【完結】偽りの花嫁 〜すり替えられた花嫁は冷血王子から身も心も蕩けるほどに溺愛される〜

葉月

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孤児院への慈善事業 ⑤

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 孤児院に来たばかりなのに、もう僕は早く殿下の元に帰りたい。
 でもそれだと慈善事業を、何もせずに帰ってしまうことになる。
 それは殿下との約束を守らないことに、なってしまう。

 どうしようか……。

 考えていると、
「ユベール様じゃないかい」
 いつも孤児院のことを気にかけてくれていた、隣のアリアさんがやってきた。

ーお久しぶりですー

 そう言おうとしたのに、
「大きくなって~」
 ふくよかな胸に抱きしめられる。

「意地悪はされてないかい? ご飯は食べてる?」
 僕の体に異変はないか、あちらこちら見ながら確認している。

「大丈夫です。とても大切にしていただいています」
 そういうと、
「本当かい? じゃあどうして孤児院に帰ってきたんだい? あ! そうだ! 何か粗相そそうをしてしまって、命からがら逃げてきたんじゃないかい?」
 アリアさんは僕の近くにいたヒューゴ様を見つけると、敵視するように睨む。

「違うよ。僕の元気がないからって、殿下が僕を里帰りさせてくださったんだよ。殿下は不器用で言葉足らずだけれど、本当はお優しい方なんだ」

 今の僕ならわかる。
 どうして殿下が僕に厳しくされたのか?
 部屋から出るなと言われたのか?
 僕が部屋のドアから落ちてしまったとき、あんなに血相を変えて助けてくださったのか。

 殿下はいつでも、僕のことを守ろうとしてくださっていた。
 僕のことを大切にしてくださっていた。
 殿下。あなたは本当に不器用な方ですね。
 ふと笑みが溢れた。

「でもそれはユベール様が騙されているだけなんじゃないかい?」
 アリアさんはまだ信じてくれない。
「違います。殿下は……」
 反論しようとすると、

「殿下はとてもお優しくて、素敵な方です」
 後ろからクロエが飛び出してきた。

「あんたはどうして殿下が素敵な方だと、そんなことが言えるんだい? ユベール様を騙すために、殿下に言わされてるのかい?」
 アリアさんも譲らない。

「違います。殿下はユベール様が落ち詰めるように、清潔で読書をしながらゆっくりできる部屋を用意されました。ドレスだって食事だって、ユベール様が寂しくないようにと、故郷を思い出せるものを用意されてましたし、ユベール様のお部屋に飾る花は、全て殿下が毎朝早くに積まれていたんです」
「え? 殿下がそんなことを?」
 アリアさんが反応する前に、僕が聞き返した。
 するとクロエは『しまった……』と言うように、両手で口を塞ぐ。

「ねぇクロエ。それ本当?」
「……」
「クロエってば!」
 少し怒ったそぶりを見せると、
「は……はい……」
 消え入りそうな声で返事をする。

「僕が『誰からの贈り物?』って聞いた時、『知らないんです』って言ってたけど、その時にはもう、殿下からの贈り物だと知っていたの?」
「はい……。殿下から直接お預かりしましたし……」 

「も~どうして教えてくれなかったの?」
「だって、殿下が言うなって……」
「だからって……。も~!」

 言ってくれてたら、殿下に対して誤解なんてしなかった!

「今度からは、ちゃんと教えてね」
「は~い」
 反省したのか、していないのかわからない返事が返ってきた。

「アハハハハ!」 
 僕とクロエの話を聞いていたアリアさんが大きな口を開けて、豪快に笑う。

「殿下は不器用だけど優しそうだし、こんなに面白いクロエ友達もできて、ユベール様、ずいぶん楽しそうな暮らしじゃないか。安心したよ」
 アリアさんは僕のことを心配してくれてたんだ。

「ありがとう、アリアさん」
「ユベール様は私の子どもと同じだからね」
 抱きしめられ、またふくよかな胸の中に抱きしめられた。
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