い上げた物。

 それはブラジャーだった。

「まさか、一郎ってこんなの着けているの」

 アイリアの冷たい視線。

「まさか、」
「じゃ、フルフラがつけているの」
「古田さんじゃないと思う」
「だったら誰のよ」

 アイリアの目がきつくなる。

 ブラジャーは勿論、女性下着だ。あちらでもブラジャーがあるのだろう。
 別に不思議なことじゃない。でも、アイリアが咎めるような視線を送っているのは僕が家に女性を引っ張り込む行為をしていると思っているのだろう。

 冗談じゃない。
 僕は結婚を前提にした相手としかそんな行為をするつもりはない。

「僕が留守の間に部屋に入った奴がいる」
 その人物に僕は心当たりがあった。

「ちょっと、待っててくれ」

 僕は携帯でマンションの管理人と連絡を取った。
 案の定、僕の思っていた通りだった。

 後日、僕は親父に呼びだされた。
 理由は勿論、僕が弟のあきらに送り付けた小包みだった。

 アイリアと久しぶりにマンションに帰ったらブラジャーがリビングに落ちていた。それだけではない。
 洗面所には見慣れぬ化粧品が置いてありしかも、ストックしてあった食材もかなり減っていた。

 食材といっても長期保存が可能なものなのでそのまま、置いておいたのだ。
 犯人は弟のあきら。
 あいつ、僕が山の館で生活を始めたのでマンションを勝手に利用したらしい。

 勝手に利用しただけではない。僕のマンションに女の子を引っ張り込んだのだ。

 それが分かったので、管理人を呼んで鍵を変えた。

 あきらは合いかぎを持って出入りしたらしい。

 ついでにマンションにあったブラジャーや化粧品、女の子の小物などを全部段ボールに突っ込んで榊家に送り付けたのだ。

「あきらは今、大学の近くに引っ越しているんだ」

 成程。
 それで僕が送った小包みはあいつの手に渡ることなく、あいつの母親が開封したらしい。
 というか、普通、息子の郵便物を母親が勝手に開けてもいいのか。

「奈津子が驚いていたぞ。一体、何であんなものをウチに送ったんだ」

 奈津子というのは親父の後添いだ。

 つまり、僕にとっては義理の母となる。僕としては世話になっていないので母親と思ったことがない。
「あきらの荷物だからね。僕は知らない」

 僕はそっぽを向いた。「あきらにも言ってくれないか。勝手に人んちを使うなって」
「あいつ、お前の家に行ったのか」
「マンションのほうだけど。ひどいじゃないか、人の留守に勝手に上がり込んだんだ」
 考えようには不法侵入だ。

「あいつが女の子と付き合うのは勝手だが、人の家をラブホ代わりにするのは困る」
 一人暮らしをしているのなら別に母親の目を気にすることはないはずだ。
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