【完結】たとえ彼の身代わりだとしても貴方が僕を見てくれるのならば… 〜初恋のαは双子の弟の婚約者でした〜

葉月

文字の大きさ
13 / 105

流行病 ②

しおりを挟む
 しばらくすると、ドタドタと誰かが廊下を駆けてくる音がした。

 何事?
 廊下に様子を見に行こうと起き上がったと同時に、ミカエルの部屋のドアは開けられ、父様と母様、お医者さんに数人の使用人が入ってくる。

「ああミカエル!」
 母様が僕をキツく抱きしめる。
「本当に心配したんだよ」
 父様も僕を抱きしめる。
 侍女だけじゃなくて、父様と母様も僕のことをミカエルとおっしゃっている。

 僕たちは大きくなるにつれて見分けがつきにくく、毎日会っている使用人たちですら、僕たちが着る服の色でしか、どちらが僕でどちらがミカか、わからなくなっていたとはいえ父様と母様はきちんと見分けられていた。
 なのにどうして、今、僕のことをミカエルって呼ぶの?

「旦那様、奥様、少し失礼します」
 お医者様が僕の目の前に現れ、目の様子や心音を聞かれる。
「熱もさがっておられ、胸の音も綺麗です。ご安心ください。ミカエル様は病に打ち勝たれました」
「本当ですか!?先生、ありがとうございます!さ、お茶の用意をさせますので別のお部屋でお待ちください」

 父様が使用人たちに目配せをすると、使用人たちは父様に一礼して部屋を出ていった。
 部屋には父様、母様、僕の面倒をみてくれていた侍女、そして僕の4人だけになる。

「ミカエル、大事な話がある」
「父様、僕ミカエルじゃなくてレオナルドだよ」
 いくら父様たちがミカのことが大好きで大切だからって、僕とミカを見間違うなんて悲しすぎる。

「ああ。そのことで話がある。ベッドのヘリここに座りなさい」
 父様に促されるまま僕はベッドのへりに座り、父様と母様は僕の両隣りに座った。

「今から話すことは、とても重要で誰にも話してもいけない。それがたとえサイモンでも、だ。誰にも言わないと約束するか?」
 今まで見たことのない父様の表情に、僕は大きく頷いた。

「レオナルド、ミカエルは死んだ」
「……え……?」
 父様が何をおっしゃっているのかわからず、思考が止まる。
「今……なんて……」
「ミカエルは、死んだ」
 父様はもう一度、今度ははっきりと言う。
「ミカエルは……死んだ……?どういう、ことですか?」

 ミカが死んだ?
 信じられない。
 だってミカは昨日、僕にお茶を淹れにきてくれていたじゃないか。
 僕の知っているミカは元気で体調が良さそうだった。
 だったらどうして?
 父様と母様は僕に嘘をついている?
 でもどうしてそんな嘘をつくの?
 それにどうして僕のことを『ミカエル』って呼ぶの?

「ミカは……ミカは、どこですか?」
「……」
「ミカの体調はどうなんですか?」
「……」
「どうしてここにミカはいないんですか?」
「……」
「どうして僕は、ミカの部屋のミカのベッドで眠っていたんですか?」
「……」
「どうしてみんな僕のことを、ミカエルって呼ぶんですか?」
「……」
「どうしてですか!?どうしてそんな嘘をつかれるのですか!?答えてください!ねぇ父様!母様!」
 僕はベッドから立ち上がり叫び、部屋の中には僕の声だけ響く。

「レオナルド座りなさい。座って落ち着いてしっかりと聞くんだ」
 父様は落ち着いて話し始められた。
 ミカエルはサイモンに丘の上に連れて行ってもらい、上機嫌で帰って来て、そのままサイモンを見送った。

 体調もよく元気だったので安心していたが、その晩、急に容態が悪化し三日三晩、高熱と嘔吐を繰り返し4日目の夜中、眠るように亡くなったと話された。
 でもそんな話しは嘘だ!
 だってミカは元気な姿で僕に会いにきてくれたじゃないか!
 額に掌を当ててくれたり、お茶だって淹れてくれた。

「そんなのは嘘です!サイモンが帰った3日後の夜中、ミカは元気な姿で僕に会いにきてくれていました!僕のことを心配して、会いにきてくれてました!ミカだけが僕に会いにきてくれてました!」
 ほぼ叫ぶように言っていた。

