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落ち着かない
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泣き疲れて眠ったはずなのに目覚めはとても心地よいものだった。
目を開けて、まだぼんやりとする頭で起き上がると、見計らったように姫川がやってきた。
「おはよう」
甘く優しい笑みに、私は安堵した。
そして、ある事に気がつく。
もしかして、寝顔見られてた……!?
「おはようございます。あの、寝顔変じゃなかったですか?」
「ふふ、何それ、可愛かったですよ」
姫川は、私の心配なんて気にならない様子で笑っている。
これが恋のフィルターというやつなのか。
「そ、そう」
本当にそうだったのかと聞いたところで、同じ答えしか返ってこない気がした。
「準備しますか、そろそろチェックアウトの時間なので」
「あ、はい」
身支度を整えながらあることに気がつく。
ワンピース完全にしわくちゃだわ、ロングカーディガンを羽織ればなんとか誤魔化せそう。
「朝食食べたら、僕の部屋に来ますか?」
姫川の申し出にありがたいと思いつつ、彼の都合もあるだろうにお邪魔して問題はないのかと心配になる。
そもそも、最近まで忙しかったと話していたし、休みたいんじゃないかな。
「えっと、お邪魔しても大丈夫なんですか?」
「昨日みたいなことはしませんよ」
「そういう意味じゃなくて、せっかくのお休みなのに疲れてませんか?」
「いや、全然、……麗さんがいるならもっと元気になれそう」
「……」
心配の必要なさそうだ。
ここまでのあからさまなアプローチに少し戸惑ってしまう。
「すぐ近くに、車あるんで、行きましょうか」
姫川に言われるままにホテルから出ると、太陽が眩しい。
思わず目を細めると、姫川が声をかけてきた。
「モーニング行きませんか?飲み物を頼むとセットで付いてくるところです」
「行くわ」
私が迷わず返事をすると、姫川は微笑ましいものを見るような目を向けてきた。
「車こっちです」
姫川の大きな手が私の手を掴む。
その手の温かさに、じんわりと身体が熱くなる。
ああ、やっぱり、姫川さんの事好きなんだ。
それを、再認識する。早く言わなきゃいけない。
言葉が足りなくてすれ違ったのなら、そうなる前に口にするべきだと思ったから。
……それに、こんなに素敵な人を待たせた結果、他の人に掻っ攫われるなんて耐えきれないもの。
「……」
そう意気込みながら、姫川の車に乗り込む。
けれど、言おう。言おうと思っても、怖気付いてしまってなかなか口にすることができない。
「……」
無言で唸っていると、姫川が心配してきた。
「大丈夫?救急車呼ぶ……?」
よほど私の調子が悪そうに見えたのか、車を停車させて慌てて聞いてきた。
「大丈夫。何でもないの。本当に。お腹空きすぎただけだから」
食いしん坊な発言で誤魔化して、恥ずかしくなった。
なんか、こう、スマートな言い方あったでしょうよ……!
