恋の終わらせ方

毛蟹

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成人を迎えて初めて飲んだお酒は、失恋した男の自棄酒の付き合いだった。
奴はいつになく弱気で『運命の相手』と信じて疑わなかった彼女にフラれて、泥酔一歩手前になっていた。

「そろそろやめなよ。正己」

私がお酒を注ぐコップを取り上げると、奴は突然真面目な顔をした。

「やめてもいいけど。じゃあ、これだけは誓って」

熱い目に見据えられて、どきりと私の胸が高鳴る。早くなっていく心臓の拍動を、男に聞き取られやしないかと不安になりながら、素知らぬ顔で笑みを取り繕う。

「何を?」

「もしも、お互いに30になっても相手がいなかったら結婚するか」

そう言って、奴は私に苦笑いした。

悲しい事に付き合いの長さで、今にも泣き出しそうな顔を誤魔化している事に気がついていた。
私を騙そうとしても無駄だ。どれだけこの男の事を見続けたのだろう。考えるだけでけっして叶わない願いがわかっていて、胸が締め付けられる。
できることは気がつかないフリと、この話を本気にしない事。
どうせ酔っ払いの戯言なのだから。
だけど、その一言は私の胸の奥底に突き刺さり後遺症のように時折り痛み出すのだ。
この恋を忘れようとすると特に。

あの男はただ、失恋した事が寂しくて、だけど、モテない私ならいつでも慰めてくれるとわかっていて、甘えた事を言っているだけなんだ。

期待するだけ無駄。

わかっていても、失恋するたびに出てくる泣き言は甘い酒のように、私の心を悪酔いさせた。
それが、決して叶わない願いだとわかっていても。

なんて卑怯な男だろう。わたしはずっとこの男の事が好きで好きで、この想いに気が付かれないようにずっと心を砕き、いい友人でいつづけた。

私はずっと奴の友達だったのだ。



その終わりは呆気ないものだった。
女ができると途絶えがちになるか、あるいは、約束を平気ですっぽかす男から滅多にない電話が来た。
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