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リアからの冷徹な注意を受けた私はすぐに元気を取り戻して、親父以外の家族に婚約の報告をする事にした。
ちなみに、家族はクソ漏らし親父と母と尊敬する兄がいる。
ヘタレな親父には任せられない。ということで、兄者はかなり早い段階から跡取りとしての勉強と仕事をしている。
つまり、兄者はしっかりしているのだ。親とは違って。
「兄者、私の婚約が決まった!」
私は兄者の執務室の扉を蹴り開けると、そこにはちょうど母もいた。
走って執務室に入るとリアがさりげなくドアが壊れていないかチェックして、すぐに閉めたのが見えた。
公爵家の唯一の侍女としてそういうところはしっかりとしている。
「……っ」
婚約の報告を受けた二人はというと固まっていた。
信じられないと言わんばかりに私の方を見て、そして、喜びを噛み締めるような顔をした。
「ルビア本当に本当なのか!?その婚約とは結婚を前提とした婚約なのか?」
兄者は、よほど私の婚約が嬉しいのか血迷ったことを聞いてきた。
結婚を前提としない婚約って一体何なんだろう。
「そ、そんなもの好きがいたの?!」
そして、母は失礼の上をいくド失礼な事を私に聞いてきた。
もの好きってなんだよ。
まるで私がとんでもない奴でいまだに婚約者が見つからない。と、言っているみたいに聞こえるじゃないか。
「お母様、そこまで酷い事を言わなくてもいいんじゃない」
兄者ディランは母の失礼極まりない言葉を窘める。
幼い時からそうだったが、彼はいつも私の味方だった。
優しくてしっかり者の兄にも婚約者がいない。
家が貧乏公爵だから、というのもあるとは思うが、絶対に両親のせいだと私は思う。
「お淑やかを私のお腹の中で置き去りにしてきたような子だもの。心配になるのが親心よ」
……何を言っているのだろう。この人は。
この家で一番お淑やかさから掛け離れた野生児は母だというのに。
「はっ、臨月に畑に出たクマ討伐した人に言われたくない」
……母は、生まれてくる性別を間違えたのだと思う。
もし、男だったら傭兵になって英雄と讃えられるような人間になっていたはずだ。
「あの時は、陣痛に耐えながらクマの首を斬り落とすのが大変だったわ」
母はその時の事を思い出し懐かしがった。
臨月の人間がやっていいことではない。
「人がしていい事ではない」
兄者の冷静なツッコミ。私も同じ事を思った。
父はなぜこんな人と結婚したのか、私は理解に苦しむ。
はやり、心が弱いから母が怖くて結婚したのかもしれない。
夫婦喧嘩はいつも母のKO勝ちになるのだ。
心の弱い父のことを思うと、私は一秒だけ気の毒だと思った。
そんなことを考えていると、母は真剣な表情で私の両肩をポンと叩いた。
「ルビア、頑張って化けの皮を被るのよ。結婚するまではなんとか持ち堪えるの……、結婚すれば相手がどれほど後悔してもすぐに離婚なんてできないから」
化けの皮ってなんだろう。
自分ではない別の生き物になって、相手を騙くらかせと言いたいのだろうか。
結婚まで持ち堪えたら相手は逃げられない。と母は考えているのだろうか。
離婚前提でものを話すのはやめてほしい。
「いや、普通のアドバイスじゃないから」
兄者は私の事を思って、母の無茶苦茶なアドバイスを咎めた。
兄にとっては私がちゃんと結婚するまでは、私が結婚できないから不安なのかもしれない。
……ちょっと、自分でも何言ってるのかわからない。
だが、王命の結婚ならばそれが破談になることはあり得ない。
「兄者、安心してくれ!王命だから、絶対に向こうが私の本性に気がついても、婚約破棄とかできないからな!」
私が兄者と母ににっこりと笑って言うと、二人は突然白目を剥いた。
二人とも変顔ゲームでもやっているのか。
程なくして泡を吹く母。
「……それ、もっと、やばいやつ」
変顔から復活した兄が青さを通り越した。今から透けて消えそうな顔色で呟いた。
「なんか言った?」
「ルビア、死ぬまで化けの皮を被り続けるんだ。いいな」
兄者は、手のひらを返した。
しかも、結婚してからも化けの皮を被れ。という無茶苦茶な事を言い出した。
「兄者、目が怖い」
血走った目は、母に首を斬り落とされる寸前の熊のようだった。
もしかしたら、兄は命の危機に瀕しているのかもしれない。
可哀想にそんなに恐ろしい事があるなんて。
「自由に育てたけど、淑女から程遠い子になってしまった……」
母が懺悔した。
黙れ、クマの首を斬り落とすような女には言われたくない。
「とりあえず茶を飲んで黙って余計なことを言わずに笑ってればいいんだろ?」
「それを一生できるのか?」
「顔合わせの時なら誤魔化せると思うけど」
そういえば、婚約は確定しているけど顔合わせはいつするのかしら。
私はそんなことをぼんやりと考えていた。
数日後、フリージア家から顔合わせの日時の打診の手紙が届いたので、一家総出で王都に行くことになった。
パワーバランス
母>兄者>ルビア>犬>親父です
ルビアが兄のことを尊敬している理由は、兄の分のお菓子をくれるからです
このメンツの中で実は常識枠なのはルビアです