「そっか、途中で軽くつまめる物買おうか?」
姫川に気を遣われて恥ずかしい。
「大丈夫」
羞恥に我慢して、ようやくモーニングが美味しいお店に到着した。
「行きますか」
内心とても慌てている私とは違い、姫川は落ち着いている。
告白の返事待ちだとは思えないほどの余裕っぷりだ。
なんとなくだけれど、言いたいことを言ってスッキリしているようにも見える。
この余裕は恋愛経験の差なのかしら。
お店は、落ち着いた印象の喫茶店だった。
店の前にある年代物のベンチがとても雰囲気があって素敵だと思った。
店員さんも気さくな印象で、おすすめはフレンチトーストだと教えてくれたのでそれにした。
「あ、美味しい」
フレンチトーストは、自然な甘さで食べやすかった。
色々と話したいことがあるのに、言葉が出てこない。
これじゃあ、姫川さんが気まずく思ってしまうかもしれないわ。
何か言おうとしても何も考え付かなくて、焦りだけが募っていく。
チラリと姫川を見ると、何かに気がついたようにすくりと笑った。
その笑みがとても綺麗で、私は呼吸する事も忘れてしまう。
「麗さん、寝癖ついてる。前髪少しはねてるよ」
姫川の手が私の前髪に伸びて、少しだけ指先が額に触れた。
途端に顔が熱くなる。
「……あ、気が付かなかった」
「僕の部屋で直すといいよ」
姫川は、私の顔が赤くなっている事に気がついているのに、そんな様子はおくびにもださない。
「ありがとう」
部屋に着いて、二人きりになっていい雰囲気になったら絶対に言おう。
とりあえず、変な行動をして救急車を呼ばれないように気をつけないと。
そうこう考えている間に喫茶店から出て、ベンチに座りなんとなくツーショット写真を撮ると車に乗り込む。
頭の中は、ずっと、姫川の部屋に入りいい雰囲気になったら好きだというんだ。と、いうことだけがぐるぐると回っていた。
絶対に今日のうちに気持ちを伝えるのだと自分に決めて、気取られないように心の中で鼻息を荒くさせる。
「着きましたよ」
姫川に声をかけられて、私は現実に戻った。
どうやら、ずっと、想いを伝えることばかりを考えていたみたいだ。
部屋に着いたら好きだって言うのよ……!
そう言い聞かせた瞬間だった。
「姫川さん、好きです!」
するりと私の口から姫川への想いがこぼれ出ていた。
ムードも何もない。失敗した。と、思ったが、言ったことを取り消しすることなんてできない。
いい雰囲気って言ったよね。なんで今なの!?
空気の読めない自分に内心で唇を噛み締めていると、
姫川の大きな手が私の肩を掴んだ。
「本当に……あ……んな事した後なのに、本当に……嘘じゃない?」
姫川の必死の確認に、私はこくりと頷いた。
「……ありがとう、凄く嬉しい」
姫川の顔がみるみる赤くなっていく。
「部屋に入ろう」
姫川はそれだけ言って、何かに追い立てられるように部屋へと私たちは向かった。
目を開けて、まだぼんやりとする頭で起き上がると、見計らったように姫川がやってきた。
「おはよう」
甘く優しい笑みに、私は安堵した。
そして、ある事に気がつく。
もしかして、寝顔見られてた……!?
「おはようございます。あの、寝顔変じゃなかったですか?」
「ふふ、何それ、可愛かったですよ」
姫川は、私の心配なんて気にならない様子で笑っている。
これが恋のフィルターというやつなのか。
「そ、そう」
本当にそうだったのかと聞いたところで、同じ答えしか返ってこない気がした。
「準備しますか、そろそろチェックアウトの時間なので」
「あ、はい」
身支度を整えながらあることに気がつく。
ワンピース完全にしわくちゃだわ、ロングカーディガンを羽織ればなんとか誤魔化せそう。
「朝食食べたら、僕の部屋に来ますか?」
姫川の申し出にありがたいと思いつつ、彼の都合もあるだろうにお邪魔して問題はないのかと心配になる。
そもそも、最近まで忙しかったと話していたし、休みたいんじゃないかな。
「えっと、お邪魔しても大丈夫なんですか?」
「昨日みたいなことはしませんよ」
「そういう意味じゃなくて、せっかくのお休みなのに疲れてませんか?」
「いや、全然、……麗さんがいるならもっと元気になれそう」
「……」
心配の必要なさそうだ。
ここまでのあからさまなアプローチに少し戸惑ってしまう。
「すぐ近くに、車あるんで、行きましょうか」
姫川に言われるままにホテルから出ると、太陽が眩しい。
思わず目を細めると、姫川が声をかけてきた。
「モーニング行きませんか?飲み物を頼むとセットで付いてくるところです」
「行くわ」
私が迷わず返事をすると、姫川は微笑ましいものを見るような目を向けてきた。
「車こっちです」
姫川の大きな手が私の手を掴む。
その手の温かさに、じんわりと身体が熱くなる。
ああ、やっぱり、姫川さんの事好きなんだ。
それを、再認識する。早く言わなきゃいけない。
言葉が足りなくてすれ違ったのなら、そうなる前に口にするべきだと思ったから。
……それに、こんなに素敵な人を待たせた結果、他の人に掻っ攫われるなんて耐えきれないもの。
「……」
そう意気込みながら、姫川の車に乗り込む。
けれど、言おう。言おうと思っても、怖気付いてしまってなかなか口にすることができない。
「……」
無言で唸っていると、姫川が心配してきた。
「大丈夫?救急車呼ぶ……?」
よほど私の調子が悪そうに見えたのか、車を停車させて慌てて聞いてきた。
「大丈夫。何でもないの。本当に。お腹空きすぎただけだから」
食いしん坊な発言で誤魔化して、恥ずかしくなった。
なんか、こう、スマートな言い方あったでしょうよ……!
