扉を開けたらそこは異世界

さやかとゆうきの母

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姉と弟の話

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「この子が貴女の弟よ」
 アリスが2歳になった時、アルファードが誕生した。跡継ぎ誕生にアイドリアは喜びに包まれていた。

 アリスも弟の誕生に心から喜んだ。

(といっても、従弟なんだけどね)
 アリスが国王の兄の遺児であることは王と王妃、王太后しか知らない。
 別に公になってもかまわなかったが、いちいち説明するのが面倒だと王妃が言い切ったからだ。

 なので、王妃は王と結婚する前に子供を産んだという陰口を叩かれることになったのだが。
「言いたい奴には言わせておけばいい」
 と開きなおっているらしい。それに結婚する前から関係を持っていたのは事実だからだ。
 
 ちなみにマイルと結婚する前まで、アディオスも女の子と交流があった。なので、二人が結婚するまで色々とあった。
 それは別な話になる。

 例えば、アディオスと結婚できたらもれなく、王妃の座が転がりこんでくると思い込んでいた貴族の女の子が軒並み寝込んだ。
 アイドリア王族は平民とでも結婚できることを忘れていたらしい。
 とかである。

「アリス様、そういうことは私たちがします」
 いきなり、アリスがアルファードのおしめを変えたので乳母たちは目を丸くした。

(おい、自分がまだ2歳の幼児だということを自覚していないのか)

「えっ、」
 火の精霊、サンはアリスを気に入っているので姿を消してよく彼女のそばにいる。
「何か悪いことをしているのかな」

 アルファードが泣き出し、泣き声でおむつだと判断した、アリスがおしめを変えただけなのだが。
「おむつが濡れていると気持ちが悪いのよ。気がついたらすぐ変えたほうがいいでしょう」
(普通、2歳児が赤ん坊のおしめを変えることはしない)

 そこでアリスは自分が2歳だったことに気づいた。
「確かに、」
 亜梨子の時でも幼児の時には赤ちゃんが泣いた時は大人を呼んでいた。

「だけど、人を呼ぶより私がやった方が早いと思って、」
(少しは自分の年を考えろよな)

「あら、アリス、弟のおむつを替えてあげたの。凄いわねぇ」
「王妃様、」
 乳母が困ったような顔をしている。

「そんなに目くじらをたてなくてもいいじゃない。アリスが手伝ってくれたら貴女も助かるでしょう」
と、王妃が乳母を慰めていたがそういう問題なんだろうか。

 それはともかくとして、その後もアリスはいろいろとやらかした。
 アルファードが離乳食を食べる時期になると、自分でお手製の離乳食を作ったりした。
 勿論、材料はサンに調達してもらった。

「姫様、」
 乳母はもう涙目だ。しかし、乳母の作った離乳食より、アリスの作った方を王子が喜んで食べているのだ。
「あらあら、」

 マイルは困ったような顔になったが、「凄いわ、アリス。弟の面倒を見てくれるのね」
 こんな調子でアリスの行為を褒めるので、とうとう乳母が王家に暇乞いを出すところまできてしまった。

(なんで。)
 アリスはかなり驚いた。
 アリスにとっては弟の面倒を見るのは当たり前だと思っていたのだ。

「そりゃ、あれだけお前にやられていたら辞めたくなるのも当然だ」
最近、姿を消していたサンが言った。
「弟の面倒を見るのは姉の務めでしょう」

「やりすぎなんだよ、お前さんの場合は」
「あの子はこの国の跡継ぎよ。何かがあったら大変だわ」
 亜梨子のいた世界では戦争で国が滅茶苦茶になった。

 そんなことにならないためにも弟は心優しい人に育ってほしい。
「そういう心配はお前さんじゃなくて、他の奴がやるだろ」
 サンはあきれたようにアリスを見た。

 月日は流れ、アルファードはアリスべったりの子に育ってしまった。流石に赤ちゃんの頃から面倒を見ていたから当然と言えたが。
 ちなみにこの頃になるとアリスの方もやり過ぎたなと反省した。

「別にアリスが気にしなくてもいいわよ。子供の頃から邪な考えを持って近づく人は多いからね」
「えっ、」
 いきなり、サンが消えたのでアリスは戸惑ったような声を上げた。

 どうやら、マイルがやってきたのでサンは姿を隠したようだ。
(いつも思うんだけど、なんで姿を消すの。そりゃ、精霊が気さくに話しかけてくるのにも妙だけど)

「ということがあって、お姉様は身分を偽って小学校に入学したのよ」
「それでアイリア達も一般庶民として学校生活を送っていたのか」
 アイリアの話だと、ゲートという魔法で王都から離れた街の学校に兄妹全員、入学したのだという。

「にしても、たった二歳で弟の離乳食を作るなんて凄いな」
「お姉さまには精霊がついていたからね」
 隠していたみたいだけど、魔導師であるお母様にはバレバレだったわ。

「精霊って古田さん以外にも精霊がいるのか」
「当たり前じゃない」
「でも、何で隠しているんだ。精霊がついているだけでも大したことだろう」
「そりゃ、お兄様のためよ」

「?」

 なるほど。
 そういえば、アイドリアは魔道が盛んな国だったな。魔力持ちの人間が優遇されるから精霊持ちも同等な扱いなんだろう。
「私が魔力を持っていることで私に王位をという連中はいるから」

 そういえば、アイリアは公式では姿を見せないことになっていたな。
「アルファードも大変なんだな」
 跡継ぎであっても魔力を持っていない。

 体裁を気遣う連中にはその点が気になって仕様がないのだろう。
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