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カルイセン4
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カルイセン4
僕の取り調べが始まった。
「お前はアンジェラを追い詰めるために、嘘の噂を流したのか?」
「違います」
コリー公爵はよほど暇なのか、彼直々に僕の取り調べだ。
おそらくだが、アンジェラの事などどうでもいいが、勝手に騒ぎを起こされて彼は腹を立てているのだと思う。
ほとぼりが冷めれば僕は解放されて、元通りの生活に戻れると思っていた。
しかし、コリー公爵は、なかなか僕を解放してはくれなかった。
執拗なほどに、僕が殺意を持ってアンジェラを誹謗中傷していたのかと何度も質問してくるのだ。
まるで、自分がした。「ちょっとした嫌がらせ」を本気でやり返しているようにすら思えて、僕は少しだけゾッとした。
あまりに大人気ない。たかが、平民一人になぜそこまでするのか。
僕は、アンジェラへの嫌がらせを認めても、殺意があったとは認めなかった。
実際に死んで欲しい。だなんてこれっぽっちも思っていなかったからだ。
「なぜ、私がお前をアンジェラの婚約者に選んだかわかるか?」
ある日、コリー公爵が唐突にそんな事を言い出した。
僕はそれを鼻で笑った。
「……さあ?適当に選んだのでしょう?」
「真っ当な家門だと思っていたからだ。こんな事になるのなら、親子関係を解消してスレードと婚約させていた」
コリー公爵の発言に僕は驚いた。
意外にもアンジェラに対して、それなりの情はあったようだ。
「血のつながりがない事を知っていたんですか?」
「当たり前だ。彼女を私の娘として認められるように戸籍を書き換えたのは私だからな。お陰でしなくていい仕事をする羽目になった。子供を幸せにするためにやったのに、こんな事になるなんてな」
それは、コリー公爵の罪の告白だ。
その告白に、僕は驚いて戸惑った。
「なぜ、そんな事を」
僕に言うのか、誰かに教えて回るとはコリー公爵は思っていないのだろうか。
それとも、もう死ぬから言っても構わないと思ったのか。
「婚約者のお前とスレードがいれば、私が不在でもアンジェラを守ってくれると思っていた」
コリー公爵は、憎しみの籠った目を僕に向けてきた。
「……」
「さて、いい知らせだ。お前はただの平民になった」
コリー公爵は、打って変わって楽しげな顔でそう教えてくれた。
平民になった?僕が?
そんなの信じられない。
……貴族じゃなくなったら僕はどうなるのだろう。
足元から崩れていくような気分だ。
「それが何だっていうんですか」
それでも、恐怖を知られたくなくて、僕は精一杯強がる。
「お前がアンジェラとスレードに王立学園で危害を加えていた事実は消えない。アンジェラは平民だが、スレードは貴族だ。平民のお前はどうなるかわかるだろう?」
コリー公爵は、冷笑を浮かべる。
「……!」
「二度と誰かを侮辱できないようにしないといけないな。もう、お前の証言など必要ない。何も喋らなくていい」
僕は真実を話すことが出なくなった。
舌を切り落とされたので、二度と話すことができなくなったのだ。
「もう何も喋れないから罪を着せられても、否定も弁解も何もできないな」
数日後、僕は解放された。
何も持たない僕はどうやって生きていけばいいのだろう。
もの言えない僕は、何をされても声を上げることができない。あの時のアンジェラと同じように。
僕の取り調べが始まった。
「お前はアンジェラを追い詰めるために、嘘の噂を流したのか?」
「違います」
コリー公爵はよほど暇なのか、彼直々に僕の取り調べだ。
おそらくだが、アンジェラの事などどうでもいいが、勝手に騒ぎを起こされて彼は腹を立てているのだと思う。
ほとぼりが冷めれば僕は解放されて、元通りの生活に戻れると思っていた。
しかし、コリー公爵は、なかなか僕を解放してはくれなかった。
執拗なほどに、僕が殺意を持ってアンジェラを誹謗中傷していたのかと何度も質問してくるのだ。
まるで、自分がした。「ちょっとした嫌がらせ」を本気でやり返しているようにすら思えて、僕は少しだけゾッとした。
あまりに大人気ない。たかが、平民一人になぜそこまでするのか。
僕は、アンジェラへの嫌がらせを認めても、殺意があったとは認めなかった。
実際に死んで欲しい。だなんてこれっぽっちも思っていなかったからだ。
「なぜ、私がお前をアンジェラの婚約者に選んだかわかるか?」
ある日、コリー公爵が唐突にそんな事を言い出した。
僕はそれを鼻で笑った。
「……さあ?適当に選んだのでしょう?」
「真っ当な家門だと思っていたからだ。こんな事になるのなら、親子関係を解消してスレードと婚約させていた」
コリー公爵の発言に僕は驚いた。
意外にもアンジェラに対して、それなりの情はあったようだ。
「血のつながりがない事を知っていたんですか?」
「当たり前だ。彼女を私の娘として認められるように戸籍を書き換えたのは私だからな。お陰でしなくていい仕事をする羽目になった。子供を幸せにするためにやったのに、こんな事になるなんてな」
それは、コリー公爵の罪の告白だ。
その告白に、僕は驚いて戸惑った。
「なぜ、そんな事を」
僕に言うのか、誰かに教えて回るとはコリー公爵は思っていないのだろうか。
それとも、もう死ぬから言っても構わないと思ったのか。
「婚約者のお前とスレードがいれば、私が不在でもアンジェラを守ってくれると思っていた」
コリー公爵は、憎しみの籠った目を僕に向けてきた。
「……」
「さて、いい知らせだ。お前はただの平民になった」
コリー公爵は、打って変わって楽しげな顔でそう教えてくれた。
平民になった?僕が?
そんなの信じられない。
……貴族じゃなくなったら僕はどうなるのだろう。
足元から崩れていくような気分だ。
「それが何だっていうんですか」
それでも、恐怖を知られたくなくて、僕は精一杯強がる。
「お前がアンジェラとスレードに王立学園で危害を加えていた事実は消えない。アンジェラは平民だが、スレードは貴族だ。平民のお前はどうなるかわかるだろう?」
コリー公爵は、冷笑を浮かべる。
「……!」
「二度と誰かを侮辱できないようにしないといけないな。もう、お前の証言など必要ない。何も喋らなくていい」
僕は真実を話すことが出なくなった。
舌を切り落とされたので、二度と話すことができなくなったのだ。
「もう何も喋れないから罪を着せられても、否定も弁解も何もできないな」
数日後、僕は解放された。
何も持たない僕はどうやって生きていけばいいのだろう。
もの言えない僕は、何をされても声を上げることができない。あの時のアンジェラと同じように。
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