扉を開けたらそこは異世界

さやかとゆうきの母

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アリスにも気になることがある

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 イチロウ、前世の自分が生きていた日本からやってきた子。
 弟と同い年だから。
「もう、少年というわけじゃないよね」

「何をぶつぶつ言っているんだ」
「あら、サン」
 珍しくサンが人間の姿になっていた。

 サンは火の精霊だが、人間の姿になっている時はアリスの護衛騎士として周囲に認められている。
 サンが精霊だと知っているのはアリスだけだ。
 と、アリスは思いこんでいるが母親のマイルと妹のアイリア、侍女のサラも気づいている。

 気づいていても言わない。理由は単にアリスが何も言わないからだ。

「イチロウに会った感想はどうだ」
「わざわざ、そのことを聞きたくてこっちに来たの」
 サンには離宮に残るように言っていたはずだ。
 サンの姉であるフルフラはイチロウと契約していると聞いている。

 なので、王宮でフルフラと出くわす可能性があるからだ。
 それなのに、「大丈夫、気配を消しているから向こうも気づかないさ」
「そういうもんなの」

「そういうもんだ」
 と言い張るサンだったが、実は……。
(もう俺が、アリスの面倒を見ていることはフルフラにはパレているんだよな)

 ただし、王妃やフルフラ、アイリア王女は知っていても口に出さないだけだ。
 理由は分かっている。
 アリスに精霊がついているということは跡継ぎ問題にも影響が出るからだ。

 別にサンもそんなことはどうでもいい。
 アイドリアの事情など、精霊の彼には興味がない。精霊は自分の興味のあること以外は首を突っ込まないのだ。
(フルフラは首を突っ込んでいるけどな)
 
「イチロウはあんたがいた日本からやってきたんだろ。懐かしく涙が出たか」
「まさか、」 
  
「私は転生者よ。日本で生きてた亜梨子はもういないの」
「だけど、日本に未練があったんだろ」
「そうね。きっと、あったから前世の記憶を持って生まれたんでしょうね」
 だが、アリスは知っている。自分のように前世の記憶を持っている人はいないことを……。

 それにイチロウに話しても信じてくれるか分からない。それだけではない。転生者だということが家族に知られたらどうなるんだろう。
   
「まっ、いろいろあるもんな」
「えっ、」
 いつもは茶化してくるサンが珍しく真面目な顔をして頷いたのでアリスは驚いた。

「それにイチロウがいる日本はわたしの知っていた日本じゃないわ。わたし、戦争から帰ってきた兵士に殺されたのよね。あの頃は戦争で日本が焼け野原になって復興に大変だったのよ」
「ふーん、」
 サンは興味がなさそうな相槌を打った。
「もう服もボロボロだったわ。だけど、イチロウはそうじゃない」      
   
「彼と話して分かったけど。私が死んだ時から八十年近くたっているのよね」
 彼女の記憶の中の日本の状況はすでに消え去っていた。
「てっきり、日本という国はアメリカに飲み込まれていると思っていたわ」  

 イチロウを見ている限りだとどうやらそうではないらしい。今、日本がどうなっているか知りたい。
「ダメよ。それを聞くためには私のことも話さなくてはいけなくなる」
 アリスは残念そうにため息をついた。

 イチロウ、前世の自分が生きていた日本からやってきた子。
 弟と同い年だから。
「もう、少年というわけじゃないよね」

「何をぶつぶつ言っているんだ」
「あら、サン」
 珍しくサンが人間の姿になっていた。

 サンは火の精霊だが、人間の姿になっている時はアリスの護衛騎士として周囲に認められている。
 サンが精霊だと知っているのはアリスだけだ。
 と、アリスは思いこんでいるが母親のマイルと妹のアイリア、侍女のサラも気づいている。

 気づいていても言わない。理由は単にアリスが何も言わないからだ。

「イチロウに会った感想はどうだ」
「わざわざ、そのことを聞きたくてこっちに来たの」
 サンには離宮に残るように言っていたはずだ。
 サンの姉であるフルフラはイチロウと契約していると聞いている。

 なので、王宮でフルフラと出くわす可能性があるからだ。
 それなのに、「大丈夫、気配を消しているから向こうも気づかないさ」
「そういうもんなの」

「そういうもんだ」
 と言い張るサンだったが、実は……。
(もう俺が、アリスの面倒を見ていることはフルフラにはパレているんだよな)

 ただし、王妃やフルフラ、アイリア王女は知っていても口に出さないだけだ。
 理由は分かっている。
 アリスに精霊がついているということは跡継ぎ問題にも影響が出るからだ。

 別にサンもそんなことはどうでもいい。
 アイドリアの事情など、精霊の彼には興味がない。精霊は自分の興味のあること以外は首を突っ込まないのだ。
(フルフラは首を突っ込んでいるけどな)
 
「イチロウはあんたがいた日本からやってきたんだろ。懐かしく涙が出たか」
「まさか、」 
  
「私は転生者よ。日本で生きてた亜梨子はもういないの」
「だけど、日本に未練があったんだろ」
「そうね。きっと、あったから前世の記憶を持って生まれたんでしょうね」
 だが、アリスは知っている。自分のように前世の記憶を持っている人はいないことを……。

 それにイチロウに話しても信じてくれるか分からない。それだけではない。転生者だということが家族に知られたらどうなるんだろう。
   
「まっ、いろいろあるもんな」
「えっ、」
 いつもは茶化してくるサンが珍しく真面目な顔をして頷いたのでアリスは驚いた。

「それにイチロウがいる日本はわたしの知っていた日本じゃないわ。わたし、戦争から帰ってきた兵士に殺されたのよね。あの頃は戦争で日本が焼け野原になって復興に大変だったのよ」
「ふーん、」
 サンは興味がなさそうな相槌を打った。
「もう服もボロボロだったわ。だけど、イチロウはそうじゃない」      
   
「彼と話して分かったけど。私が死んだ時から八十年近くたっているのよね」
 彼女の記憶の中の日本の状況はすでに消え去っていた。
「てっきり、日本という国はアメリカに飲み込まれていると思っていたわ」  

 イチロウを見ている限りだとどうやらそうではないらしい。今、日本がどうなっているか知りたい。
「ダメよ。それを聞くためには私のことも話さなくてはいけなくなる」
 アリスは残念そうにため息をついた。

 自分が別世界の転生者と知って母親であるマイルはどう思うだろう。
 異界に続く扉が王宮の庭にある以上、異界人に対して抵抗はないかもしれない。
「だけど、私、赤ん坊の頃から転生者の自覚があったのよね」


 赤ん坊の身体に大人の精神。不気味に思われたくないために必死で普通の赤ん坊の振りをした。
 確かに弟のアルファードが生まれた頃は普通の幼児らしくないことはしたが。

(赤ちゃんや幼児の振りをしているのもあれでなかなか辛かったなぁ)
 それでも。

「今の私はアイドリアの王女、アリスなんだもの。日本のことにこだわるのもね」
「あんなに気になっていたのに、」
「うん、だけど、イチロウに会えてよかったと思うわ。」
  アリスはにこりとほほ笑んだ。
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