恋の終わらせ方

毛蟹

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次の日、目覚めは最悪だ。

お酒なんて飲んでいないけれど、睡眠不足と気がかりなことばかりなせいか。頭が痛くて重い。
なんであんな事を言ってしまったのだろう?
正己との話しは途中で終わってしまったけれど、こっちが何かしら、あちらの言う通りにしないと、後々面倒な事になりそうだ。

正己はヘタレなようで、どこか子供じみて強情で我儘な面がある。
昔は何とも思わなかったけれど、最近はそこにうんざりとする事が多くなった。
人付き合いする上で多少の我慢は必要だ。私の心が狭くなったせいか、最近は面倒とすら思える事もある。
こうして、めちゃくちゃな事を要求されたり、明らかに眠っている時間に電話をされると特に。

彼にとって私はどんな存在なのだろう。少なくとも腐れ縁の友人程度には認識されていると思っているけれど。
たまに、私には何をしても許されると思っているような気がするのだ。
私なら友達にこんな扱いはしない。

「彼氏役になってくれる人を探さないと」

見つからなかったら、面倒な事になりそうだ。勢いだけで、彼氏が居ると嘘をつかなければ良かった。
親しい異性なんていないけれど。
正己は私が勢いで言い出す事を見越して、言っているようにも感じていた。
しかし、それはなぜ?

「なんで、余計な事を言っちゃったのかな」

なんの気なしに、カーテンを開くと外は梅雨の時期のせいで、どんよりと暗い。
今にも雨が降り出しそうだ。

「仕事に行かないと」

私の独り言は虚しく部屋に響いた。

会社に着くとスイッチが入り。不安な事は一気に頭の片隅に追いやられるから気が楽になる。
問題は先送りになるけれど、今はあまり考えたくない。

正己に繁忙期だと言ったけれど、実際に忙しい事には変わりないのだ。

「由寿さん。お昼だよ」

デスクに一つの影と、優しい声が聞こえて私は顔を上げる。
私と同じような分厚い眼鏡をかけた壮年の男性がこちらをじいっと見ていた。
同期の彼は、職場で一番仲がいいと思っている。一時期大切な親友だった。今は友達というには曖昧な関係だ。

「考え事?ずっと声をかけてたけど」

「ごめん。高梨くん」

「何かあった?元気ないけど。今日は少しだけぼうっとしてるね」

高梨はそう言って、気遣わしげに顔を近づけてきた。
眼鏡で輪郭はぼやけてしまうけれど。高く真っ直ぐな鼻、厚めの唇はよく見ると整っている。あまり目立たないけれど綺麗な顔立ちだと思う。

なんで、いつも私になんか声をかけてくるのかしら?

高梨は暗いというわけではないが、目立つ事が好きではないようで、所謂、陽気そうな派閥には入らず。
私のような地味で、その辺の壁紙に溶け込んでしまいそうな人間と話すのが好きなようだ。
社交的ではあるが相手を選んでいる所がある。彼の凄いところは、誰とでも仲良くなれるところかもしれない。

「そんな事ないよ。もう、お昼だけどいっしょにどう?」

「いいわよ」

私のようにどちらかというととっつきにくい人間と、気軽に昼食を食べられる程度には、彼は人付き合いが上手だった。
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