18 / 38
アリス1
しおりを挟む
アリス1
「貴女は、貴族のお姫様なのよ」
母は、いつも私にそう嬉しそうに話していた。
それなのに、私は綺麗なドレスも宝石も持っていない。家は普通の家と比べたら綺麗ではあるけれど。お城ではない。
その事を母に言うと。
唇を噛み締めて、母は必ずこう言うのだ。
「邪魔者が死ねば、私たちは貴族になれるのよ」
私はそれを信じて、その日が来るのを指折り数えていた。
「貴族様の子供とか、現実を見た方がいいよ」
私をそう言って罵倒する人はいたけれど、私を助けてくれる人はたくさんいた。
「あの子が、愛人の子供は穢らわしいって言われて……」
私が瞳を潤ませてそう言うと、男たちはそれを信じて暴言を吐いた子を排除してくれた。
私が母の言う事を信じた理由は、私は母によく似ていて、母はとても綺麗な顔をしていたからだ。
美人の母が貴族の目に留まるのは当然のことだ。
人は外見しか見ないのだから。
貴族様のお父様が迎えにきたのは、私が13歳になった時の事だ。
私に親切にしてくれた人たちは、とても喜んでくれた。
「これからも仲良くしてくれる?」
おこぼれを貰おうとする卑屈な笑顔に、私は最後だからとにっこりと笑った。
「え?付き合う人が変わるから無理に決まってるじゃない。貴方は貴族じゃないんだから、私と仲良くできるわけがないわ。立場を考えたら?」
私がそう言うとなぜかショックを受けている様子だった。
「それでも、親切にしてくれてありがとう。感謝してるわ」
何も言わないもの申し訳ないから、感謝の言葉を告げる。
何か物をあげたらつけ上がるから、言葉だけで十分だ。それでも勿体無いくらいだけれど。
「今まで不便な生活をさせていたから、アリスはこれからは好きにしていい。私がそれを許す」
お父様は、そう言ってくれたので、私はまず最初に身の回りのものを揃えることにした。
服を揃えると、今度は自分に相応しい「お友達」や「恋人」が欲しくなった。
だから、「お友達」を作るためにお茶会に行くことにした。
お茶会で、私はすんなりと受け入れられた。
当然だ。アイネス公爵の娘なのだから。
以前は母は愛人だったけれど、今は正妻なのだ。
私を馬鹿にできる人なんて存在しない。
それなのに、私はある二人に目がいった。
その二人は、ショーウィンドウに飾られる王子様とお姫様のヴィスクドールの人形のように綺麗だった。
特に、男の子の方に私は釘付けになった。
「あ、あの子たちは誰なの?」
「ああ、コリー公爵家の令嬢アンジェラ様と令息のスレード様です」
私が「お友達」に、二人の事を聞くと言いにくそうに教えてくれた。
「まあ、そうなの?話がしたいわ」
「えっ、二人を呼び出す事はできません」
二人を呼び出すように言うと、困った顔で断られた。
「なぜ?」
「その、無礼な事はできませんから」
無礼とはどういう意味なのか、私の呼び出しを断れるほどの立場の人間は王族以外にいないはずだ。
「……ねぇ、スレードに会うにはどうしたらいいの?」
「あまり社交をする方たちではありませんからね」
私の質問に「お友達」は、スレードにあった事を教えてくれた。
しかし、私にはアンジェラがスレードが注目されるのが耐えきれなくて嫌がらせをしているようにしか思えなかった。
「じゃあ、アンジェラがスレードが社交をできないように邪魔しているようにしか思えないわ」
「……アリス様、その、呼び捨てはあまりにも失礼ですよ。やめてください」
私が腹を立てていると「お友達」が偉そうに注意をしてきた。
「何様のつもりなの?」
偉そうに口出しをしてきた「お友達」に、私は腹が立った。
それと、アンジェラにも腹が立っていた。
私が苦労して手に入れた場所に、さも当然のような顔をして居座っているのがズルい。
それに、スレードの社交の邪魔をするなんて。
スレードがあまりにも可哀想だ。
~~
お読みくださりありがとうございます
ホット2位に入っていてびっくりしています
ありがとうございます!
