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レイリー様の屋敷へと連れられた私は、執事やこちらでお世話をしてくれる予定の侍女から挨拶を受けた。
「マニラです。よろしくお願いします。あの、お嬢様の身支度を整えてよろしいでしょうか?」
先ほど、エレナ王女から散々貶された私は、整えたところで意味があるのかと一瞬だけ思った。
しかし、マニラからの好意を無碍にもできないのでお願いする事にした。
「はい。お願いします」
マニラは、私のことをじーっと見つめて、ポツリと呟いた。
「……うん、磨けば輝く原石ね」
「え?」
ポカンとしたのは一瞬だけ。
次の瞬間には、悪人のような顔をしたマニラに鏡台の前に座らされていた。
「やりますわよぉお!」
ギラついた目をしたマニラが威嚇するように叫び声を上げた。
「ぎ、ぎゃぁあぁあぁ!」
私は、熊と対峙した時よりも怖くて思わず悲鳴を上げてしまった。
この女は手練れだ!分かったのはそのくらい。
そして、マニラは手練れだった。私の想像したものとは違う方面の。
鏡に映った私は、信じられないほど綺麗だった。
エレナ王女のお茶会に行った時よりもずっと。
「行きますよ!レイリー様に今の姿をお見せするんです!きっと、惚れ直しますよ」
マニラに急かされるようにレイリー様のいる部屋へと向かった。
「レイリー様、ポーリーンお嬢様のお支度が完了しました」
マニラはそう宣言すると、レイリー様の目の前に私をポンと出した。
「……ポーリーン?」
レイリー様はしばらく沈黙した後。確認するかのように私の名前を呼んだ。
「そうですけど」
私だ。私以外に他ならないのに、彼は何を言っているのか。
「本当にポーリーン?ちゃんとポーリーンだけど、とてもお淑やかに見えるんだが」
レイリー様は何を言っているのか。
とてもお淑やかに見える。と言い切るあたり私のことをとんでもないじゃじゃ馬か、鉄砲玉か何かだと勘違いしているのではないか。
「あの、私を何だと思ってるんですか?」
レイリー様に思わず聞き返してしまう。
「い、いや、何でも」
レイリー様は気まずそうに、自分の言ったことを引っ込めた。
しかし、納得はできない。
「そうだ。僕の母さんに会ってもらいたいんだけど」
レイリー様が唐突にそんなことを言い出すから、私は驚いて固まってしまった。
「えっ」
いや、考えてみればお屋敷にお邪魔しているのだから挨拶は当然だ。
しない方が無礼になる。
「母さんに、シャペロンをお願いしたんだ」
シャペロンというワードに、私はレイリー様が本気なのだと改めて思い知る。
でも、考えてみてほしい。
レイリー様のお母さまということは、つまり前公爵夫人だ。
そういった高貴な身分の女性がシャペロンになってくれるという事は、貴族の少女からしたら夢のような話ではないだろうか。
そのような栄誉ある立場を田舎からやってきた肥くさい娘が貰ってもいいのだろうか。
「あの、やっぱり私って場違いなんじゃ」
段々と私は自分の置かれている立場を理解していた。
田舎の貧乏男爵の娘だ。
前公爵夫人がシャペロンだなんて、あまりにも場違いなのではないか。
「そんな事はない!」
レイリー様は私の弱音を強く否定した。
「君は誰よりも変わっていて、……いや、その、ユニークでとても魅力的な人だよ。」
今、変わっているって言ったよね。
とはいえ、それでも彼なりに不器用なフォローをしてくれたことが嬉しかった。
「ほら、行こう。母さんが待ってる」
レイリー様が私を四阿まで連れてきてくれた。
そこには、青銅色の髪の綺麗な女性が優雅にお茶を飲んでいた。
レイリー様の屋敷へと連れられた私は、執事やこちらでお世話をしてくれる予定の侍女から挨拶を受けた。
「マニラです。よろしくお願いします。あの、お嬢様の身支度を整えてよろしいでしょうか?」
先ほど、エレナ王女から散々貶された私は、整えたところで意味があるのかと一瞬だけ思った。
しかし、マニラからの好意を無碍にもできないのでお願いする事にした。
「はい。お願いします」
マニラは、私のことをじーっと見つめて、ポツリと呟いた。
「……うん、磨けば輝く原石ね」
「え?」
ポカンとしたのは一瞬だけ。
次の瞬間には、悪人のような顔をしたマニラに鏡台の前に座らされていた。
「やりますわよぉお!」
ギラついた目をしたマニラが威嚇するように叫び声を上げた。
「ぎ、ぎゃぁあぁあぁ!」
私は、熊と対峙した時よりも怖くて思わず悲鳴を上げてしまった。
この女は手練れだ!分かったのはそのくらい。
そして、マニラは手練れだった。私の想像したものとは違う方面の。
鏡に映った私は、信じられないほど綺麗だった。
エレナ王女のお茶会に行った時よりもずっと。
「行きますよ!レイリー様に今の姿をお見せするんです!きっと、惚れ直しますよ」
マニラに急かされるようにレイリー様のいる部屋へと向かった。
「レイリー様、ポーリーンお嬢様のお支度が完了しました」
マニラはそう宣言すると、レイリー様の目の前に私をポンと出した。
「……ポーリーン?」
レイリー様はしばらく沈黙した後。確認するかのように私の名前を呼んだ。
「そうですけど」
私だ。私以外に他ならないのに、彼は何を言っているのか。
「本当にポーリーン?ちゃんとポーリーンだけど、とてもお淑やかに見えるんだが」
レイリー様は何を言っているのか。
とてもお淑やかに見える。と言い切るあたり私のことをとんでもないじゃじゃ馬か、鉄砲玉か何かだと勘違いしているのではないか。
「あの、私を何だと思ってるんですか?」
レイリー様に思わず聞き返してしまう。
「い、いや、何でも」
レイリー様は気まずそうに、自分の言ったことを引っ込めた。
しかし、納得はできない。
「そうだ。僕の母さんに会ってもらいたいんだけど」
レイリー様が唐突にそんなことを言い出すから、私は驚いて固まってしまった。
「えっ」
いや、考えてみればお屋敷にお邪魔しているのだから挨拶は当然だ。
しない方が無礼になる。
「母さんに、シャペロンをお願いしたんだ」
シャペロンというワードに、私はレイリー様が本気なのだと改めて思い知る。
でも、考えてみてほしい。
レイリー様のお母さまということは、つまり前公爵夫人だ。
そういった高貴な身分の女性がシャペロンになってくれるという事は、貴族の少女からしたら夢のような話ではないだろうか。
そのような栄誉ある立場を田舎からやってきた肥くさい娘が貰ってもいいのだろうか。
「あの、やっぱり私って場違いなんじゃ」
段々と私は自分の置かれている立場を理解していた。
田舎の貧乏男爵の娘だ。
前公爵夫人がシャペロンだなんて、あまりにも場違いなのではないか。
「そんな事はない!」
レイリー様は私の弱音を強く否定した。
「君は誰よりも変わっていて、……いや、その、ユニークでとても魅力的な人だよ。」
今、変わっているって言ったよね。
とはいえ、それでも彼なりに不器用なフォローをしてくれたことが嬉しかった。
「ほら、行こう。母さんが待ってる」
レイリー様が私を四阿まで連れてきてくれた。
そこには、青銅色の髪の綺麗な女性が優雅にお茶を飲んでいた。
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