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「聞いてくれるかしら?」
前公爵夫人は咳払いした。
「3年前の話よ。今まで浮いた話が全くない息子に恋人ができたって言われてね。私はすごくうれしかったわ。それも、この国で評判のあの方だったから」
前公爵夫人の話からエレナ王女の事だろう。と容易に想像がついた。
「……」
「見ないでくれるか?」
つい、無自覚にレイリー様の顔を見てしまい。咎められた。
「でも、あろうことかこの子の浮気で破局になったって大騒ぎになったのよ」
「……」
「いや、頼むから見ないでくれ」
また見てしまうと、レイリー様が気まずそうな顔で私に注意してきた。
「何が腹が立つかって、この子はそんなことをしない子なのよ!」
レイリー様の人柄を見ていると、とてもではないが、そんなことをしそうな人には見えなかった。
前公爵夫人は、レイリーを庇うというよりも本当に信じているように見えて、二人の関係の良さが伺い知れた。
「事情を聞いたら、とんでもないことを言い出したのよ……契約恋愛だから。気にしなくていいって」
ん、それってどういうことなのだろうか。
「……」
「見るなって!」
また無意識にレイリー様のことを見ていたようで、大きな声で注意された。
「ちゃんと話してもらえますか?」
レイリー様は、叱られた子供のような顔をして口を開いた。
「僕は昔から結婚願望がなくてね。令嬢からのアプローチにうんざりしていたんだ。結婚願望がないのはそのせいなんだが、そこにエレナ王女から契約恋愛の話が出て乗ったんだよ。向こうも自由恋愛したいからってさ」
新聞にも載った大恋愛は、実は作られていたものだったのか。
私は驚いた。
しかし、レイリー様を見ていると、エレナ王女が好みのタイプのようには思えなかった。
……どちらかというと、苦手なタイプのように見える。
「で、エレナ王女が結婚適齢期だからそろそろ契約を解消しようって話をしたら、僕と結婚するからそのつもりはないって言われてね」
「そこからはご察しの通りよ」
前公爵夫人が、苦笑いを浮かべた。
エレナ王女がレイリー様の悪い噂を流したのだ。
彼女の新しい恋人のへなちょこ伯爵は、契約解消の時にたまたま交際していただけなのだろう。
そんな気がした。
「レイリー様は何も悪くないじゃないですか!」
「まあ、エレナ王女の話に乗った僕が悪かったんだよ」
「……」
確かにそれはあるが。
そこまで彼だけが悪いとは思えなかった。
「だからね。デビュタントをあの女が新しい男と目立つ舞台にはしたくないのよね」
前公爵夫人の目が光った。
なんだろう。巻き込まれているような気がした。
いや、すでに巻き込まれているのかもしれない。
「お金のことは気にしなくていいわ。私がプロデュースしてあげるから」
「は、はあ」
有難いお言葉をもらうけれど、だからといってなんでも買ってもらおうなどと図々しい事はできない。
それに、母から渡されたデビュタントのドレスもある。
「でも、きっと大切にしている着たいドレスがあるでしょう?持ってきたものを見せてくれるかしら?」
色々とやりたい事はあるけど、我欲は通らずあくまで私の気持ちに寄り添って考えてくれる前公爵夫人に感謝だ。
言われた通りにデビュタントで着る予定のドレスを見せると、「貴女のお母さんはお買い物上手ね」と前公爵夫人は微笑んだ。
「こういったものって飽きが来ないデザインなのよ。少しリメイクしたり、アクセサリーで差を出すのよ。任せなさい」
きっと、レイリー様の優しさはお母さんによく似たからなのだろうと私は思った。
「聞いてくれるかしら?」
前公爵夫人は咳払いした。
「3年前の話よ。今まで浮いた話が全くない息子に恋人ができたって言われてね。私はすごくうれしかったわ。それも、この国で評判のあの方だったから」
前公爵夫人の話からエレナ王女の事だろう。と容易に想像がついた。
「……」
「見ないでくれるか?」
つい、無自覚にレイリー様の顔を見てしまい。咎められた。
「でも、あろうことかこの子の浮気で破局になったって大騒ぎになったのよ」
「……」
「いや、頼むから見ないでくれ」
また見てしまうと、レイリー様が気まずそうな顔で私に注意してきた。
「何が腹が立つかって、この子はそんなことをしない子なのよ!」
レイリー様の人柄を見ていると、とてもではないが、そんなことをしそうな人には見えなかった。
前公爵夫人は、レイリーを庇うというよりも本当に信じているように見えて、二人の関係の良さが伺い知れた。
「事情を聞いたら、とんでもないことを言い出したのよ……契約恋愛だから。気にしなくていいって」
ん、それってどういうことなのだろうか。
「……」
「見るなって!」
また無意識にレイリー様のことを見ていたようで、大きな声で注意された。
「ちゃんと話してもらえますか?」
レイリー様は、叱られた子供のような顔をして口を開いた。
「僕は昔から結婚願望がなくてね。令嬢からのアプローチにうんざりしていたんだ。結婚願望がないのはそのせいなんだが、そこにエレナ王女から契約恋愛の話が出て乗ったんだよ。向こうも自由恋愛したいからってさ」
新聞にも載った大恋愛は、実は作られていたものだったのか。
私は驚いた。
しかし、レイリー様を見ていると、エレナ王女が好みのタイプのようには思えなかった。
……どちらかというと、苦手なタイプのように見える。
「で、エレナ王女が結婚適齢期だからそろそろ契約を解消しようって話をしたら、僕と結婚するからそのつもりはないって言われてね」
「そこからはご察しの通りよ」
前公爵夫人が、苦笑いを浮かべた。
エレナ王女がレイリー様の悪い噂を流したのだ。
彼女の新しい恋人のへなちょこ伯爵は、契約解消の時にたまたま交際していただけなのだろう。
そんな気がした。
「レイリー様は何も悪くないじゃないですか!」
「まあ、エレナ王女の話に乗った僕が悪かったんだよ」
「……」
確かにそれはあるが。
そこまで彼だけが悪いとは思えなかった。
「だからね。デビュタントをあの女が新しい男と目立つ舞台にはしたくないのよね」
前公爵夫人の目が光った。
なんだろう。巻き込まれているような気がした。
いや、すでに巻き込まれているのかもしれない。
「お金のことは気にしなくていいわ。私がプロデュースしてあげるから」
「は、はあ」
有難いお言葉をもらうけれど、だからといってなんでも買ってもらおうなどと図々しい事はできない。
それに、母から渡されたデビュタントのドレスもある。
「でも、きっと大切にしている着たいドレスがあるでしょう?持ってきたものを見せてくれるかしら?」
色々とやりたい事はあるけど、我欲は通らずあくまで私の気持ちに寄り添って考えてくれる前公爵夫人に感謝だ。
言われた通りにデビュタントで着る予定のドレスを見せると、「貴女のお母さんはお買い物上手ね」と前公爵夫人は微笑んだ。
「こういったものって飽きが来ないデザインなのよ。少しリメイクしたり、アクセサリーで差を出すのよ。任せなさい」
きっと、レイリー様の優しさはお母さんによく似たからなのだろうと私は思った。
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