18 / 62
戦争を知らない大人たち
第18話 マスコミも 無双
しおりを挟むノリが重要である。
実際に撃沈された原子力空母の原子炉が危険かどうかはどうでもいい。
テレビマンの第六感が反応した!
ここが騒ぎどころであると。
祭りであると。
よし、さっそくスタジオに専門家を呼ぶぞ!
ただし、祭りを盛り上げるコメントをくれる専門家にしか用はない!
なに?
「真実を曲げて大げさに話すのはあまりにも……」だと?
そんな、お前の意見いらんのじゃ、おもろないんじゃ、すっこんでろ。
顔芸のひとつも出来ないくせにタレント並のギャラを欲しがるんかおまえ。勘違いすんなよ。
タレント事務所はちゃんとオ◯コを上納するぞ。
おまえはケ◯の穴を上納する根性あんのか? ねえだろ!
なめんじゃねえぞドシロウトが!
ここは権力中枢であるぞ!
内閣総理大臣でもいつでもやめさせられる力のある伏魔殿であるぞ!
心して物を言え!
権力に物を言うときに手ぶらで言うやつがあるか!
そういう所がまるでわかってない時点でおまえらもう失格なんだよ!
テレビで使ってもらえるだけ、どれだけありがたいか考えろ!
頭使え!
おまえアホだろ!
頭使え!
頭使え!
業界のいろはも分かってねえで、何が「真実」だ笑わせんじゃねえ。
おまえのいう「真実」が1円でも生み出すのかよ? あきれるわ。
「真実」は俺らが決めるんだよ!
そこから勉強し直せ、世間知らずのオタク野郎が。
この世界がどんだけ厳しいか知りもしないで、ぽっと出のお前ごときが番組の方針に口出ししていいと思ってるのか、思い上がるにも程があるわ。
テレビに出たがる専門家の代わりはいくらでもおるんじゃ。
こちらが話して欲しいこと以外しゃべるな、専門家。
二度とスタジオに呼ばねーぞ、専門家。
わかったか、専門家。
あと、なんかそれっぽい適当なやつでも専門家って呼ぶことにするぞ。
じつはただの売れない役者だったりするけど、バレなきゃセーフ。
あれ? こないだ反原発でインタビュー受けてた通りすがりの人だよね?
なんで今日は専門家として出演してるのかな?
心配いらない、どうせ視聴者は分からない。
テレビ局が流したい情報以外はカットである。
……さすがバブル好景気時代のノリを
頑なに守り続けて50年のスタッフたちが織りなす由緒正しき伝統芸である。
もうテレビ局が好き勝手できた、おめでたい時代じゃないという、どうしようもない現実から全力で目を逸らす所存である。
だがテレビ局よ。 それでいいのか。
いやテレビの行く末の話ではない。 今はそんな事どうでもいい。
〝 これ日本が無くなっちゃうかもしれないぞと。 〟
テレビマンは応えた。
「やられているのはアメリカ軍でしょ?」
「アメリカ軍が負けたからって日本は無くならないでしょ(笑)」
笑ったね、今笑ったね、その心笑ってるね。
笑ってる場合ではないっぽいのだが。
アジア太平洋地域の軍事バランスが今、たった今、正体不明の何者かに簡単に破壊され、何が起こってもおかしくない状態にあるのだが。
なろう異世界小説風にわかりやすく言うと、『光と闇の勢力のバランスが崩れた!』あるいは、『あああ、古の結界が破られた! 魔物が、魔物の軍勢が押し寄せてくるぅぅぅ~!』 って状態が始まっているのだが……。
この期に及んで、責任のあるオッサンがこんな風に笑っちゃってるのも仕方がない。
そりゃそうだろう。
ある時、日本の子供が教師に聞いた。
「どうして戦争って起きるの?」
教師はドヤ顔で答えた。
「アホな政治家が起こすからだ」
これである。
悲しいかな、これが一般的な支持を受けやすい回答なんだろう。
ダメな方向の支持を受けちゃうんだろう。
大学まで出たであろう教師が口走るにはあまりに粗末過ぎる回答であるのだが。
未来を担うこどもの質問に、プロの教師がこのように答えていいかどうかも分からんのかという根本的な問題が、ゴロンとどデカく眼の前に転がっているのだが。
戦後多くの日本人にとっては、戦争はどこかのバカがやらかすもので、
平和を愛する自分たちには関係のないもの。
ぼくたちはバカじゃないので、二度と『過ち』は犯しません。
なので大丈夫。
そういう理屈なワケです。
だからテレビマンはなにより優先的に原子力空母の放射能漏れを、漏れてようが漏れてなかろうが執拗にこねくり回して全力で報道するし。
一方、極東の軍事バランスに睨みを利かすアメリカ第7艦隊が
(※正しくは、中東地域除く西太平洋からインド洋まで担当)
『空母』『イージス』『揚陸指揮艦』をまとめてボコボコにやられたという歴史的大事件であるなどと、知るわけもないし知ったこっちゃない。
知っててもそんなクソ面白くない情報じゃ視聴者に響かないだろう?
と、勝手にテレビマンが自分が興味ないことを世間が興味ないと自信満々に判断してても。
えー? なにそれ、第7艦隊って何よ?
いるの? 日本に必要なの?
それより放射能でしょ。
日本は世界唯一の被爆国だよ?
被爆国に配慮とかないの?
配慮しようよ?
スタッフにもヒロシマ出身がいます!
──── ね?
首相もヒロシマ出身ですよ!
──── ね?
彼も彼女もヒロシマ出身!
──── な?
「ヒロシマ出身がどんだけ偉いっちゅーの?
それが日本の行く末よりどんだけ大事なのかまったく説明になってないじゃん」
と、マックで女子高生が言っていた。
とにかく彼らは彼らの知ってる範囲で日本人の関心を引くであろう最善の報道をしているのだ。
それのどこが間違っている?
だれがそれを間違いだと言える?
わからない。
わからないが。
わかろうがわかるまいが世界は動いていて
日本人が『過ち』を犯そうが犯すまいが知ったこっちゃないのである。
お互い様なのである。
テレビマンがジャーナリズム精神に目覚めようと目覚めまいと
もうテレビが娯楽の王様では無くなっていくのと同じ。
どうしようもない。
いきなり電車内でヤクザに絡まれてても誰も助けてくれない。
みんな自分のことで精一杯。
アレと何も変わらない。
──まぁ、そういうわけで。
日本人の受け取る情報は、日本のメディアが流す情報なもんだから。
日本のメディアが「おもしろくねぇから」と判断したらもう誰も知ることが無い。
そういうお話でした。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
(注)この作品でのマスメディアの方々が極端に描かれていますが、
ホラー映画の警察や軍隊が劇中で役立たずに描かれているのと同じように事実とは異なります。
ゾンビを警察が手際よくやっつけちゃうと映画にならないように、演出の都合上、仕方なく問題をややこしくするお芝居をして頂いております。フィクションです。
と思います。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる