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誰も知らないできごとその二
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「お願いです、あの方を助けて」
苦しい息の元、彼女はシンクの手を取って懇願した。
「あの方って」
「お可哀そうなファスト様、誰もあの方の味方にはならない」
シュンと透明な翅をはばたかせて周囲を見ていたフルフラが戻ってきた。
フルフラは精霊だが、妖精の姿を取ることが多い。
「ここら辺は誰もいないみたいよ。変よね。シンクはほとんど、攻撃しないのに向こうが勝手に退いていくみたいな……」
「あいつら、弱い者には強気に出るくせに強い奴には弱いんだよな」
「エクス、知ったかぶりをしちゃって。あんた、魔族に出会うのは初めてでしょ」
「そうだけど」
「だったら、決めつけは駄目よ」
「おい、今はそんな話をしている場合じゃないんだ」
彼女の命は消えかける寸前なのだ。
「何故、こんなことに……」
攻撃されたから反撃した。
その結果、彼女の命は消えようとしている。
シンクの魔力は莫大なもので彼女の攻撃を簡単に打ち消した。
(強いと思っていたけど。まさか、ここまでとは……)
フルフラはシンクの魔力の強さに驚いた。
精霊は魔素が凝り固まった空間から自然に生まれてくる。
だから、魔力の強さには敏感だった。
それでもシンクの魔力は彼女も測定不可能だった。
「フルフラ、お前、治癒の力はないのか」
「私は風の精霊よ」
「エクス、お前は、」
「俺は力の精霊だ」
「くそっ、」
シンクはカバンから薬瓶を取り出した。
「今はこんなものしか」
ごぽっ。
彼女は口に含んだ液体を吐き出してしまう。
「くそっ、やっぱり人間の薬は魔族にはきかないか。飲んでくれ、毒じゃない」
「……」
そんなシンクにフルフラが無言で首を振る。
「彼女はもう生きる力を失っているのよ」
「何、」
「お願いです。あの人を救って、」
ぱぁっ。
彼女の体がはじけていく。シンクは思わず、手を伸ばした。
「彼女の記憶、見るつもりなの」
「ああ、」
シンクはうなずいた。
◇ ◇ ◇
あーんあーん。
幼い子供の泣き声。
ここは。
シンクは周りを見回した。
どうやら、彼女の記憶をつかむことに成功したようだ。
「彼女の記憶の中か」
それにしてはなんだか、重たい空気が流れている。
他人の記憶を覗くというのシンクも初めての経験ではない。
――それは違う。
いきなり、“声”が響いた。
「誰だ」
――これは娘の血が刻み付けられた記憶のかけら。
「記憶のかけら、」
シンクはオウム返しに呟く。
――そう、記憶のかけら。
「僕はどうして、ここにいなくてはいけないの」
子供によりそう一人の少女。
「あなたには大切な役割があるのよ」
暗転
「我らの役目は魔界を維持することだ」
「魔素は我らの命の源。集めなくてはいけない」
「一人を犠牲に大勢を助ける」
「それが我らの"理"」
魔王が何故、生まれたのか。
魔王が何故、血筋にこだわるのか。
それはここから始まった。
魔王によって魔素が一つの場所に集まっていく。
魔素は魔力の源。魔族にとって必要なもの。
この世界には魔素が必要とする人間とそうでない人間に分かれている。
魔素を必要のない人間の中には魔素の中では生きてられない人間も含まれている。
魔素を必要としている人間にとって魔素はとても気持ちのいいモノだった。
「あの子がいれば、魔素は魔界に満ちていく」
「魔力はすべて、魔族のものだ」
「僕は何故、ここから出ていくことができないの」
子供、いや魔王は泣いていた。
王としてまつられているとはいえ、彼はその場に拘束されているにすぎないのだ。
――あの人を助けて。
「君は魔王を守ろうとしているのか」
――あの人は私の乳兄弟。私はあの人と一緒に成長してきた。
くるくるとシンクの前で風景が変化していく。
魔族は魔王にばかり気を取られ気づいていないが、魔王の乳母も世襲制であった。
しかも、代々乳母を務める一族には魔王にも知らぬ秘密を持っていた。
魔王を魔界から出してはいけない。
その結果、魔素は人間界にも流れ込んでいく。
魔素は人間にとって毒、魔族にとっては力。それを忘れてはならない。
「なんなんだ、これは」
「シンク、どうしたの」
「ごめん、ちょっと混乱していた」
正直、人の記憶というのは膨大なデーターだ。強制的に受け継ぐのはかなり体力が消耗する。
「シンク、早く先に進もうぜ」
エクスがせかすのだが、彼の動きは鈍い。
「大丈夫?」
フルフラが心配そうにシンクの顔を覗き込んだ。
「大丈夫だ。これくらい、ダメージをくらったわけじゃない」
「ダメージって、シンク、今までダメージを食らったことがないじゃない」
そんな装備で……。
シンクはエクスという魔剣を持っていたが、簡素な胸当てをつけているだけなのだ。
これまで、何度も魔獣に襲撃があったが、シンクは一撃で追い払ってほとんど、無傷の状態だった。
「エクスが強いからだよ。一撃で倒せるから攻撃をうけなくてすむんだ」
