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リーヌスのと付き合いは生まれた時からだった。
私の家は、チェンバース伯爵家で田舎に領地がある。
肥沃な土地のため農業が盛んで裕福だ。
チェンバース家には、子供は私しかいないため婿養子を貰う予定なのだが、その相手としてリーヌスの名前が上がっていた。
候補といっても名前だけの物で、婚約関係でもなければそんな話すら出ていない。
親同士でどのような話し合いがしてあるのか、私は知らないのでなんとも言えないのだけれど。
お互いの家の考えとしては、幼馴染として関係を見て良好ならば婚姻させたいつもりなのだと思う。
貴族の間での婚姻の重要性は理解しているが、田舎ということもありおおらかに物を考えているのだ。
お互いも同じように考えていて、好きな人ができなかったら夫婦になるか。と、のんびりと考えている程度だ。
つまり、リーヌスとは幼馴染でもあり、仲の良い友人でもある。
そう、表面上は。
リーヌスは事ある事に私のことを「親友」だと言ってくれる。
私は、随分と前から彼のことを親友だと思えなくなっていた。
この想いに気がついたのはいつなのか、明確な説明はできない。けれど、物心がついた時には、すでにリーヌスのことが好きだった。
リーヌスが私に「親友だ」と言うたびに、自分の心の汚さに吐き気がした。
けれど、友情の延長線上は同じものがあると私は思っている。
このままなら、私たちは同じ道を歩むだろう。
そこに愛はなくても、リーヌスと私は「友情」で結ばれると信じていた。
「エーデル、教室に行こう」
リーヌスに声をかけられて、私はぼんやりとしていたことに気がついた。
テストが終わるといつも気が抜けてぼんやりとしてしまうことが多かった。
それだけ集中しているという事なのだけれど、自力で努力することにそろそろ限界を感じ始めていた。
どうしたら、いいのかしら……。
「ええ、そうね」
悩んでもどうしようもない事だと言い聞かせて私は頷く。
「きっと、大丈夫さ。努力はいつか報われるから」
リーヌスはそう言うが、私の心は不安でいっぱいだった。
意味のない努力は報われないことをよく知っているから。
「そうだといいわね」
曖昧な返事を返して教室に入るとすでに何人かの生徒がいた。
そこには見たくない顔もあった。
「やあ、残念だったね。万年二位さん」
はあ、と、私はため息を吐きたくなった。
彼はフランツといい、ミランダの幼馴染でケネス公爵家の次男だ。身分が高いため学園では何かと目立つ存在だ。
何かと私に突っかかってくる彼のことが苦手だった。
彼はテストの結果が出るたびに私のところにやってきて、バカにするように声をかけてくるのだ。
フランツは薄茶色の髪の毛と淡い青色の瞳をしており、やや垂れ目がちなせいなのか、雰囲気がどことなく軽薄さがある。
そのせいか私は彼のことが苦手だった。
軽薄そうな外見をしているけれど、学園内で女子生徒を口説いている様子はなく、遊んでいるようには見えない。
ただ、リーヌスが言うには男子生徒の中では遊んでいるらしい。
そんな事はどうでもいいのだけれど。
ミランダとは、親しいようで牽制のために私に「万年二位さん」と言って突っかかってくるのだ。
お読みくださりありがとうございます
サクッと完結させたいです!
私の家は、チェンバース伯爵家で田舎に領地がある。
肥沃な土地のため農業が盛んで裕福だ。
チェンバース家には、子供は私しかいないため婿養子を貰う予定なのだが、その相手としてリーヌスの名前が上がっていた。
候補といっても名前だけの物で、婚約関係でもなければそんな話すら出ていない。
親同士でどのような話し合いがしてあるのか、私は知らないのでなんとも言えないのだけれど。
お互いの家の考えとしては、幼馴染として関係を見て良好ならば婚姻させたいつもりなのだと思う。
貴族の間での婚姻の重要性は理解しているが、田舎ということもありおおらかに物を考えているのだ。
お互いも同じように考えていて、好きな人ができなかったら夫婦になるか。と、のんびりと考えている程度だ。
つまり、リーヌスとは幼馴染でもあり、仲の良い友人でもある。
そう、表面上は。
リーヌスは事ある事に私のことを「親友」だと言ってくれる。
私は、随分と前から彼のことを親友だと思えなくなっていた。
この想いに気がついたのはいつなのか、明確な説明はできない。けれど、物心がついた時には、すでにリーヌスのことが好きだった。
リーヌスが私に「親友だ」と言うたびに、自分の心の汚さに吐き気がした。
けれど、友情の延長線上は同じものがあると私は思っている。
このままなら、私たちは同じ道を歩むだろう。
そこに愛はなくても、リーヌスと私は「友情」で結ばれると信じていた。
「エーデル、教室に行こう」
リーヌスに声をかけられて、私はぼんやりとしていたことに気がついた。
テストが終わるといつも気が抜けてぼんやりとしてしまうことが多かった。
それだけ集中しているという事なのだけれど、自力で努力することにそろそろ限界を感じ始めていた。
どうしたら、いいのかしら……。
「ええ、そうね」
悩んでもどうしようもない事だと言い聞かせて私は頷く。
「きっと、大丈夫さ。努力はいつか報われるから」
リーヌスはそう言うが、私の心は不安でいっぱいだった。
意味のない努力は報われないことをよく知っているから。
「そうだといいわね」
曖昧な返事を返して教室に入るとすでに何人かの生徒がいた。
そこには見たくない顔もあった。
「やあ、残念だったね。万年二位さん」
はあ、と、私はため息を吐きたくなった。
彼はフランツといい、ミランダの幼馴染でケネス公爵家の次男だ。身分が高いため学園では何かと目立つ存在だ。
何かと私に突っかかってくる彼のことが苦手だった。
彼はテストの結果が出るたびに私のところにやってきて、バカにするように声をかけてくるのだ。
フランツは薄茶色の髪の毛と淡い青色の瞳をしており、やや垂れ目がちなせいなのか、雰囲気がどことなく軽薄さがある。
そのせいか私は彼のことが苦手だった。
軽薄そうな外見をしているけれど、学園内で女子生徒を口説いている様子はなく、遊んでいるようには見えない。
ただ、リーヌスが言うには男子生徒の中では遊んでいるらしい。
そんな事はどうでもいいのだけれど。
ミランダとは、親しいようで牽制のために私に「万年二位さん」と言って突っかかってくるのだ。
お読みくださりありがとうございます
サクッと完結させたいです!
応援ありがとうございます!
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