お気に入り登録、エール、しおり、いいね、感想もらえると嬉しいです
今、結末変えるために、帳尻合わせしながら書いているんですが、矛盾点あったらすみません
「貴女は、貴族のお姫様なのよ」
母は、いつも私にそう嬉しそうに話していた。
それなのに、私は綺麗なドレスも宝石も持っていない。家は普通の家と比べたら綺麗ではあるけれど。お城ではない。
その事を母に言うと。
唇を噛み締めて、母は必ずこう言うのだ。
「邪魔者が死ねば、私たちは貴族になれるのよ」
私はそれを信じて、その日が来るのを指折り数えていた。
「貴族様の子供とか、現実を見た方がいいよ」
私をそう言って罵倒する人はいたけれど、私を助けてくれる人はたくさんいた。
「あの子が、愛人の子供は穢らわしいって言われて……」
私が瞳を潤ませてそう言うと、男たちはそれを信じて暴言を吐いた子を排除してくれた。
私が母の言う事を信じた理由は、私は母によく似ていて、母はとても綺麗な顔をしていたからだ。
美人の母が貴族の目に留まるのは当然のことだ。
人は外見しか見ないのだから。
貴族様のお父様が迎えにきたのは、私が13歳になった時の事だ。
私に親切にしてくれた人たちは、とても喜んでくれた。
「これからも仲良くしてくれる?」
おこぼれを貰おうとする卑屈な笑顔に、私は最後だからとにっこりと笑った。
「え?付き合う人が変わるから無理に決まってるじゃない。貴方は貴族じゃないんだから、私と仲良くできるわけがないわ。立場を考えたら?」
私がそう言うとなぜかショックを受けている様子だった。
「それでも、親切にしてくれてありがとう。感謝してるわ」
何も言わないもの申し訳ないから、感謝の言葉を告げる。
何か物をあげたらつけ上がるから、言葉だけで十分だ。それでも勿体無いくらいだけれど。
「今まで不便な生活をさせていたから、アリスはこれからは好きにしていい。私がそれを許す」
お父様は、そう言ってくれたので、私はまず最初に身の回りのものを揃えることにした。
服を揃えると、今度は自分に相応しい「お友達」や「恋人」が欲しくなった。
だから、「お友達」を作るためにお茶会に行くことにした。
お茶会で、私はすんなりと受け入れられた。
当然だ。アイネス公爵の娘なのだから。
以前は母は愛人だったけれど、今は正妻なのだ。
私を馬鹿にできる人なんて存在しない。
それなのに、私はある二人に目がいった。
その二人は、ショーウィンドウに飾られる王子様とお姫様のヴィスクドールの人形のように綺麗だった。
特に、男の子の方に私は釘付けになった。
「あ、あの子たちは誰なの?」
「ああ、コリー公爵家の令嬢アンジェラ様と令息のスレード様です」
私が「お友達」に、二人の事を聞くと言いにくそうに教えてくれた。
「まあ、そうなの?話がしたいわ」
「えっ、二人を呼び出す事はできません」
二人を呼び出すように言うと、困った顔で断られた。
「なぜ?」
「その、無礼な事はできませんから」
無礼とはどういう意味なのか、私の呼び出しを断れるほどの立場の人間は王族以外にいないはずだ。
「……ねぇ、スレードに会うにはどうしたらいいの?」
「あまり社交をする方たちではありませんからね」
私の質問に「お友達」は、スレードにあった事を教えてくれた。
しかし、私にはアンジェラがスレードが注目されるのが耐えきれなくて嫌がらせをしているようにしか思えなかった。
「じゃあ、アンジェラがスレードが社交をできないように邪魔しているようにしか思えないわ」
「……アリス様、その、呼び捨てはあまりにも失礼ですよ。やめてください」
私が腹を立てていると「お友達」が偉そうに注意をしてきた。
「何様のつもりなの?」
偉そうに口出しをしてきた「お友達」に、私は腹が立った。
それと、アンジェラにも腹が立っていた。
私が苦労して手に入れた場所に、さも当然のような顔をして居座っているのがズルい。
それに、スレードの社交の邪魔をするなんて。
スレードがあまりにも可哀想だ。
~~
お読みくださりありがとうございます
ホット2位に入っていてびっくりしています
ありがとうございます!
お気に入り登録、エール、しおり、いいね、感想もらえると嬉しいです
今、結末変えるために、帳尻合わせしながら書いているんですが、矛盾点あったらすみません
1,470
あなたにおすすめの小説
彼女がいなくなった6年後の話
こん
恋愛
今日は、彼女が死んでから6年目である。
彼女は、しがない男爵令嬢だった。薄い桃色でサラサラの髪、端正な顔にある2つのアーモンド色のキラキラと光る瞳には誰もが惹かれ、それは私も例外では無かった。
彼女の墓の前で、一通り遺書を読んで立ち上がる。
「今日で貴方が死んでから6年が経ったの。遺書に何を書いたか忘れたのかもしれないから、読み上げるわ。悪く思わないで」
何回も読んで覚えてしまった遺書の最後を一息で言う。
「「必ず、貴方に会いに帰るから。1人にしないって約束、私は破らない。」」
突然、私の声と共に知らない誰かの声がした。驚いて声の方を振り向く。そこには、見たことのない男性が立っていた。
※ガールズラブの要素は殆どありませんが、念の為入れています。最終的には男女です!