「まぁな」
自分のことを褒められてエクスは嬉しそうだ。
苦しい息の元、彼女はシンクの手を取って懇願した。
「あの方って」
「お可哀そうなファスト様、誰もあの方の味方にはならない」
シュンと透明な翅をはばたかせて周囲を見ていたフルフラが戻ってきた。
フルフラは精霊だが、妖精の姿を取ることが多い。
「ここら辺は誰もいないみたいよ。変よね。シンクはほとんど、攻撃しないのに向こうが勝手に退いていくみたいな……」
「あいつら、弱い者には強気に出るくせに強い奴には弱いんだよな」
「エクス、知ったかぶりをしちゃって。あんた、魔族に出会うのは初めてでしょ」
「そうだけど」
「だったら、決めつけは駄目よ」
「おい、今はそんな話をしている場合じゃないんだ」
彼女の命は消えかける寸前なのだ。
「何故、こんなことに……」
攻撃されたから反撃した。
その結果、彼女の命は消えようとしている。
シンクの魔力は莫大なもので彼女の攻撃を簡単に打ち消した。
(強いと思っていたけど。まさか、ここまでとは……)
フルフラはシンクの魔力の強さに驚いた。
精霊は魔素が凝り固まった空間から自然に生まれてくる。
だから、魔力の強さには敏感だった。
それでもシンクの魔力は彼女も測定不可能だった。
「フルフラ、お前、治癒の力はないのか」
「私は風の精霊よ」
「エクス、お前は、」
「俺は力の精霊だ」
「くそっ、」
シンクはカバンから薬瓶を取り出した。
「今はこんなものしか」
ごぽっ。
彼女は口に含んだ液体を吐き出してしまう。
「くそっ、やっぱり人間の薬は魔族にはきかないか。飲んでくれ、毒じゃない」
「……」
そんなシンクにフルフラが無言で首を振る。
「彼女はもう生きる力を失っているのよ」
「何、」
「お願いです。あの人を救って、」
ぱぁっ。
彼女の体がはじけていく。シンクは思わず、手を伸ばした。
「彼女の記憶、見るつもりなの」
「ああ、」
シンクはうなずいた。
◇ ◇ ◇
あーんあーん。
幼い子供の泣き声。
ここは。
シンクは周りを見回した。
どうやら、彼女の記憶をつかむことに成功したようだ。
「彼女の記憶の中か」
それにしてはなんだか、重たい空気が流れている。
他人の記憶を覗くというのシンクも初めての経験ではない。
――それは違う。
いきなり、“声”が響いた。
「誰だ」
――これは娘の血が刻み付けられた記憶のかけら。
「記憶のかけら、」
シンクはオウム返しに呟く。
――そう、記憶のかけら。
「僕はどうして、ここにいなくてはいけないの」
子供によりそう一人の少女。
「あなたには大切な役割があるのよ」
暗転
「我らの役目は魔界を維持することだ」
「魔素は我らの命の源。集めなくてはいけない」
「一人を犠牲に大勢を助ける」
「それが我らの"理"」
魔王が何故、生まれたのか。
魔王が何故、血筋にこだわるのか。
それはここから始まった。
魔王によって魔素が一つの場所に集まっていく。
魔素は魔力の源。魔族にとって必要なもの。
この世界には魔素が必要とする人間とそうでない人間に分かれている。
魔素を必要のない人間の中には魔素の中では生きてられない人間も含まれている。
魔素を必要としている人間にとって魔素はとても気持ちのいいモノだった。
「あの子がいれば、魔素は魔界に満ちていく」
「魔力はすべて、魔族のものだ」
「僕は何故、ここから出ていくことができないの」
子供、いや魔王は泣いていた。
王としてまつられているとはいえ、彼はその場に拘束されているにすぎないのだ。
――あの人を助けて。
「君は魔王を守ろうとしているのか」
――あの人は私の乳兄弟。私はあの人と一緒に成長してきた。
くるくるとシンクの前で風景が変化していく。
魔族は魔王にばかり気を取られ気づいていないが、魔王の乳母も世襲制であった。
しかも、代々乳母を務める一族には魔王にも知らぬ秘密を持っていた。
魔王を魔界から出してはいけない。
その結果、魔素は人間界にも流れ込んでいく。
魔素は人間にとって毒、魔族にとっては力。それを忘れてはならない。
「なんなんだ、これは」
「シンク、どうしたの」
「ごめん、ちょっと混乱していた」
正直、人の記憶というのは膨大なデーターだ。強制的に受け継ぐのはかなり体力が消耗する。
「シンク、早く先に進もうぜ」
エクスがせかすのだが、彼の動きは鈍い。
「大丈夫?」
フルフラが心配そうにシンクの顔を覗き込んだ。
「大丈夫だ。これくらい、ダメージをくらったわけじゃない」
「ダメージって、シンク、今までダメージを食らったことがないじゃない」
そんな装備で……。
シンクはエクスという魔剣を持っていたが、簡素な胸当てをつけているだけなのだ。
これまで、何度も魔獣に襲撃があったが、シンクは一撃で追い払ってほとんど、無傷の状態だった。
「エクスが強いからだよ。一撃で倒せるから攻撃をうけなくてすむんだ」
「まぁな」
自分のことを褒められてエクスは嬉しそうだ。
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