扉を開けたらそこは異世界

さやかとゆうきの母

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亜梨子の受難  転生した後日編

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 あーんあーん。
 赤ん坊がギャン泣きしていた。
「王子、そんな抱き方ではダメです」
 マイルは赤ん坊を王子から受け取ると「よしよし」とあやし始めた。

 王子の腕から彼女の腕に移った赤ん坊はぴたりと泣き止み、小さなあくびをすると眠り始めた。
「手慣れているな」
「魔導師の塔では魔力の強い子を一時的に預かることもあります」

 亜梨子はアリスと名付けられ、王宮で育てられることになった。庭園に捨てられていた赤ん坊なのに王子が自分の娘と認めたからだ。
 それにしても。
 ちらっと薄目を開けて自分を抱いている女性を見るアリス。
 マイル・ジャニス、彼女は王宮魔導師である。

 王子がアリスを実子と認めたのは彼女のためだった。
 王子といっても一年後には戴冠式を控えている。戴冠前に伴侶を決めなくてはいけないらしい。だけど、王子はマイルを愛している。
 だけど、マイルは平民なので周囲の貴族が認めてくれないらしい。

 そこで王子が考えた策が「子供が出来たので責任をとって結婚します」作戦らしい。
「そんなこと、なんで私に教えてくれるの」
 アリスは目の前の精霊に言った。

 ちなみに赤ん坊が言葉を喋れるわけではない。
 目の前にいる精霊が彼女の思考を読み取っているだけである。

「お前、面白い魂の色をしているな」
 ふわっと現れた背中に羽のついた小人。
(うわっ、妖精だわ)
 まじまじと見つめるアリスを見て彼は笑った。
「妖精、俺は火の精霊だよ。名前はサン・エル・ジミン。サンでいいよ。といってもまだ喋れないか」

(赤ちゃんだから当然でしょ)
 アリスも赤ん坊の生活に慣れていた。

 赤ん坊ではできることが少ない。
 泣くか笑うかだけ、手足もそんなに動くことができない。喋ることは当然できない。
 視界は段々、見えてくるようになっただけ。
 そこで……。

(精霊がいるなら、この世界は異世界なの)
 彼女としては地球の王政の国に転生したと思っていたのだ。世界が違うといってもアリスにはぴんとこない。
 だけど、自分のいるところが地球でないことに彼女は驚きを隠せなかった。
(それに魂の色って)

「別に俺たちが感じるだけで人間のよく言う色とは意味が違うんだ。だけど、俺たち、精霊は魂の色で人を識別しているんだ」
(……?)
 よくわからない。だけど、サンが自分の魂の色が珍しくて姿を現したのだけは分かった。

「お前が別の世界から来たせいなんだろうな。マーブル状になっているか、」
(色が混じるってこと)
「そういうこった。フルルが行った世界の人間と同じ魂の色だな」
(?)

「フルルってのは知り合いの風の精霊だよ。んで、俺は火の精霊だ」
(どんな区別があるの)
 風とか火と言われても目の前にいるサンのどこが火に由来するのか分からない。
「ぶっちゃけ、俺にも分からない。でも、自分が火の精霊だということはなんとなく分かるんだよ。火は俺の言う通りに動くしな」
(そんなもんなの)

「なんだよ、その目は。証拠を出してやってもいいが、何もないところからいきなり、火が現れたら大騒ぎになるだろ」
(そうよね)

 アリスはちらりと周囲を見た。
 彼女はまだ赤ん坊なので世話をしている侍女がずっとそばにいる。何人かが当番制で部屋にいるのでさすがに火が現れたら大騒ぎになる。
 しかも、サンの姿は自分にしか見えないのだ。

 ひょっとしたら、魔導師であるマイルなら彼の姿を見ることができるかもしれない。

 だが、サンはマイルがアリスのところにいる時は姿を現さなかった。
「そりゃ、親子のふれあいを邪魔したら悪いだろ。俺は空気を読むオトコなのさ」
(マイルさんは私の母親じゃない)
 アリスはふいとそっぽをむいた。

 王子に押し付けられたのに自分の世話を親身になってしてくれる彼女には行為を持っている。だけど、彼女が自分の母親でないことくらいよく分かっている。
(私の母親は死んでいるんだよ)
 前世の意識があるせいか、彼女は自分の素性をよく理解していた。
 
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