1 / 22
1
しおりを挟む
「アンナ、愛しているよ!」
婚約者であるスティーブンは毎朝私に愛を囁く。学院までの通学路にて。
「私も愛しております!」
私は婚約者の愛に答える。そうすると、スティーブンは人目も憚らず、キスをすることがある。
「あの…スティーブン?さすがに恥ずかしいのですが…」
「恥ずかしいだって?気にすることはないさ。いずれ明らかになることだから…」
スティーブンの容姿は端麗であり、同級生の令嬢から非常に評判であった。そんなスティーブンが大して美しくもない私の婚約者になったのは、スティーブンの父と私の父が友人だから、というシンプルな理由である。私にとって彼は高嶺の花であった。時には同級生から嫉妬されることもあった。イジメを受けることもあった。そんな私をスティーブンは救ってくれた。まるで王子様のように。婚約者だから助けるのは当然か。
でもね…結論から言うと、スティーブンが私との婚約に満足していないことに気付いていた。私に囁いてくれる愛は時々本物のように聞こえる…でも、大半は偽物なんだ。
スティーブンが本心から愛している(と思われた)女の詳細を私は知らなかった。私たちの婚約が近づいて、普通だったら夜なんかロマンティックに2人で過ごすことが多くなるはずなのに、決してそんな風にはならず、むしろ1人で夜空を見ることが多くなった。
スティーブンは恐らく、ほかの女と会っている。そう考えると納得出来た。いや、それも含めて最初から分かってはいたんだ。やっぱり、私はスティーブンに釣り合う女ではないと…。
その知らせはお父様の怒鳴り声から始まった。
「アンナ!学院から追放処分が下ったぞ!」
追放処分…言葉の意味が分からなかった。
「追放処分?それは一体、どういうことですか?」
「お前、この期に及んでとぼけるのか?」
「とぼけるも何も…私が一体何をしたとおっしゃるのですか?」
「…本当に心当たりがないのか?」
「あのお…恐縮ですが、何も思い当たることはございません…」
しばらくの間、沈黙が続いた。そして、お父様の怒号と続いた。
「お前は…自らの過ちを認めないほどクズな令嬢になり下がったのか!」
「ですから…私はなにも…」
「うるさい、口答えするな!!!」
お父様の剣幕を止めることは出来なかった。
「そんな令嬢に育てた覚えはない…もうこの家から出ていけ!!!」
本気だとは思わなかった。これだけ愛情を持って育ててくれたお父様の口から…そんな言葉が出てくるなんて思ってもいなかったから。
「ああ、それと…スティーブンとの婚約は解消だ!!!」
不思議なことに、私はこの事実に直面してそれほど慌てなかった。
結局、お父様に反論することは出来ず、生家からの追放とスティーブンとの婚約の解消が決まった。私は…行き場を失った元令嬢に成り下がった。
婚約者であるスティーブンは毎朝私に愛を囁く。学院までの通学路にて。
「私も愛しております!」
私は婚約者の愛に答える。そうすると、スティーブンは人目も憚らず、キスをすることがある。
「あの…スティーブン?さすがに恥ずかしいのですが…」
「恥ずかしいだって?気にすることはないさ。いずれ明らかになることだから…」
スティーブンの容姿は端麗であり、同級生の令嬢から非常に評判であった。そんなスティーブンが大して美しくもない私の婚約者になったのは、スティーブンの父と私の父が友人だから、というシンプルな理由である。私にとって彼は高嶺の花であった。時には同級生から嫉妬されることもあった。イジメを受けることもあった。そんな私をスティーブンは救ってくれた。まるで王子様のように。婚約者だから助けるのは当然か。
でもね…結論から言うと、スティーブンが私との婚約に満足していないことに気付いていた。私に囁いてくれる愛は時々本物のように聞こえる…でも、大半は偽物なんだ。
スティーブンが本心から愛している(と思われた)女の詳細を私は知らなかった。私たちの婚約が近づいて、普通だったら夜なんかロマンティックに2人で過ごすことが多くなるはずなのに、決してそんな風にはならず、むしろ1人で夜空を見ることが多くなった。
