扉を開けたらそこは異世界

さやかとゆうきの母

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薬草取りのついでに魔剣を手にいれる

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「洞窟にはかなり、いい薬草が生えているなぁ」
 シンクはにこにこと洞窟内を見回した。
「そうね。だけど、いい薬草が生えているのはこの洞窟に魔素まそが満たされてているからだわ」
「魔素が溜まっていることは僕にもよくわかるよ」

 シンクは嬉しそうに薬草を刈り取っていった。
 丁寧に仕分けをして籠に入れていく。
「シンクって薬草を見分けるのが上手いわね」
 
「城にも薬草を扱うところがある。かなり、窓際の仕事だったがな」
 魔法に頼りすぎなのはアイドリアかもしれない。
 
「たかだか、熱を出したくらいで魔法院にいき、魔法をかけなくてはいけない。魔力を持つ人間は一部の人間だけだ」
 薬草でなんとかなるとしたら魔法院もかなり負担が減る。

「薬草室で働いていた人が言っていたなぁ」
「あたしが言いたいのは世継ぎである王子が出入りしていていいところなの」
 身分というのがあるでしょう。

「大丈夫、向こうも気づいていないから」
「そういう問題か」
 現在、王にはシンクにしか子供がいない。シンクが幼いころに王妃が亡くなってしまったからだ。

 シンクにもしものことがあればアイドリア王家は滅びる。それは国の滅亡を示唆する。他国がそれに気づかないわけがない。

 アイドリアは大国でも野望を抱く国々に囲まれている。なので、まだ王位のついていないシンクの命を絶てば……。
 ということで、シンクは外交で他国に行くたび、暗殺者ころしやにつきまとわれていた。
 ただし、彼は片っ端から返り討ちにしていた。

 魔力の強さだけではない。シンクは武術も歴代の王族の誰よりも抜きんでいる。さらに学力も城お抱えの博士たちよりも優れている。

「ほんと、完全無欠の王子様よね」
 フルフラはため息をついた。
 自分はなんで、彼に加護を与えたんだろう。自分が見守らなくてもシンクは十分将来の王としてやっていけるだろう。

「僕は完全じゃないよ。フルフラと知り合って心底、よかったと思っている」
「シンク……」

 思わず、きゅんとさせるセリフである。フルフラが普通の女性だったらシンクに好意を持っただろう。
「本心じゃないわよね」
「あっ、分かったか」
「分かるわよ。だてにあなたに付き合っているわけじゃないわ」
 
「困ったわね」
 フルフラはきょろきょろとあたりを見回していた。
 彼女は風の精霊、人間より高位の存在だがそれでも弱点がある。

 かなりの方向音痴なのだ。
 風の精霊として方向音痴なのはいかがなものだろうか。
 その日も彼女は道に迷っていた。

「たくぅ、このままだと困るんだけど」
 知り合いの力の精霊のところに行こうと思ったのに。
「きゃっ、」 


 いきなり、透明な球体に閉じ込められた。
「何なの」
 精霊の自分が閉じ込められるなんて信じられない。

 精霊は自然の中から生まれる。魔素まそが濃く溜まった場所から自然と誕生するのだ。
 魔力も人間よりもはるかに多い。

 なのに、彼女が閉じ込められた球体はびくともしないのだ。幾ら、魔力を開放しても内側の壁に跳ね返ってしまう。
「なんなよ、これ」

 バチッ。
 フルフラの放った 衝撃波しょうげきはが彼女の体に戻ってきた。血まみれにはならなかったが、あちこち皮膚がさけ、衣服もボロボロになってしまう。

「あれっ、魔物じゃないのか」
 何っ。
 この私を魔物と思っているのか。

 身体中、かっとなったが、ふたたび、魔力の刃が自分に返ってくる。

「精霊かな。だけど、僕の仕掛けた罠にひっかかるなんて」 

 よっぽど、ドジな奴だなぁ。
「ちょっと、それ馬鹿にしているの」
「いやしていないけど」

「魔物用の罠に引っかかるなんてドジな精霊もいるなぁと思って、」
「罠に魔力を込めているからでしょ」
「そうでもしないと、魔物が逃げるだろ」
 
「ちょっと、魔力をこめすぎたかな」
 彼は舌打ちをして手を振った。
「きゃん、」

パチンと何かが爆ぜてフルフラは地面に尻餅をついた。
「あなた、人間なの。私、魔族の作った魔法陣わなにも捕まったことがないのよ」

「人間だよ。僕はアイドリアの王子だ」
「アイドリア、そういえば随分昔だけど、魔王の姫が人間と婚姻を結んだことがあったわね」
「知っているのか。もう何千年も昔のことだぞ」
 アイドリアでは王家の人間以外は伝えられていない。
「当然よ。こうみえても、私は精霊の中でも古参だもの」

「それでも魔物用の魔法陣に引っかかるんだな」
「……」

 それからフルフラとシンクは一緒に行動するようになった。
 シンクは王子として規格外だった。
 王子としての教養は完璧でも裏では……。

「魔道の国、アイドリアの王子が魔法軽視だとは思わなかったわ」
 魔力の低い診療所の医師になって、平民の病を治しているとは。
「別に王子だということから逃げているわけではない」

「そうね。王子と裏の顔をうまく使い分けているものね」
 それでも時々、思う。お城にいる彼と診療所の彼、どちらが本当の彼なんだろう。
(むしろ、お城にいる時が仮面をかぶっているような気がする……)

「そんなことよりももっと手伝ってくれないか。早く診療所に戻って薬を作りたいんだ」
「やっぱり、生まれてきた先を間違えたんじゃない」
  
 この時、フルフラは気づいていなかった。

 シンクが薬草を取りに入った洞窟には力の精霊、エスクル・カ・リバーが魔剣として岩に刺さっていることを……。
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