扉を開けたらそこは異世界

さやかとゆうきの母

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魔王と王子と精霊と

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「アイ、」
 魔王、いやファストは悲しげに目を伏せた。
「彼女のことは謝る。いきなり、攻撃したからやむおえなく……」
「わかっている。手加減したとしてもあいつは死を選んだだろう」
「彼女の遺志ことばを知りたいか」

「いいや、」
 ファストは首を振った。
「彼女は我を見捨てなかった。それだけでいい」
「案外、あっけないんだな。魔王に役目があるように、魔王の乳母を務める一族にも役目があったのに」

「……、」
「魔族の連中もなんで城にこないんだろうな」
 城のそばには魔族が集う街があった。
 街の魔族たちは普段通りの生活を続け、誰もシンクに攻撃する者はいなかった。

「ここは魔族の国なんだよね」
 シンクは小声でフルフラにささやいた。
 剣としてシンクの腰にぶらさがっているエクスは無言だ。
 確かに魔族の国らしく、誰もが魔力ちからを持っているし魔法を使いこなしている。それに誰もがどこかに獣の痕跡を残している。
 そのせいでシンクもフードをすっぽりかぶり、人間であることがバレないにしていた。

「のどかだなぁ」
「おい、ここはもう敵陣の中だぞ」
 エクスが小声で囁く。剣という無機質の物体になっている以上、声を上げるわけにはいかないのだ。
 エスクル・カ・リバー、力の精霊である彼は意外とTPOができるのだった。

 大通りには屋台が沢山出て、様々なものを売っている。
「焼肉屋があるじゃないか。美味しそうだな」
「魔物の肉よ」

「魔物の肉か」
「シンクは食べる?向こうじゃ、あんまり魔物の肉を食べないものね」
「そうだな。魔物は魔石いしを取るだけであとは、捨てていたからな」
「おい、」
 エクスが不服そうに声を荒げた。「なんで、そんなになごんでいるんだよ。ここは敵陣だぞ」
「そうだな。僕は魔王を倒しにきたんだ」
 シンクは剣を握りしめて呟いた。

   ◇   ◇   ◇

「あのさ、」
「なんですか、一郎坊ちゃま」
「いい加減に『坊ちゃま』はよせって」
 パラパラと僕は本のページをめくった。
 目の前には何冊か本が置かれている。
 古めかしい装本ほんで一冊でも十分、鈍器になりそうだ。実際、かなり重い。

 ちなみに今、読んでいる本はアイドリアの城の書庫から持ってきた。
 こっちの世界に向こうのモノを持ってこれないかと思っていたが、どうやら杞憂きゆうだったみたいだ。
 いや、そういえば日本の雑誌を向こうにもっていってもよかったんだから当然か。

「そういえば、アイドリアの文字は読めるようになったのですね」
 僕の前に紅茶のカップを置いた古田さんは満足そうに、「流石は私の坊ちゃまですわ」
「あのなぁ、」

 古田さんにそう言われて悪い気がしない自分がいると感じる。
 母親を五才で亡くして以来、ずっと彼女が僕の母親代わりだった。父親と結婚した後妻は僕の面倒を見てくれなかった。

 だけど、彼女の本当の正体はアルテールで生まれた風の精霊、フルフラ・フ・ルウルウ。

 僕は祖母の財産を相続した際、山の中の屋敷も受け継いだ。
 父は榊病院の院長だが、婿養子だった。弟もいるが後妻の子なので祖母とは血がつながっていない。
 祖母の唯一の血縁だった僕は祖母の財産全てを受け継ぐことになったのだ。

 屋敷の中には不思議な扉があった。
 扉はアルテールという異世界につながっていた。僕はそこで祖父が異世界アルテールからやってきた人間だということを知った。
 祖母が雇っていた家政婦さんが古田さんだった。祖母が亡き後も古田さんは僕の面倒を見てくれているのだ。
「アイドリアの文字はこちらのルーン文字に似ているからね。なんとかなったよ。それに爺さんが辞書を作ってくれていたから」

 アイドリアの文字を読む前に僕は気づいた。文字の違いで困っているのは何も僕一人じゃない。
 祖父もこちらに来た時、かなり大変だったんじゃないか。
 祖父は榊病院の初代院長だ。
 一応、戦後にアメリカから帰化したという触れ込みだったが、それでも名医と評判だった。
 医者は患者とのコミュニケーションも必要だし、日本語もあるていど出来ただろう。
 日本語を習得するために自分で辞書を作ったのではないかと思ったのだ。

 それに僕の部屋は祖父が書斎にしていた部屋だ。探したら簡単にみつかった。
(おじいちゃん、ありがとう)
 つくづくそう思ったね。

「本当によかったですわ。坊ちゃまがアイドリアの文字にも精通してくれて。私も魔力ちからを使わずにすみました」
 えっ、今、なんて言ったんですか。
「ひょっとして、文字を読めるようになる魔法があるのか」
「ええ、シンクは習得していなかったみたいだけど。アイリア様はマスターしていましたよ」

 それを早く教えくれ。僕がアイドリアの文字をすらすらと読めるようになるまでにどれだけ、努力したと思っているんだ。
「でも、甘やかすのはよくないと思いましたから」
「……」
 にこにこしている古田さんにそれ以上ことが言えず、僕はパラパラとページをめくった。

「じいさんが魔王を討った話なんだけどさ。人間と魔族との間に争いごとって本当にあったの」
「えっ、」
「いや、お城の図書室から本を借りてきたけど、それらしい文献ぶんけんが見当たらなくてさ」
 パラパラとページをめくりながら僕は呟いた。
「魔獣が人間界に増え、人々を襲うようになったということだけど。実際、魔族が人間に危害を加えていたのか」
 もし、それが事実なら文献に残っているはずだ。

 祖父が日本にやってきたのは戦後まもない頃だったという。まだ、八十年もたっていない。ちなみに時間の流れはアルテールも地球も同じくらいだ。

 八十年もたっていないのだから、魔族による人間の虐殺ぎゃくさつがあれば誰かが書き残しているはずだ。
 確かにアルテールのことをアイドリア王家の書庫で全て知ることはできないかもしれない。
 だけど、別に隠すことじゃないし。
 一冊くらい魔族と人間との確執かくしつが書いてある本があってもおかしくないと思う。

「確かに魔獣の異常発生いじょうはっせいがあったみたいだけど」
 別に魔獣は魔族が飼育しているわけではない。
「そうですね」

 古田さんはアルテールにいる時、精霊の姿に戻る時がある。
 大抵の場合、アイリアにいる時だけらしい。僕の前ではいつもの古田さんの姿だ。
 精霊の姿の時は口調もまるっきり変わるというけど、なんで僕の時はこんなに丁寧な対応なんだろう。
 それが不思議で仕方がなかった。
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感想 1

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みんなの感想(1件)

けぃ
2019.10.16 けぃ

読み辛いです。

なぜ疑問系の台詞の最後に「?マーク」を付けないのですか?

会話の次に別のシーンに切り替わっていることがあります。
シーンが、切り替わる描写がないと混乱します。

同じ話数のなかで同じ文面が連続して記載されている箇所があります。
投稿前に確認をされてはいかがですか?

解除

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