スティーブンは恐らく、ほかの女と会っている。そう考えると納得出来た。いや、それも含めて最初から分かってはいたんだ。やっぱり、私はスティーブンに釣り合う女ではないと…。
その知らせはお父様の怒鳴り声から始まった。
「アンナ!学院から追放処分が下ったぞ!」
追放処分…言葉の意味が分からなかった。
「追放処分?それは一体、どういうことですか?」
「お前、この期に及んでとぼけるのか?」
「とぼけるも何も…私が一体何をしたとおっしゃるのですか?」
「…本当に心当たりがないのか?」
「あのお…恐縮ですが、何も思い当たることはございません…」
しばらくの間、沈黙が続いた。そして、お父様の怒号と続いた。
「お前は…自らの過ちを認めないほどクズな令嬢になり下がったのか!」
「ですから…私はなにも…」
「うるさい、口答えするな!!!」
お父様の剣幕を止めることは出来なかった。
「そんな令嬢に育てた覚えはない…もうこの家から出ていけ!!!」
本気だとは思わなかった。これだけ愛情を持って育ててくれたお父様の口から…そんな言葉が出てくるなんて思ってもいなかったから。
「ああ、それと…スティーブンとの婚約は解消だ!!!」
不思議なことに、私はこの事実に直面してそれほど慌てなかった。
結局、お父様に反論することは出来ず、生家からの追放とスティーブンとの婚約の解消が決まった。私は…行き場を失った元令嬢に成り下がった。
706
あなたにおすすめの小説
素顔を知らない
基本二度寝
恋愛
王太子はたいして美しくもない聖女に婚約破棄を突きつけた。
聖女より多少力の劣る、聖女補佐の貴族令嬢の方が、見目もよく気もきく。
ならば、美しくもない聖女より、美しい聖女補佐のほうが良い。
王太子は考え、国王夫妻の居ぬ間に聖女との婚約破棄を企て、国外に放り出した。
王太子はすぐ様、聖女補佐の令嬢を部屋に呼び、新たな婚約者だと皆に紹介して回った。
国王たちが戻った頃には、地鳴りと水害で、国が半壊していた。
側近という名の愛人はいりません。というか、そんな婚約者もいりません。
gacchi(がっち)
恋愛
十歳の時にお見合いで婚約することになった侯爵家のディアナとエラルド。一人娘のディアナのところにエラルドが婿入りする予定となっていたが、エラルドは領主になるための勉強は嫌だと逃げ出してしまった。仕方なく、ディアナが女侯爵となることに。五年後、学園で久しぶりに再会したエラルドは、幼馴染の令嬢三人を連れていた。あまりの距離の近さに友人らしい付き合い方をお願いするが、一向に直す気配はない。卒業する学年になって、いい加減にしてほしいと注意したディアナに、エラルドは令嬢三人を連れて婿入りする気だと言った。
(完結)私は一切悪くないけど、婚約破棄を受け入れます。もうあなたとは一緒に歩んでいけないと分かりましたから。
しまうま弁当
恋愛
ルーテシアは婚約者のゼスタから突然婚約破棄を突きつけられたのでした。
さらにオーランド男爵家令嬢のリアナが現れてゼスタと婚約するとルーテシアに宣言するのでした。
しかもゼスタはルーテシアが困っている人達を助けたからという理由で婚約破棄したとルーテシアに言い放ちました。
あまりにふざけた理由で婚約破棄されたルーテシアはゼスタの考えにはついていけないと考えて、そのまま婚約破棄を受け入れたのでした。
そしてルーテシアは実家の伯爵家に戻るために水上バスの停留所へと向かうのでした。
ルーテシアは幼馴染のロベルトとそこで再会するのでした。
【短編】復讐すればいいのに〜婚約破棄のその後のお話〜
真辺わ人
恋愛
平民の女性との間に真実の愛を見つけた王太子は、公爵令嬢に婚約破棄を告げる。
しかし、公爵家と国王の不興を買い、彼は廃太子とされてしまった。
これはその後の彼(元王太子)と彼女(平民少女)のお話です。
数年後に彼女が語る真実とは……?
