扉を開けたらそこは異世界

さやかとゆうきの母

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誰かが呼んでいる

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 俺は待っている。
 俺は剣。
 俺は今、岩に突き刺さっている。

  俺は待っている。
 俺を岩から解放してくれる奴を……。

「うん、」

 がばっとベットから起きた僕は部屋を見回した。
「ここ、僕の部屋だよな」
 最近はアイドリアに行って泊まってくることもある。

 なので、城には僕の部屋も作ってもらった。忘れていると思うけど、僕はこれでもネット作家。
 そこで、アイドリアに滞在中、小説をネットにあげることもある。

 だから、僕の部屋はこっちと殆ど同じ仕様になっている。パソコンも置いてあるのでネットもつながっている。
 誰かが自分を呼んでいるような気がしたが気のせいか。


「あら、坊ちゃま、今日は早いですね」
 恥ずかしい話だが、僕は毎朝、古田さんに起こしてもらっている。
 マンションにいた頃も電話で起こしてもらっていた。

「今日は担当さんと打ち合わせがあるんだ」
 マンションで一人暮らしをやっていた時は僕は朝食を取らない方だった。
 いつも、10時まで寝ているせいか、朝食兼昼食を取っていた。 
 
「順調ですね。これなら来月あたり、新刊が出せそうです」
 僕を担当している新井さんがにこにこしながら言った。
 ちなみに打ち合わせは僕のマンションの一階にある喫茶店でやっている。
 マンション一棟そのものが僕の所有になっているので、僕はお店の大家という立場になる。

「そういえば、榊さん、弟さんと何かあったんですか」

 喫茶店のオーナーがコーヒーを運んできた時に聞いてきた。
 一応、マンションの管理は管理会社に一切まかせている。それに大家だということが分かればお店も気軽に利用できなくなる。

 この喫茶店は僕がこのマンションに引っ越してきた頃から営業している。僕が中学になってこのマンションで一人暮らしを始めた頃からの知り合いだ。
「警察も来ていたし、何か事件でもあったのかい」

 警察が来ていたのはアレだな。
 あきらの彼女が騒いだ事件だ。僕も自分の部屋がのっとられそうになったので、今後はそんなことにならないように鍵を替えただけなのだが。

 相当、マンションの内で噂になったと思っていたのだが。
「あいつが人の留守中に勝手に部屋を荒らしていたんですよ。勝手に自分の彼女を部屋に入れていたので、少しお灸をすえてやりました」

「弟なんだろ。少しは大目に見てやったほうがいいんじゃないか」
「弟だからこそですよ。一体、大学生にもなって何をやってんだか。なんでも、一人暮らしを始めた開放感のあまり、好き勝手なことをするからです」
「えっ、弟さんは大学で一人暮らしを始めたのかい」

 オーナーは驚いたように言った。
 そりゃそうだろう。僕は中学生の頃から一人暮らしをしている。
「仕方がないですよ。あいつの母親は一人暮らしを許していなかったから」

「えっ、」
 ここでオーナーは妙なことに気づいたらしい。

「言っていませんでしたっけ。僕と弟とは母親が違うんですよ。僕は祖母に育てられたもんでね」

「それじゃあ、」
「僕にとって継母に当たる人は僕の養育を拒否したんですよ」
「なんだい、継子いじめかい」

「先生、まるで小説の主人公みたいな境遇だったですね」

 担当の小泉さんとは僕が大学生からの付き合いだったが、そういえば家庭内のことは何も話していなかったな。
 別に自分から家庭環境のことをどうこう言うことじゃないし。
「でも、先生のお宅にはお母さんは出入りしていたじゃないですか」

「古田さんのこと。古田さんは祖母が雇っていた家政婦さんだよ。今は僕が雇い主になっているけどね」

 待っている。
 俺はずっと待っている。
「いつか、ここからお前を開放する者が現れるだろう」
 あいつがそう言った。

 あいつは俺の相棒。
 俺をふるって数多くの強敵を倒してきた。

 だから、あいつが俺を捨てるはずがないんだ。
 待っている。俺はずっと待っている。

「だから、いい加減にしろ!!」
 がばっ。
 しーん。

 王宮の僕の部屋だ。
 自分の声で起きるなんて。
「どんな夢を見ていたんだ」

 なんだかよく分からない。ぶっちゃけ、夢ってのは目が覚めた時点でおぼろげな蜃気楼みたいに消えていく。
 思いだせないほうが当たり前である。

 にしても、昨夜は飲みすぎた。
 アルファードが酒瓶を持ち込んで二人で夜更けまで飲んでいたのだ。
 向こうに続く扉を開ければ僕の部屋につながっている。
     
 だけど、アイドリアの扉は王宮の庭にある。
 なので、夜更けに庭に出るのも危ないので部屋を用意してもらった。

「おっはよ、イチロウ」
     
「アルファードはどうした」
 食卓にはアイリアしかいなかった。
「二日酔いだと思うわ。イチロウってお酒が強いのね」


「普通だよ。それに僕はあまり飲まなかったし」
 アルファードが持ってきたお酒はウィスキーによく似ていた。
 かなりの大瓶だったが、僕よりアルファードばかりが飲んでいたような気がする。

「あいつ、何かあったのか」
 僕が一杯飲んでいる間に手酌で何杯も飲んでいたような気がする。
 あんな飲み方をしてよく、一人で自分の部屋に戻っていけたな。

「あいつ、失恋でもしたのか。なんだか、女に振られたような飲みっぷりだった」
 僕がぽつりと言うと、
「イチロウ、女に振られたことがあるの」
     
「いや、ないけど。そういえば、僕とつきあっていたくせに弟に鞍替えした子はいたかな」
 弟は榊病院の後継者。あっちとつきあった方が将来、安泰と考えたんだろうな。

 あの時はかなりショックだったけど。
 今はそうでもない。あいつに比べて僕の方が生活も充実している。

 あの時はかなりショックだったけど。
 今はそうでもない。あいつに比べて僕の方が生活も充実している。
「それって振られたことになるんじゃないの」
「そうかなぁ。でも、全然悔しいと思わなかったし。僕には誰かが待っている、」

 うっ。
 その途端、イチロウはうめいた。
 いきなり、彼はめまいがしてそのまま、膝をついた。

ーーボクヲダレカガマッテイル。
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