リアからの冷徹な注意を受けた私はすぐに元気を取り戻して、親父以外の家族に婚約の報告をする事にした。
ちなみに、家族はクソ漏らし親父と母と尊敬する兄がいる。
ヘタレな親父には任せられない。ということで、兄者はかなり早い段階から跡取りとしての勉強と仕事をしている。
つまり、兄者はしっかりしているのだ。親とは違って。
「兄者、私の婚約が決まった!」
私は兄者の執務室の扉を蹴り開けると、そこにはちょうど母もいた。
走って執務室に入るとリアがさりげなくドアが壊れていないかチェックして、すぐに閉めたのが見えた。
公爵家の唯一の侍女としてそういうところはしっかりとしている。
「……っ」
婚約の報告を受けた二人はというと固まっていた。
信じられないと言わんばかりに私の方を見て、そして、喜びを噛み締めるような顔をした。
「ルビア本当に本当なのか!?その婚約とは結婚を前提とした婚約なのか?」
兄者は、よほど私の婚約が嬉しいのか血迷ったことを聞いてきた。
結婚を前提としない婚約って一体何なんだろう。
「そ、そんなもの好きがいたの?!」
そして、母は失礼の上をいくド失礼な事を私に聞いてきた。
もの好きってなんだよ。
まるで私がとんでもない奴でいまだに婚約者が見つからない。と、言っているみたいに聞こえるじゃないか。
「お母様、そこまで酷い事を言わなくてもいいんじゃない」
兄者ディランは母の失礼極まりない言葉を窘める。
幼い時からそうだったが、彼はいつも私の味方だった。
優しくてしっかり者の兄にも婚約者がいない。
家が貧乏公爵だから、というのもあるとは思うが、絶対に両親のせいだと私は思う。
「お淑やかを私のお腹の中で置き去りにしてきたような子だもの。心配になるのが親心よ」
……何を言っているのだろう。この人は。
この家で一番お淑やかさから掛け離れた野生児は母だというのに。
「はっ、臨月に畑に出たクマ討伐した人に言われたくない」
……母は、生まれてくる性別を間違えたのだと思う。
もし、男だったら傭兵になって英雄と讃えられるような人間になっていたはずだ。
「あの時は、陣痛に耐えながらクマの首を斬り落とすのが大変だったわ」
母はその時の事を思い出し懐かしがった。
臨月の人間がやっていいことではない。
「人がしていい事ではない」
兄者の冷静なツッコミ。私も同じ事を思った。
父はなぜこんな人と結婚したのか、私は理解に苦しむ。
はやり、心が弱いから母が怖くて結婚したのかもしれない。
夫婦喧嘩はいつも母のKO勝ちになるのだ。
心の弱い父のことを思うと、私は一秒だけ気の毒だと思った。
そんなことを考えていると、母は真剣な表情で私の両肩をポンと叩いた。
「ルビア、頑張って化けの皮を被るのよ。結婚するまではなんとか持ち堪えるの……、結婚すれば相手がどれほど後悔してもすぐに離婚なんてできないから」
化けの皮ってなんだろう。
自分ではない別の生き物になって、相手を騙くらかせと言いたいのだろうか。
結婚まで持ち堪えたら相手は逃げられない。と母は考えているのだろうか。
離婚前提でものを話すのはやめてほしい。
「いや、普通のアドバイスじゃないから」
兄者は私の事を思って、母の無茶苦茶なアドバイスを咎めた。
兄にとっては私がちゃんと結婚するまでは、私が結婚できないから不安なのかもしれない。
……ちょっと、自分でも何言ってるのかわからない。
だが、王命の結婚ならばそれが破談になることはあり得ない。
「兄者、安心してくれ!王命だから、絶対に向こうが私の本性に気がついても、婚約破棄とかできないからな!」
私が兄者と母ににっこりと笑って言うと、二人は突然白目を剥いた。
二人とも変顔ゲームでもやっているのか。
程なくして泡を吹く母。
「……それ、もっと、やばいやつ」
変顔から復活した兄が青さを通り越した。今から透けて消えそうな顔色で呟いた。
「なんか言った?」
「ルビア、死ぬまで化けの皮を被り続けるんだ。いいな」
兄者は、手のひらを返した。
しかも、結婚してからも化けの皮を被れ。という無茶苦茶な事を言い出した。
「兄者、目が怖い」
血走った目は、母に首を斬り落とされる寸前の熊のようだった。
もしかしたら、兄は命の危機に瀕しているのかもしれない。
可哀想にそんなに恐ろしい事があるなんて。
「自由に育てたけど、淑女から程遠い子になってしまった……」
母が懺悔した。
黙れ、クマの首を斬り落とすような女には言われたくない。
「とりあえず茶を飲んで黙って余計なことを言わずに笑ってればいいんだろ?」
「それを一生できるのか?」
「顔合わせの時なら誤魔化せると思うけど」
そういえば、婚約は確定しているけど顔合わせはいつするのかしら。
私はそんなことをぼんやりと考えていた。
数日後、フリージア家から顔合わせの日時の打診の手紙が届いたので、一家総出で王都に行くことになった。
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母>兄者>ルビア>犬>親父です
ルビアが兄のことを尊敬している理由は、兄の分のお菓子をくれるからです
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