前中後編の三部構成です。
❇︎ざまぁはありません。
❇︎設定は緩いですので、頭のネジを緩めながらお読みください。
【完結】婚約者にウンザリしていたら、幼馴染が婚約者を奪ってくれた
よどら文鳥
恋愛
「ライアンとは婚約解消したい。幼馴染のミーナから声がかかっているのだ」
婚約者であるオズマとご両親は、私のお父様の稼ぎを期待するようになっていた。
幼馴染でもあるミーナの家は何をやっているのかは知らないが、相当な稼ぎがある。
どうやら金銭目当てで婚約を乗り換えたいようだったので、すぐに承認した。
だが、ミーナのご両親の仕事は、不正を働かせていて現在裁判中であることをオズマ一家も娘であるミーナも知らない。
一方、私はというと、婚約解消された当日、兼ねてから縁談の話をしたかったという侯爵であるサバス様の元へ向かった。
※設定はかなり緩いお話です。
【長編版】この戦いが終わったら一緒になろうと約束していた勇者は、私の目の前で皇女様との結婚を選んだ
・めぐめぐ・
恋愛
神官アウラは、勇者で幼馴染であるダグと将来を誓い合った仲だったが、彼は魔王討伐の褒美としてイリス皇女との結婚を打診され、それをアウラの目の前で快諾する。
アウラと交わした結婚の約束は、神聖魔法の使い手である彼女を魔王討伐パーティーに引き入れるためにダグがついた嘘だったのだ。
『お前みたいな、ヤれば魔法を使えなくなる女となんて、誰が結婚するんだよ。神聖魔法を使うことしか取り柄のない役立たずのくせに』
そう書かれた手紙によって捨てらたアウラ。
傷心する彼女に、同じパーティー仲間の盾役マーヴィが、自分の故郷にやってこないかと声をかける。
アウラは心の傷を癒すため、マーヴィとともに彼の故郷へと向かうのだった。
捨てられた主人公がパーティー仲間の盾役と幸せになる、ちょいざまぁありの恋愛ファンタジー長編版。
--注意--
こちらは、以前アップした同タイトル短編作品の長編版です。
一部設定が変更になっていますが、短編版の文章を流用してる部分が多分にあります。
二人の関わりを短編版よりも増しましたので(当社比)、ご興味あれば是非♪
※色々とガバガバです。頭空っぽにしてお読みください。
※力があれば平民が皇帝になれるような世界観です。
大好きな第一王子様、私の正体を知りたいですか? 本当に知りたいんですか?
サイコちゃん
恋愛
第一王子クライドは聖女アレクサンドラに婚約破棄を言い渡す。すると彼女はお腹にあなたの子がいると訴えた。しかしクライドは彼女と寝た覚えはない。狂言だと断じて、妹のカサンドラとの婚約を告げた。ショックを受けたアレクサンドラは消えてしまい、そのまま行方知れずとなる。その頃、クライドは我が儘なカサンドラを重たく感じていた。やがて新しい聖女レイラと恋に落ちた彼はカサンドラと別れることにする。その時、カサンドラが言った。「私……あなたに隠していたことがあるの……! 実は私の正体は……――」
聖女の魔力を失い国が崩壊。婚約破棄したら、彼と幼馴染が事故死した。
佐藤 美奈
恋愛
聖女のクロエ公爵令嬢はガブリエル王太子殿下と婚約していた。しかしガブリエルはマリアという幼馴染に夢中になり、隠れて密会していた。
二人が人目を避けて会っている事をクロエに知られてしまい、ガブリエルは謝罪して「マリアとは距離を置く」と約束してくれる。
クロエはその言葉を信じていましたが、実は二人はこっそり関係を続けていました。
その事をガブリエルに厳しく抗議するとあり得ない反論をされる。
「クロエとは婚約破棄して聖女の地位を剥奪する!そして僕は愛するマリアと結婚して彼女を聖女にする!」
「ガブリエル考え直してください。私が聖女を辞めればこの国は大変なことになります!」
「僕を騙すつもりか?」
「どういう事でしょう?」
「クロエには聖女の魔力なんて最初から無い。マリアが言っていた。それにマリアのことを随分といじめて嫌がらせをしているようだな」
「心から誓ってそんなことはしておりません!」
「黙れ!偽聖女が!」
クロエは婚約破棄されて聖女の地位を剥奪されました。ところが二人に天罰が下る。デート中にガブリエルとマリアは事故死したと知らせを受けます。
信頼していた婚約者に裏切られ、涙を流し悲痛な思いで身体を震わせるクロエは、急に頭痛がして倒れてしまう。
――目覚めたら一年前に戻っていた――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる