私が消えたその後で(完結)

毛蟹

文字の大きさ
13 / 21

13

しおりを挟む
「……私の顔が醜いと知っていて聞いているのですか?」

ケネスは少しだけ逡巡して「ああ」と頷いた。
どうやら、私が醜いという事実は皆が知っていることのようだ。
初対面でケネスが、私の素顔を見て不快にならないか心配だった。
命令なら見せるしかない。

「もちろん。断ってくれてもいい。嫌がるものを無理やりさせるつもりはない」

ケネスは私の様子をみて、苦笑い混じりに前置きをした。
どうやら、断るかどうかは私に委ねてくれるようだ。その姿に好感が持てた。
彼は最初から私に腹を割って話してくれている。それなのに、素顔を隠してくれてもいい。と、言ってくれるのだ。
私は覚悟を決めた。
どのみち、夫になる人に素顔を見せないわけにはいかない。

「人払いをしてもらえますか?」

私は覚悟を決めてケネスにお願いをした。
もう、私のすぐ側にいてくれるミラベルはいないのだ。一生を共にするケネスとは信頼関係を築かないとならない。

「わかった」

「これが私の素顔です」

震える手で前髪に手をかける。
視界が明るくなるのに反して、心は不安で暗闇に包まれていくようだ。

ケネスは、驚いた顔をしてしばらく私の顔をじいっと見た。

「……その顔は絶対に誰にも見せない方がいい。前髪ではなくて仮面を贈ろう。君は醜くないよ」

ケネスはそう言って気まずそうに目を逸らした。
反応から私の顔を不快には思ってないようには見える。
それは、演技かもしれないけれど。

「仮面は綺麗で丈夫なものを作るよ。君に似合うように。だから前髪は切ってくれないか?少し怖くて」

ケネスは冗談めかして笑った。
確かに、顔を隠すためとはいえ、前髪が長いのは怖いかもしれない。

「わかりました」

「前髪は信用できる人に切ってもらうようにした方がいい」

ケネスとはしばらく話をして、次は、お茶会をしようと決めてこの日は解散になった。

ケネスとのはじめての顔合わせを済ませると、私は部屋に戻ることも許されず執事に強引に連れ出された。

連れて行かれた場所はダイニングだった。

そこにいたのは、この屋敷の主人たちだろうか。
桃色の髪の毛と青い瞳をした男性と少女と、銀色の髪の毛に紫色の瞳をした女性がソファに寛いで座っていた。

「殿下と顔合わせは終わったのかしら?」

銀色の髪の毛をした綺麗な女性が私に問いかけてきた。おそらく私を産んだ人なのだろう。
それなのに、母親に会えたという喜びは全くなかった。
血の繋がった家族を目の前にしても私の心は恐ろしいくらいに凪いでいた。

「はい」

無視したい気持ちを抑えて返事をすると、桃色の髪の毛をした少女が悲しそうな顔をして、銀色の髪の毛をした女性に声をかけた。

「お母さま、私、やっぱり申し訳ないですわ。いくら平民の母親から生まれたとはいえ、殿下も王族の血を引いておりますでしょう?こんなにも醜いお姉さまが婚約者だなんて」

「あら、必要のない彼にはこの娘が相応しいわ。ルシンダ。貴女は養子だけれどとても大切な娘よ。あんな取るに足らない男と結婚なんてさせないわ」

「そうだ。ヘンウッド家の汚点を引き取ってくれる男がいて本当によかった」

男性は二人に微笑む。

「お前を産んだことが人生の汚点よ。早く出ていきなさい」

三人に散々なじられて私は部屋から追い出された。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】ずっと、ずっとあなたを愛していました 〜後悔も、懺悔も今更いりません〜

高瀬船
恋愛
リスティアナ・メイブルムには二歳年上の婚約者が居る。 婚約者は、国の王太子で穏やかで優しく、婚約は王命ではあったが仲睦まじく関係を築けていた。 それなのに、突然ある日婚約者である王太子からは土下座をされ、婚約を解消して欲しいと願われる。 何故、そんな事に。 優しく微笑むその笑顔を向ける先は確かに自分に向けられていたのに。 婚約者として確かに大切にされていたのに何故こうなってしまったのか。 リスティアナの思いとは裏腹に、ある時期からリスティアナに悪い噂が立ち始める。 悪い噂が立つ事など何もしていないのにも関わらず、リスティアナは次第に学園で、夜会で、孤立していく。

【完結】「私は善意に殺された」

まほりろ
恋愛
筆頭公爵家の娘である私が、母親は身分が低い王太子殿下の後ろ盾になるため、彼の婚約者になるのは自然な流れだった。 誰もが私が王太子妃になると信じて疑わなかった。 私も殿下と婚約してから一度も、彼との結婚を疑ったことはない。 だが殿下が病に倒れ、その治療のため異世界から聖女が召喚され二人が愛し合ったことで……全ての運命が狂い出す。 どなたにも悪意はなかった……私が不運な星の下に生まれた……ただそれだけ。 ※無断転載を禁止します。 ※朗読動画の無断配信も禁止します。 ※他サイトにも投稿中。 ※表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。 「Copyright(C)2022-九頭竜坂まほろん」 ※小説家になろうにて2022年11月19日昼、日間異世界恋愛ランキング38位、総合59位まで上がった作品です!

【完結】婚約破棄、その後の話を誰も知らない

あめとおと
恋愛
奇跡によって病を癒す存在――聖女。 王国は長年、その力にすべてを委ねてきた。 だがある日、 誰の目にも明らかな「失敗」が起きる。 奇跡は、止まった。 城は動揺し、事実を隠し、 責任を聖女ひとりに押しつけようとする。 民は疑い、祈りは静かに現実へと向かっていった。 一方、かつて「悪役」として追放された令嬢は、 奇跡が失われる“その日”に備え、 治癒に頼らない世界を着々と整えていた。 聖女は象徴となり、城は主導権を失う。 奇跡に縋った者たちは、 何も奪われず、ただ立場を失った。 選ばれなかった者が、世界を救っただけの話。 ――これは、 聖女でも、英雄でもない 「悪役令嬢」が勝ち残る物語。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

婚約破棄したその場から、ざまぁは始まっていました

ふわふわ
恋愛
王国随一の名門、アルファルド公爵家の令嬢シャウラは、 ある日、第一王子アセルスから一方的に婚約を破棄される。 理由はただ一つ―― 「平民出身の聖女と婚約するため」。 だが、その“婚約破棄したその場”で、ざまぁはすでに始まっていた。 シャウラは泣かず、怒らず、抗議もしない。 ただ静かに席を立っただけ。 それだけで―― 王国最大派閥アルファルド派は王子への支持を撤回し、 王国最大の商会は資金提供を打ち切り、 王太子候補だったアセルスは、政治と経済の両方を失っていく。 一方シャウラは、何もしていない。 復讐もしない。断罪もしない。 平穏な日常を送りながら、無自覚のまま派閥の結束を保ち続ける。 そして王国は、 “王太子を立てない”という前代未聞の選択をし、 聡明な第一王女マリーが女王として即位する――。 誰かを裁くことなく、 誰かを蹴落とすことなく、 ただ「席を立った」者だけが、最後まで穏やかでいられた。 これは、 婚約破棄から始まる―― 静かで、上品で、取り返しのつかないざまぁの物語。 「私は何もしていませんわ」 それが、最強の勝利だった。

自業自得って言葉、知ってますか? 私をいじめていたのはあなたですよね?

長岡更紗
恋愛
庶民聖女の私をいじめてくる、貴族聖女のニコレット。 王子の婚約者を決める舞踏会に出ると、 「卑しい庶民聖女ね。王子妃になりたいがためにそのドレスも盗んできたそうじゃないの」 あることないこと言われて、我慢の限界! 絶対にあなたなんかに王子様は渡さない! これは一生懸命生きる人が報われ、悪さをする人は報いを受ける、勧善懲悪のシンデレラストーリー! *旧タイトルは『灰かぶり聖女は冷徹王子のお気に入り 〜自業自得って言葉、知ってますか? 私をいじめていたのは公爵令嬢、あなたですよ〜』です。 *小説家になろうでも掲載しています。

【完結】愛したあなたは本当に愛する人と幸せになって下さい

高瀬船
恋愛
伯爵家のティアーリア・クランディアは公爵家嫡男、クライヴ・ディー・アウサンドラと婚約秒読みの段階であった。 だが、ティアーリアはある日クライヴと彼の従者二人が話している所に出くわし、聞いてしまう。 クライヴが本当に婚約したかったのはティアーリアの妹のラティリナであったと。 ショックを受けるティアーリアだったが、愛する彼の為自分は身を引く事を決意した。 【誤字脱字のご報告ありがとうございます!小っ恥ずかしい誤字のご報告ありがとうございます!個別にご返信出来ておらず申し訳ございません( •́ •̀ )】

婚約破棄された聖女は、愛する恋人との思い出を消すことにした。

石河 翠
恋愛
婚約者である王太子に興味がないと評判の聖女ダナは、冷たい女との結婚は無理だと婚約破棄されてしまう。国外追放となった彼女を助けたのは、美貌の魔術師サリバンだった。 やがて恋人同士になった二人。ある夜、改まったサリバンに呼び出され求婚かと期待したが、彼はダナに自分の願いを叶えてほしいと言ってきた。彼は、ダナが大事な思い出と引き換えに願いを叶えることができる聖女だと知っていたのだ。 失望したダナは思い出を捨てるためにサリバンの願いを叶えることにする。ところがサリバンの願いの内容を知った彼女は彼を幸せにするため賭けに出る。 愛するひとの幸せを願ったヒロインと、世界の平和を願ったヒーローの恋物語。 ハッピーエンドです。 この作品は、他サイトにも投稿しております。 表紙絵は写真ACより、チョコラテさまの作品(写真のID:4463267)をお借りしています。

処理中です...