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そんなにうまく行くわけがない
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「痛い、もっとそっとやってくれよ」
僕は顔をしかめた。
「悪い、まさか、イチロウが剣を使えないとは思わなかったんだ」
「お兄様も人が悪いわ。いきなり、剣の立ち合いを申し込むなんて」
アイリアがアルファードを睨みつけた。
「立ち合いを申し込んだのはシロクだぞ」
「そそのかしたのはお兄様じゃないの」
「だって、イチロウはいつもアイリアばかりと一緒にいるじゃないか」
えっ、ひょっとしてこの展開は……。
「僕、男とつるむのは好きじゃないんだけど」
◇ ◇ ◇
くそっ、なんなんだよ。
イチロウがあんなに弱いとは思ってもいなかった。
「殿下、ひょっとして、イチロウ殿は剣が使えないのでは」
「そんなことはないだろ。剣は武人のたしなみだぞ」
アルファードは憤慨したような顔になったが、「そういえば、イチロウの国のことを知らなかったな」
「イチロウ殿は他国の人なのですか」
シロクが驚いたような顔をした。
そういえば、イチロウはある日、突然、現れた。彼を紹介するパーティーが開かれたが、内輪で行われて主だった貴族は呼ばれなかった。
ただ、勇者の孫がアイドリアにやってきた。
王の言葉があっただけである。
勇者の孫が現る。
王都ではその話で持ち切りだった。
「確かに何故、王はイチロウ殿をどうお考えなのでしょう」
「何も考えていないんじゃないかな。父上にとっては親戚が一人増えたくらいしか、」
イチロウはアルファードと同い年だ。
シンク王子の孫ということはれっきとした王族の一人である。
「イチロウ殿のことが公になれば、王位継承権で争いが起こると案じられているのではありませんか」
シンクは世継ぎの王子だった。
元々、アイドリアはシンクが治めるべき国だった。だから、イチロウがその権利を主張するのではないかとシロクは言いたかった。
「それはないだろう」
◇ ◇ ◇
「それはなだろう」
アイドリアの王、アディオス・デルタ・フォン・アイドリアは執務室でつぶやく様に言った。
「イチロウは王位には全く、興味がない。大体、向こうの世界で彼の生活がある」
「向こうの世界とは、」
ある日、突然現れた青年。摂政のアルシド・ケプラー・フロム伯爵は王の真意が理解できなかった。
「ああ、このことは秘密にしておくように言われていたな。いや、忘れてくれ」
「秘密だとおっしゃいましたが。誰との秘密なのですか」
「フルフラだ」
「精霊様の、」
アルシドの顔がこわばる。
フルフラは勇者シンクの契約した精霊。しかも、勇者がいなくなった後、後継者がいなくなったアイドリアの恩人である。
ちなみにアイドリアでは子供むけの寓話として伝えられ、誰もが幼いころから知っている。
ただし、子供にフルフラの名をつける人は多く、フルフラと言われても正体が判らないになっている。
「精霊様のお言葉なら陛下が何も言わないのは当然でしょう」
「そうだな。そう考えてくれると有難い」
アディオスは書類を見ながら呟いた。
ーーイチロウのことはそっとしておいてほしいの。
と言われたが、理由は聞けなかった。
(まぁ、理由なんてどうでもいいし。イチロウが害になる存在とは見えないしな)
◇ ◇ ◇
世の中、そんなに甘くない。
異世界に行けば誰もがスーパーマンになれるわけじゃない。
それを思い知った一件だった。
「そういえば、ファスト先生、今度は異世界ものに挑戦してみませんか」
「異世界ものですか」
編集の小泉さんの提案に僕は思いっきり、顔をしかめた。
「異世界を扱った作品は沢山出ていますからね。しかも、異世界というだけでいろいろと主人公が無双状態ですし」
「そうですかね」
一応、僕も異世界に行っているんだけど、別に無双状態じゃない。
それどころか、剣の試合を挑まれてその結果、体中、痣だらけだ。
「人気が出ると思うんですがねぇ。ファスト先生は独特な世界観で読者に人気が高いですし、」
ファストというのは僕がデビューから使っているペンネームだ。
ネット小説を書いていると年齢不詳、性別不明といったミステリアスな存在のほうが人気が出る。
デビュー当時、小泉さんに言い含められて「ファスト」と名乗るようになったのだ。
ちなみに名前の由来は勿論、僕が一郎だからだ。