「そっか、途中で軽くつまめる物買おうか?」
姫川に気を遣われて恥ずかしい。
「大丈夫」
羞恥に我慢して、ようやくモーニングが美味しいお店に到着した。
「行きますか」
内心とても慌てている私とは違い、姫川は落ち着いている。
告白の返事待ちだとは思えないほどの余裕っぷりだ。
なんとなくだけれど、言いたいことを言ってスッキリしているようにも見える。
この余裕は恋愛経験の差なのかしら。
お店は、落ち着いた印象の喫茶店だった。
店の前にある年代物のベンチがとても雰囲気があって素敵だと思った。
店員さんも気さくな印象で、おすすめはフレンチトーストだと教えてくれたのでそれにした。
「あ、美味しい」
フレンチトーストは、自然な甘さで食べやすかった。
色々と話したいことがあるのに、言葉が出てこない。
これじゃあ、姫川さんが気まずく思ってしまうかもしれないわ。
何か言おうとしても何も考え付かなくて、焦りだけが募っていく。
チラリと姫川を見ると、何かに気がついたようにすくりと笑った。
その笑みがとても綺麗で、私は呼吸する事も忘れてしまう。
「麗さん、寝癖ついてる。前髪少しはねてるよ」
姫川の手が私の前髪に伸びて、少しだけ指先が額に触れた。
途端に顔が熱くなる。
「……あ、気が付かなかった」
「僕の部屋で直すといいよ」
姫川は、私の顔が赤くなっている事に気がついているのに、そんな様子はおくびにもださない。
「ありがとう」
部屋に着いて、二人きりになっていい雰囲気になったら絶対に言おう。
とりあえず、変な行動をして救急車を呼ばれないように気をつけないと。
そうこう考えている間に喫茶店から出て、ベンチに座りなんとなくツーショット写真を撮ると車に乗り込む。
頭の中は、ずっと、姫川の部屋に入りいい雰囲気になったら好きだというんだ。と、いうことだけがぐるぐると回っていた。
絶対に今日のうちに気持ちを伝えるのだと自分に決めて、気取られないように心の中で鼻息を荒くさせる。
「着きましたよ」
姫川に声をかけられて、私は現実に戻った。
どうやら、ずっと、想いを伝えることばかりを考えていたみたいだ。
部屋に着いたら好きだって言うのよ……!
そう言い聞かせた瞬間だった。
「姫川さん、好きです!」
するりと私の口から姫川への想いがこぼれ出ていた。
ムードも何もない。失敗した。と、思ったが、言ったことを取り消しすることなんてできない。
いい雰囲気って言ったよね。なんで今なの!?
空気の読めない自分に内心で唇を噛み締めていると、
姫川の大きな手が私の肩を掴んだ。
「本当に……あ……んな事した後なのに、本当に……嘘じゃない?」
姫川の必死の確認に、私はこくりと頷いた。
「……ありがとう、凄く嬉しい」
姫川の顔がみるみる赤くなっていく。
「部屋に入ろう」
姫川はそれだけ言って、何かに追い立てられるように部屋へと私たちは向かった。
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