※なろう様にも掲載
婚約破棄されないまま正妃になってしまった令嬢
alunam
恋愛
婚約破棄はされなかった……そんな必要は無かったから。
既に愛情の無くなった結婚をしても相手は王太子。困る事は無かったから……
愛されない正妃なぞ珍しくもない、愛される側妃がいるから……
そして寵愛を受けた側妃が世継ぎを産み、正妃の座に成り代わろうとするのも珍しい事ではない……それが今、この時に訪れただけ……
これは婚約破棄される事のなかった愛されない正妃。元・辺境伯爵シェリオン家令嬢『フィアル・シェリオン』の知らない所で、周りの奴等が勝手に王家の連中に「ざまぁ!」する話。
※あらすじですらシリアスが保たない程度の内容、プロット消失からの練り直し試作品、荒唐無稽でもハッピーエンドならいいんじゃい!的なガバガバ設定
それでもよろしければご一読お願い致します。更によろしければ感想・アドバイスなんかも是非是非。全十三話+オマケ一話、一日二回更新でっす!
たのしい わたしの おそうしき
syarin
恋愛
ふわふわのシフォンと綺羅綺羅のビジュー。
彩りあざやかな花をたくさん。
髪は人生で一番のふわふわにして、綺羅綺羅の小さな髪飾りを沢山付けるの。
きっと、仄昏い水底で、月光浴びて天の川の様に見えるのだわ。
辛い日々が報われたと思った私は、挙式の直後に幸せの絶頂から地獄へと叩き落とされる。
けれど、こんな幸せを知ってしまってから元の辛い日々には戻れない。
だから、私は幸せの内に死ぬことを選んだ。
沢山の花と光る硝子珠を周囲に散らし、自由を満喫して幸せなお葬式を自ら執り行いながら……。
ーーーーーーーーーーーー
物語が始まらなかった物語。
ざまぁもハッピーエンドも無いです。
唐突に書きたくなって(*ノ▽ノ*)
こーゆー話が山程あって、その内の幾つかに奇跡が起きて転生令嬢とか、主人公が逞しく乗り越えたり、とかするんだなぁ……と思うような話です(  ̄ー ̄)
19日13時に最終話です。
ホトラン48位((((;゜Д゜)))ありがとうございます*。・+(人*´∀`)+・。*
【完結】王妃を廃した、その後は……
かずきりり
恋愛
私にはもう何もない。何もかもなくなってしまった。
地位や名誉……権力でさえ。
否、最初からそんなものを欲していたわけではないのに……。
望んだものは、ただ一つ。
――あの人からの愛。
ただ、それだけだったというのに……。
「ラウラ! お前を廃妃とする!」
国王陛下であるホセに、いきなり告げられた言葉。
隣には妹のパウラ。
お腹には子どもが居ると言う。
何一つ持たず王城から追い出された私は……
静かな海へと身を沈める。
唯一愛したパウラを王妃の座に座らせたホセは……
そしてパウラは……
最期に笑うのは……?
それとも……救いは誰の手にもないのか
***************************
こちらの作品はカクヨムにも掲載しています。
私のことを愛していなかった貴方へ
矢野りと
恋愛
婚約者の心には愛する女性がいた。
でも貴族の婚姻とは家と家を繋ぐのが目的だからそれも仕方がないことだと承知して婚姻を結んだ。私だって彼を愛して婚姻を結んだ訳ではないのだから。
でも穏やかな結婚生活が私と彼の間に愛を芽生えさせ、いつしか永遠の愛を誓うようになる。
だがそんな幸せな生活は突然終わりを告げてしまう。
夫のかつての想い人が現れてから私は彼の本心を知ってしまい…。
*設定はゆるいです。
【完結】婚約破棄はお受けいたしましょう~踏みにじられた恋を抱えて
ゆうぎり
恋愛
「この子がクラーラの婚約者になるんだよ」
お父様に連れられたお茶会で私は一つ年上のナディオ様に恋をした。
綺麗なお顔のナディオ様。優しく笑うナディオ様。
今はもう、私に微笑みかける事はありません。
貴方の笑顔は別の方のもの。
私には忌々しげな顔で、視線を向けても貰えません。
私は厭われ者の婚約者。社交界では評判ですよね。
ねぇナディオ様、恋は花と同じだと思いませんか?
―――水をやらなければ枯れてしまうのですよ。
※ゆるゆる設定です。
※名前変更しました。元「踏みにじられた恋ならば、婚約破棄はお受けいたしましょう」
※多分誰かの視点から見たらハッピーエンド
陛下を捨てた理由
甘糖むい
恋愛
美しく才能あふれる侯爵令嬢ジェニエルは、幼い頃から王子セオドールの婚約者として約束され、完璧な王妃教育を受けてきた。20歳で結婚した二人だったが、3年経っても子供に恵まれず、彼女には「問題がある」という噂が広がりはじめる始末。
そんな中、セオドールが「オリヴィア」という女性を王宮に連れてきたことで、夫婦の関係は一変し始める。
※改定、追加や修正を予告なくする場合がございます。ご了承ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる