扉を開けたらそこは異世界

さやかとゆうきの母

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魔獣牧場に行ったら

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やっぱり、ここは異世界べつの世界だった。
 一郎はアイリアに誘われて牧場を行き実感した。
(豚に角が生えているのは何だろうな?)
「ウサギ、かわいいよね」
 アイリアが嬉しそうに赤ちゃんウサギを抱き上げた。赤ちゃんとはいえ、子犬ほどの大きさだ。
「生まれたばかりなんだよね。なんで、そんなに大きいのさ」
「坊ちゃんはウサギを見るのは初めてかい?こいつの親はあっちの飼育小屋こやにいるよ」
 牧場の人はにこやかな笑顔で案内してくれた。
 そこには牛くらい大きいウサギがいた。
「うっそだろ」
 一郎のいた世界のウサギと大きさが桁違いだ。
 それに……。
「目が宝石みたいだ」
「キラーラビットは二つ、魔石が取れるのよ」
「ひょっとして、目玉が魔石なのよ」
「そうよ」
 しかも、目が青い。
「僕の世界のウサギは目が赤いんだ。それにこんなに大きくない」
「そうなんだ。だけど、この子は魔物だから。元々、あなたの世界にはいないじゃない」
 牛ほど大きいウサギを撫でながらアイリアはにっこり微笑んだ。
「ウサギはいるよ。サイズは違うけど」
「キラーラビットは普段、目が青いけど狂暴きょうぼうになると赤くなるのよ」
 その前に出荷するんだけど。
「嬢ちゃんはよく知っているなぁ」
 案内役の農夫が驚いたように二人に、説明してくれた。
「こいつらは目が赤くなると狂暴になる。そうなると、世話ができなくなるから屠殺場送りにするんだよ」
 屠殺場とさつじょうには魔物を抑えることができる魔導士がスタンバイしているのだという。
「アイドリアの魔導士はいろんなところで活躍しているんだな」
「というか、貴族出身じゃない平民の魔導士の仕事だから」
「ここでも身分格差なんだな」
 一郎はため息をついた。
「イチロウの世界は誰もが平等なんでしょ」
「そうでもないよ。僕のいる日本じゃ能力や境遇によって生活水準が違うし。国によってはまだ、貴族制のあるところもある」
「イチロウの世界も何かと複雑なんだね」

     ◇    ◇   ◇
「くそっ、人間の国の交流つきあいがなんでこんなに少なくなったんだ」
 バン。
 彼は忌々しそうに資料をたたきつけた。 
「あいつらが欲しがっている魔石は人間の領域領域くにでは取れないはずだ」
 だから、危険を承知で魔界にやってくる人間が多かった。
 そんな連中をとらえて奴隷のように扱っていた。
 さらに魔石を売りつけることで魔族も人間に無理な注文をつけることができた。
 魔族は人間を食べる。
 人間たちはそう思っているらしいが、それは大きな間違いだ。
 中には人間を食べる眷属がいることは事実だ。が、上級の魔人には人間を食べることはない。大体、そんなことをしても何のメリットがないのだ。
 魔族は人間と比べて魔力がある。一部の人間にも魔力があるが、魔族のそれよりはるかに弱い。
 魔力は魔素として魔界に満ち溢れている。
 魔族は魔力がなくなれば、いずれ死に至る。常に魔素を取り入れられる魔界にいれば、寿命がくるまで死ぬことがない。
 だから、魔族は魔界から滅多に出ていかない。
 しかし、これからはそうもいかないだろう。
「人間界に何故、魔石があるんだ?」
 ばしっ。
 ころころと転がるのは魔石だ。
「しかも、魔界のモノとほとんど同じくらい、魔素を取り込んでいる」
「これはアイドリアで手に入れたモノだ」
 彼の前に魔石を転がした人物が言った。
「アイドリアでは魔物の家畜化が進んでいるようだな」
「魔物の家畜化、信じられん」
「確か、アイドリアには魔王の娘が嫁していたな」
「魔族のくせに人間と契った奴か」
 彼はせせら笑った。「寿命も短く、魔力も弱い、いや魔力自体持っていない場合がある人間に」
「そんな馬鹿にしたものではない。大体、人間は我らより劣っているくせにそれだけ、悪知恵が働く」
「悪知恵か。確かにな」
 面白くなさそうに魔石を転がした。
「その悪知恵とやらで魔王をたぶらかしたか」
 くっくくと笑っていた彼だったが、急に真面目な顔になり、「だが、笑っている場合ではなかったな。魔石のことをなんとかしなければ」
 魔族が人間より劣っていると思われたくない。
 同等の存在とは思わない。魔力もほとんど持たない人間は魔族にとってはるか下の存在でいなければならない。
「まずはアイドリアをなんとかしなければならないか」
「アイドリアの王族には魔王の血も流れている」
 一番の問題がこれだった。
 魔族は弱肉強食、強い者が上位にたつという掟があった。ただし、魔王家だけは血筋にしばられている。
 つまり、魔王は魔王の血筋から選ばれる。
 そのせいで彼は魔王を名乗ることができなかった。
「忌々しいことだ。魔界にはすでに魔王の血筋はいない」 
 人間の勇者が魔界に乗り込み、魔王を打ち滅ぼしてしまったのだ。
 少しでも魔王の血を引いている者は一族ごと、彼が滅ぼしていた。
「魔王の血筋を引いている者はまだいますよ」
 彼に魔石を献上した者が口を開いた。
「アイゼア、何かあるのか」
「魔王の血を引くものは人間界にいる」
「アイドリアか」
 彼、ゼルドリスはきりきりと、机に爪をかけた。
 アイゼアとゼルドリス、この二人は見た目、人間にそうかわりない姿をしている。
 魔族は大抵の場合、人間と見た目はそんなに変わりがない。
 だが、禍々しい文様のあるあざや獣の一部を持っている。
 だから、人間と魔族の区別がつく。アイゼアとゼルドリスは全く人間の見た目と変わらないことから魔族の中では浮いていた。
 おそらく、彼らの祖先に人間とまじりあった者がいたらしい。
 魔族と人間は火と油の存在。
 その結果、彼らは魔族の中では迫害されていた。
 人間とそっくりな二人といっても、魔力はどの魔族よりも強かった。しいげられた環境の中、めきめきと力をつけ魔族の中でも無視できない存在になった。
 そして、力をつけた彼らは魔王を慕う残党どもを打ち滅ぼしたのだが。
 残念ながら、魔族は彼らに従おうとはしない。
「どうすれば、いいのか」
「やはり、血を取り入れるか」
「なんだと、」
「アイドリアから王女をさらってくる。アイドリア王家に魔王の血が混じっているのは我ら、魔族には周知の事実」
「王女を魔王にするのか、それは嫌だな」 
 彼らは見た目、人間に変わらない姿をしている。だからこそ、余計、魔族の誇りとして人間の王女を迎え入れることに抵抗があった。
「王にするのではないさらってきて、妃にすればいい」
「同じことだ」
「ものは考え様だ。一応、妃にして放置しておけばいい」
「ふん、」
 ゼルドリスはにやりと笑って、アイゼアを見た。
「妃としてやるが、放置しておけばいいのか」
「そうだな。妃とは単なる建前、人間をけん制するための人質と思えばいい」
「確かにそれなら頭の固い連中を黙らせることができる」
 二人は満足そうにうなずいた。 


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