上 下
5 / 5
蛇メタル

蛇メタルしようぜ!

しおりを挟む
「こほん。では、犯人についてです」
公園の駐車場で物々しくリリーが口を開いた。
「え、わかったんですか?」
私とあんなことをしているだけで犯人がわかるなんてリリーは凄い。
どの状況でそう思ったのだろうか?
「もちろん。可愛い助手のおかげよ」
リリーは私の頭を優しく撫でた。
「で、誰なんだよ。犯人ってやつは」


「犯人は……。大蛇です」


「は?」
皆がリリーのあまりな推理にポカンと口を開け、全員ずっこけた。もちろん私もだ。
「大蛇ってどういう事?」
大場は唖然とした表情を隠す様子もなくリリーに胸ぐらをつかみ詰め寄る。

「ニュースで観ませんでしたか?」
「え?」
「ヘビメタルの鼠田さんのメタル君が逃げ出した話を」
「あ、確かに!」
風間は思い出したようでパチンと両手を叩いた。
「いや、でもだからっておかしいだろ」
「何一つおかしくありません。白ニキシヘビを人の手と誤認する事だってありますわ」
「ていうか、そのヘビが何でこの公園に居るんだよ!」
「自然に帰りたかったのでは?それに、鼠田さんの家からここは近いです。恋しくなって死物狂いでここに来たのでしょう。可哀想ね」
リリーはうっすらと涙を浮かべて悲愴な表情だ。私はそれにつられるように涙が出てきた。
考えてみれば人間の身勝手で白ニキシヘビは日本に連れてこられたのだ。
きっと白ニキシヘビは鼠のような魔物を丸飲みにし、猫に肉球パンチに傷つき壮大な冒険をしたのだろう。
あぁ、なんて可哀相なのだろう。
しかし、なぜリリーはそんな推理をしたのだろうか?根拠は?

「実は先程見かけました」

さっき、リリーの大蛇を握らされた時、彼女が呟いた「大蛇」はそういう意味だったのか!
「何でそれをさっさと言わない!」
西田は頭に血管を浮かび上がらせて、怒鳴り出す。
「おっさん。怒ると身体に触るぞ!リリーさんも何で言わなかったんですか?」
「だって良いところだったんだもの。ショウちゃんとデート気分で楽しくって」
つまり私との行為を優先させたのか。
一気に脱力してしまう。
「とにかく早く見つけてくださいね」
リリーは妖艶に微笑んだ。

「蛇がきっと最低男を成敗したんですね」
「きっとそうね。うふふ。行きましょう?」
私はリリーに抱き上げられて公園を後にした。

「あのヘビは日本に無理矢理連れてこられて可哀相です。また帰されるなんて」
「大丈夫よ。あの子はペットショップ育ちだから自然では生きていけないわ」
きっと蛇は連れて帰られて、鼠田は明日からまた蛇メタルが出来るのだろう。
蛇が快適に生活できるのなら、それでもいいか。と、私は結論付けた。
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

恋愛 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:8

王道ですが、何か?

BL / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:200

とてもとても残酷で無慈悲な婚約破棄

恋愛 / 完結 24h.ポイント:21pt お気に入り:9

白銀のラストリゾート

SF / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

こはたからゆめのかけはし

児童書・童話 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:3

おばあちゃんのお惣菜

ライト文芸 / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:6

我慢しない節電術

エッセイ・ノンフィクション / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:3

「忘れられない人」

恋愛 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:45

一万袋

現代文学 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:1

処理中です...