婚約破棄された令嬢の細やかな異世界生活

岡暁舟

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 婚約破棄だの、断罪だの、そういう運命にあった令嬢の行き着く先というのは、言うまでもなく修道院であった。俗世間を捨てて、神に使える人として第二の人生を歩むこととなるのだ。最も、私は神の存在を信じていなかったから基本的に修道院に行くくらいなら、そのまま死んでしまった方がマシだと思ったわけだが。

「カナエ。ひょっとして、このまま修道院に行こうと思っているのか?」

「ひょっとしなくても、このまま道を進めば自ずと修道院への道が開けるのでしょうね・・・」

「それだけはまずいっ!」

 シュトルツはそう言った。

「修道院なんて行かせるものか!それならば、私が無理やり君の処女を奪って・・・」

「人前で恥ずかしいことを言わないで!!!」

 私はシュトルツを引っ叩いた。

「今の攻撃は結構効いたぞ・・・」

「当たり前でしょうが!」

 外野から見れば、コントをやっているように見えたのかもしれない。時々笑いが起きた。

 そんなおり、私たちとは別のところに人だかりが出来始めていた。噂によれば修道院送りになる令嬢がまもなくやって来るのだとか。

「一体誰だろう?」

「さあ、それにしても一体何をやらかしたのかしらね。あなた、地獄耳なのに何も知らないの?」

「ああ、そうだな・・・この一件については把握していないな・・・」

 暫くして罪人の札が貼られた令嬢一行がやって来た。市民の見世物としては恰好の餌食であった。腐敗の進む貴族社会を良く思わない市民の怒りの矛先にもなり、ひどい時には石を投げられることもあった。

「見るな!私は何も悪くないのに!」

 恐らく令嬢の叫び声であった。令嬢としてのプライドが市民の視線を許さなかったのだろう。それにしても、なんだか聞いたことのある声だった。確かどこかで聞いたような・・・。

 やがて一行が私の目の前にやって来た時、声の主を視認することが出来た。
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