愛されていたなんて思いもしませんでした

ありがとうございました。さようなら

文字の大きさ
7 / 8

7

しおりを挟む
7

 こうして、私たちは婚約することになった。
 この件で、コリンダがかなり腹を立てていて、何度か詰め寄られることがあったが、アクセルが間に入ってくれたおかげで、何も言われなくなっていった。
 私たちの関係は良好で、友人にはなれたような気がする。
 貴族が集う学園で過ごすのは不安だったが、杞憂に終わった。
 第一王子ともいい関係を結ぶ事ができたし、ヒロインとも友人になれた。
 両親も悪に手を染めることもなく、当然私もそうだ。
 断罪される事なく、私は18歳を迎えた。

 誓約書通り、アクセルと婚約を解消して屋敷に帰ると、前触れもなく一人の男が屋敷にやってきた。

「ヴァイオレット!アイツと婚約を解消したのか!?」

 やってきたのは、友人でもある第一王子のウィングだ。
 
「なんで、誰にも言ってないのにすでに知っているのよ」

 婚約を解消したのはつい先ほどだというのに、なぜ、彼は知っているのか。

「企業秘密だ」

「どんな秘密よ」

 もし、そんな企業があるなら国営の企業なのだろうか、少し恐ろしい。

「なあ、アイツと婚約を解消したって事はフリーなんだろ?フラれて寂しかったら俺がいるぞ」

 慰めているつもりなのか、傷口に塩を塗りたくっているのか判別はつかない。
 純粋な優しさなら言葉を選ぶべきだ。
 気になる事は円満解消だというのに、なぜ、私がフラれた前提なのだろうか。酷い。

「……フラれた前提なのね」

「俺と婚約を……」

 ウィングが何か言いかけたところで、一人の少女が割って入ってきた。

「その婚約ちょっと待った!」

 ヒロインのローズだ。
 彼女とは親友だ。
 なぜかわからないけれど、私がアクセルとの婚約を解消したことを知っているような気がした。

「私がいますわよ」

 ローズはさも当然のように私の婚約者候補に名乗りをあげるけれど、この国では同性婚は許されていなかった気がする。

「クソ、いいところだったのに!てか、女同士の婚約はこの国では認められていないぞ!」

「愛の形は十把一絡げですわ。私がヴァイオレット様を幸せにします!」

 ウィングの指摘に、ローズはノンノン!と人差し指を振りそう答える。

「十人十色じゃなくて?」

「愛の上ではそんな些細なこと重要じゃありません……!」

 そこ、重要じゃないのか。

「このままでは平行線のままだ。とりあえず、俺と婚約しよう」

「いいえ、私とです。気がついたら垂直に交わるかもしれません。とりあえず婚約しましょう」

 この二人の存在がすでに平行線だ。
 本ではくっつくはずだったのに、仲がいいのか悪いのか、こういった謎の喧嘩をする。
 見ているだけなら微笑ましいので別にいいのだけれど。

 気がついたら日が暮れて、二人はなぜか私の屋敷で夕食を食べて帰って行った。

 親友というのは、きっとこんな感じなのだろう。
 二人の顔を見ると少しだけ元気が出た気がした。

 長い付き合いを精算するという事は、それだけで疲れてしまうものだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

すれ違ってしまった恋

秋風 爽籟
恋愛
別れてから何年も経って大切だと気が付いた… それでも、いつか戻れると思っていた… でも現実は厳しく、すれ違ってばかり…

たとえ愛がなくても、あなたのそばにいられるのなら

魚谷
恋愛
ヴェルンハイム伯爵家の私生児ハイネは家の借金のため、両親によって資産家のエッケン侯爵の愛人になることを強いられようとしていた。 ハイネは耐えきれず家を飛び出し、幼馴染みで初恋のアーサーの元に向かい、彼に抱いてほしいと望んだ。 男性を知らないハイネは、エッケンとの結婚が避けられないのであれば、せめて想い人であるアーサーに初めてを捧げたかった。 アーサーは事情を知るや、ハイネに契約結婚を提案する。 伯爵家の借金を肩代わりする代わりに、自分と結婚し、跡継ぎを産め、と。 アーサーは多くの女性たちと浮名を流し、子どもの頃とは大きく違っていたが、今も想いを寄せる相手であることに変わりは無かった。ハイネはアーサーとの契約結婚を受け入れる。 ※他のサイトにも投稿しています

【完結】愛する人はあの人の代わりに私を抱く

紬あおい
恋愛
年上の優しい婚約者は、叶わなかった過去の恋人の代わりに私を抱く。気付かない振りが我慢の限界を超えた時、私は………そして、愛する婚約者や家族達は………悔いのない人生を送れましたか?

【完結】私の愛する人は、あなただけなのだから

よどら文鳥
恋愛
 私ヒマリ=ファールドとレン=ジェイムスは、小さい頃から仲が良かった。  五年前からは恋仲になり、その後両親をなんとか説得して婚約まで発展した。  私たちは相思相愛で理想のカップルと言えるほど良い関係だと思っていた。  だが、レンからいきなり婚約破棄して欲しいと言われてしまう。 「俺には最愛の女性がいる。その人の幸せを第一に考えている」  この言葉を聞いて涙を流しながらその場を去る。  あれほど酷いことを言われってしまったのに、私はそれでもレンのことばかり考えてしまっている。  婚約破棄された当日、ギャレット=メルトラ第二王子殿下から縁談の話が来ていることをお父様から聞く。  両親は恋人ごっこなど終わりにして王子と結婚しろと強く言われてしまう。  だが、それでも私の心の中には……。 ※冒頭はざまぁっぽいですが、ざまぁがメインではありません。 ※第一話投稿の段階で完結まで全て書き終えていますので、途中で更新が止まることはありませんのでご安心ください。

愛されないと吹っ切れたら騎士の旦那様が豹変しました

蜂蜜あやね
恋愛
隣国オデッセアから嫁いできたマリーは次期公爵レオンの妻となる。初夜は真っ暗闇の中で。 そしてその初夜以降レオンはマリーを1年半もの長い間抱くこともしなかった。 どんなに求めても無視され続ける日々についにマリーの糸はプツリと切れる。 離縁するならレオンの方から、私の方からは離縁は絶対にしない。負けたくない! 夫を諦めて吹っ切れた妻と妻のもう一つの姿に惹かれていく夫の遠回り恋愛(結婚)ストーリー ※本作には、性的行為やそれに準ずる描写、ならびに一部に性加害的・非合意的と受け取れる表現が含まれます。苦手な方はご注意ください。 ※ムーンライトノベルズでも投稿している同一作品です。

届かぬ温もり

HARUKA
恋愛
夫には忘れられない人がいた。それを知りながら、私は彼のそばにいたかった。愛することで自分を捨て、夫の隣にいることを選んだ私。だけど、その恋に答えはなかった。すべてを失いかけた私が選んだのは、彼から離れ、自分自身の人生を取り戻す道だった····· ◆◇◆◇◆◇◆ 読んでくださり感謝いたします。 すべてフィクションです。不快に思われた方は読むのを止めて下さい。 ゆっくり更新していきます。 誤字脱字も見つけ次第直していきます。 よろしくお願いします。

あなたが願った結婚だから

Rj
恋愛
家族の反対を押し切り歌手になるためニューヨークに来たリナ・タッカーは歌手になることを応援してくれる叔母の家に世話になっていた。歌手になることを誰よりも後押ししてくれる従姉妹であり親友でもあるシドニーが婚約者のマーカスとの結婚間際に亡くなってしまう。リナとマーカスはシドニーの最後の願いを叶えるために結婚する。

泣き虫殿下はクールを装いすぎている

みるくコーヒー
恋愛
アーリア王国の有名な王太子、レイモンド・アーリアは容姿端麗、頭脳明晰、クールで飄々としていてどこまでも完璧な王太子である。『クールで完璧な王太子』という評判を持つレイモンドは実のところかなりの泣き虫であった。そんな彼の婚約者である子爵家の令嬢、エマ・シャロルは王太子妃に自分は相応しくないと感じていた。「今日こそはハッキリ言うのよ」と、固い決意と共にレイモンドへ『婚約解消』を迫るために歴史深い王城でコツコツと歩みを進めるのだった。

処理中です...