「一応、考えてみますよ」
正直、異世界ものは書く気になれない僕だった。
僕は顔をしかめた。
「悪い、まさか、イチロウが剣を使えないとは思わなかったんだ」
「お兄様も人が悪いわ。いきなり、剣の立ち合いを申し込むなんて」
アイリアがアルファードを睨みつけた。
「立ち合いを申し込んだのはシロクだぞ」
「そそのかしたのはお兄様じゃないの」
「だって、イチロウはいつもアイリアばかりと一緒にいるじゃないか」
えっ、ひょっとしてこの展開は……。
「僕、男とつるむのは好きじゃないんだけど」
◇ ◇ ◇
くそっ、なんなんだよ。
イチロウがあんなに弱いとは思ってもいなかった。
「殿下、ひょっとして、イチロウ殿は剣が使えないのでは」
「そんなことはないだろ。剣は武人のたしなみだぞ」
アルファードは憤慨したような顔になったが、「そういえば、イチロウの国のことを知らなかったな」
「イチロウ殿は他国の人なのですか」
シロクが驚いたような顔をした。
そういえば、イチロウはある日、突然、現れた。彼を紹介するパーティーが開かれたが、内輪で行われて主だった貴族は呼ばれなかった。
ただ、勇者の孫がアイドリアにやってきた。
王の言葉があっただけである。
勇者の孫が現る。
王都ではその話で持ち切りだった。
「確かに何故、王はイチロウ殿をどうお考えなのでしょう」
「何も考えていないんじゃないかな。父上にとっては親戚が一人増えたくらいしか、」
イチロウはアルファードと同い年だ。
シンク王子の孫ということはれっきとした王族の一人である。
「イチロウ殿のことが公になれば、王位継承権で争いが起こると案じられているのではありませんか」
シンクは世継ぎの王子だった。
元々、アイドリアはシンクが治めるべき国だった。だから、イチロウがその権利を主張するのではないかとシロクは言いたかった。
「それはないだろう」
◇ ◇ ◇
「それはなだろう」
アイドリアの王、アディオス・デルタ・フォン・アイドリアは執務室でつぶやく様に言った。
「イチロウは王位には全く、興味がない。大体、向こうの世界で彼の生活がある」
「向こうの世界とは、」
ある日、突然現れた青年。摂政のアルシド・ケプラー・フロム伯爵は王の真意が理解できなかった。
「ああ、このことは秘密にしておくように言われていたな。いや、忘れてくれ」
「秘密だとおっしゃいましたが。誰との秘密なのですか」
「フルフラだ」
「精霊様の、」
アルシドの顔がこわばる。
フルフラは勇者シンクの契約した精霊。しかも、勇者がいなくなった後、後継者がいなくなったアイドリアの恩人である。
ちなみにアイドリアでは子供むけの寓話として伝えられ、誰もが幼いころから知っている。
ただし、子供にフルフラの名をつける人は多く、フルフラと言われても正体が判らないになっている。
「精霊様のお言葉なら陛下が何も言わないのは当然でしょう」
「そうだな。そう考えてくれると有難い」
アディオスは書類を見ながら呟いた。
ーーイチロウのことはそっとしておいてほしいの。
と言われたが、理由は聞けなかった。
(まぁ、理由なんてどうでもいいし。イチロウが害になる存在とは見えないしな)
◇ ◇ ◇
世の中、そんなに甘くない。
異世界に行けば誰もがスーパーマンになれるわけじゃない。
それを思い知った一件だった。
「そういえば、ファスト先生、今度は異世界ものに挑戦してみませんか」
「異世界ものですか」
編集の小泉さんの提案に僕は思いっきり、顔をしかめた。
「異世界を扱った作品は沢山出ていますからね。しかも、異世界というだけでいろいろと主人公が無双状態ですし」
「そうですかね」
一応、僕も異世界に行っているんだけど、別に無双状態じゃない。
それどころか、剣の試合を挑まれてその結果、体中、痣だらけだ。
「人気が出ると思うんですがねぇ。ファスト先生は独特な世界観で読者に人気が高いですし、」
ファストというのは僕がデビューから使っているペンネームだ。
ネット小説を書いていると年齢不詳、性別不明といったミステリアスな存在のほうが人気が出る。
デビュー当時、小泉さんに言い含められて「ファスト」と名乗るようになったのだ。
ちなみに名前の由来は勿論、僕が一郎だからだ。
「一応、考えてみますよ」
正直、異世界ものは書く気になれない僕だった。
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