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逞しき想像力
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綺麗……。
アリアは自分に近づく何かを見てそう思った。
それは、人の形をしていて、蜂蜜色の髪の毛を揺らめかせ、真っ赤なドレスを身に付けている。
きっと、ユリ島の女神だわ。そうじゃなかったらこんなにはやく泳げないもの。
アリアはそう思った。
女神は、人外の速さで鮫のようにアリアに近付いてきた。
女神が、アリアに近づくとその顔は、よく整っていた。
シアン色の瞳を縁取る睫毛は、濃く長く空気の粒が無数に着いている。
真っ直ぐと伸びた鼻筋。真っ赤な口紅を塗った情に厚そうな大きめな唇。
「っ……!」
そして、よくよくその身体を見ると、逞しい。女性のそれではなく。
アリアの生まれ育った島に住む若い男の筋肉以上に、死線をくぐり抜けたような筋肉が、力強さが、筋肉が、ドレスをはち切らんばかりに、筋肉が、自己主張していた。筋肉盛り合わせだ。
胸筋は、小ぶりなスイカを半分に切断して胸につけたように大きい。
アリアはやはり『綺麗だ』と思っていた。
そんな女神が必死の形相でアリアの腕を掴んで、筋肉に物を言わせ陸地に引き上げた。
「っ、ふっ」
アリアは、大きく息を吸い込もうとしたけれど、コルセットのせいでそれができなかった。
女神はそれにすぐに気がついたようで、海水滴る輝く宝石箱のような胸元からナイフを取り出し、彼女の胸元を引き裂いた。
「はぁ、はぁ」
アリアはつかえがとれたかのように大きく胸を上下させて息を整えた。
「大丈夫?」
女神は、アリアに気遣わしげな目線を向けた。
「その、生きていればきっと良いことがあるから」
アリアはその言葉に首を傾げる。まるで自殺願望でもあるような物言いではないか。
「失恋したのよね?婚約破棄されたの?だからウエディングドレス……っつ、ううぅっ!!」
女神は両方の目から滝のような涙を流し始めた。
アリアのことを、婚約破棄されてウエディングドレスを着て、自殺を図った女性か何かだと思っているようだ。
なんという創造力だとアリアは思う反面。そんな無茶苦茶な理由でも涙を流せる優しさに、女神への好感度が天空を突き破るドラゴンのように上がっていた。
「私、いくらでも話を聞くわよ?飲みましょう?ね?美味しい物食べて吐き出して。いくらでも聞くから」
そう言って女神はアリアの両手を握りしめ、顔を近づける。
どう見ても男性なのに、アリアは全く嫌悪感がなく。口から心臓が飛び出てきそうなくらい胸が高鳴り始めた。
「ダメよ。死んだりなんかしたら。辛かったら私がついているわ」
女神はまだ優しい言葉を連ねる。
アリアはその言葉に合わせようか、ほんの少し葛藤するけれど、事実を述べた方が良いだろうと考えに至った。
「違うんです。その、私は生け贄なんです」
アリアは自分に近づく何かを見てそう思った。
それは、人の形をしていて、蜂蜜色の髪の毛を揺らめかせ、真っ赤なドレスを身に付けている。
きっと、ユリ島の女神だわ。そうじゃなかったらこんなにはやく泳げないもの。
アリアはそう思った。
女神は、人外の速さで鮫のようにアリアに近付いてきた。
女神が、アリアに近づくとその顔は、よく整っていた。
シアン色の瞳を縁取る睫毛は、濃く長く空気の粒が無数に着いている。
真っ直ぐと伸びた鼻筋。真っ赤な口紅を塗った情に厚そうな大きめな唇。
「っ……!」
そして、よくよくその身体を見ると、逞しい。女性のそれではなく。
アリアの生まれ育った島に住む若い男の筋肉以上に、死線をくぐり抜けたような筋肉が、力強さが、筋肉が、ドレスをはち切らんばかりに、筋肉が、自己主張していた。筋肉盛り合わせだ。
胸筋は、小ぶりなスイカを半分に切断して胸につけたように大きい。
アリアはやはり『綺麗だ』と思っていた。
そんな女神が必死の形相でアリアの腕を掴んで、筋肉に物を言わせ陸地に引き上げた。
「っ、ふっ」
アリアは、大きく息を吸い込もうとしたけれど、コルセットのせいでそれができなかった。
女神はそれにすぐに気がついたようで、海水滴る輝く宝石箱のような胸元からナイフを取り出し、彼女の胸元を引き裂いた。
「はぁ、はぁ」
アリアはつかえがとれたかのように大きく胸を上下させて息を整えた。
「大丈夫?」
女神は、アリアに気遣わしげな目線を向けた。
「その、生きていればきっと良いことがあるから」
アリアはその言葉に首を傾げる。まるで自殺願望でもあるような物言いではないか。
「失恋したのよね?婚約破棄されたの?だからウエディングドレス……っつ、ううぅっ!!」
女神は両方の目から滝のような涙を流し始めた。
アリアのことを、婚約破棄されてウエディングドレスを着て、自殺を図った女性か何かだと思っているようだ。
なんという創造力だとアリアは思う反面。そんな無茶苦茶な理由でも涙を流せる優しさに、女神への好感度が天空を突き破るドラゴンのように上がっていた。
「私、いくらでも話を聞くわよ?飲みましょう?ね?美味しい物食べて吐き出して。いくらでも聞くから」
そう言って女神はアリアの両手を握りしめ、顔を近づける。
どう見ても男性なのに、アリアは全く嫌悪感がなく。口から心臓が飛び出てきそうなくらい胸が高鳴り始めた。
「ダメよ。死んだりなんかしたら。辛かったら私がついているわ」
女神はまだ優しい言葉を連ねる。
アリアはその言葉に合わせようか、ほんの少し葛藤するけれど、事実を述べた方が良いだろうと考えに至った。
「違うんです。その、私は生け贄なんです」
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