「そう、だったんだな」
 みるみるうちに父様の目に涙が浮かび、母様は手で口を塞ぎ、鳴き声を抑えている。
「ミカエルはレオナルドにお別れを、言いに行っていたんだな」

ーお別れー

 その言葉が頭の中で響く。
 ミカが来てくれたのは、決してお別れのためじゃない。ミカは元気だったから、僕の様子を見に来てくれていただけなんだ。
 だけど、ミカが言っていた言葉がずっと引っかかっている。
しおりを挟む
感想 158

あなたにおすすめの小説

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。

巣ごもりオメガは後宮にひそむ【続編完結】

晦リリ@9/10『死に戻りの神子~』発売
BL
後宮で幼馴染でもあるラナ姫の護衛をしているミシュアルは、つがいがいないのに、すでに契約がすんでいる体であるという判定を受けたオメガ。 発情期はあるものの、つがいが誰なのか、いつつがいの契約がなされたのかは本人もわからない。 そんななか、気になる匂いの落とし物を後宮で拾うようになる。 第9回BL小説大賞にて奨励賞受賞→書籍化しました。ありがとうございます。

義理の家族に虐げられている伯爵令息ですが、気にしてないので平気です。王子にも興味はありません。

竜鳴躍
BL
性格の悪い傲慢な王太子のどこが素敵なのか分かりません。王妃なんて一番めんどくさいポジションだと思います。僕は一応伯爵令息ですが、子どもの頃に両親が亡くなって叔父家族が伯爵家を相続したので、居候のようなものです。 あれこれめんどくさいです。 学校も身づくろいも適当でいいんです。僕は、僕の才能を使いたい人のために使います。 冴えない取り柄もないと思っていた主人公が、実は…。 主人公は虐げる人の知らないところで輝いています。 全てを知って後悔するのは…。 ☆2022年6月29日 BL 1位ありがとうございます!一瞬でも嬉しいです! ☆2,022年7月7日 実は子どもが主人公の話を始めてます。 囚われの親指王子が瀕死の騎士を助けたら、王子さまでした。https://www.alphapolis.co.jp/novel/355043923/237646317

ちゃんちゃら

三旨加泉
BL
軽い気持ちで普段仲の良い大地と関係を持ってしまった海斗。自分はβだと思っていたが、Ωだと発覚して…? 夫夫としてはゼロからのスタートとなった二人。すれ違いまくる中、二人が出した決断はー。 ビター色の強いオメガバースラブロマンス。

【完結】君を上手に振る方法

社菘
BL
「んー、じゃあ俺と付き合う?」 「………はいっ?」 ひょんなことから、入学して早々距離感バグな見知らぬ先輩にそう言われた。 スクールカーストの上位というより、もはや王座にいるような学園のアイドルは『告白を断る理由が面倒だから、付き合っている人がほしい』のだそう。 お互いに利害が一致していたので、付き合ってみたのだが―― 「……だめだ。僕、先輩のことを本気で……」 偽物の恋人から始まった不思議な関係。 デートはしたことないのに、キスだけが上手くなる。 この関係って、一体なに? 「……宇佐美くん。俺のこと、上手に振ってね」 年下うさぎ顔純粋男子(高1)×精神的優位美人男子(高3)の甘酸っぱくじれったい、少しだけ切ない恋の話。 ✧毎日2回更新中!ボーナスタイムに更新予定✧ ✧お気に入り登録・各話♡・エール📣作者大歓喜します✧

もう一度、その腕に

結衣可
BL
もう一度、その腕に

完結|好きから一番遠いはずだった

七角@書籍化進行中!
BL
大学生の石田陽は、石ころみたいな自分に自信がない。酒の力を借りて恋愛のきっかけをつかもうと意気込む。 しかしサークル歴代最高イケメン・星川叶斗が邪魔してくる。恋愛なんて簡単そうなこの後輩、ずるいし、好きじゃない。 なのにあれこれ世話を焼かれる。いや利用されてるだけだ。恋愛相手として最も遠い後輩に、勘違いしない。 …はずだった。

僕はあなたに捨てられる日が来ることを知っていながらそれでもあなたに恋してた

いちみやりょう
BL
▲ オメガバース の設定をお借りしている & おそらく勝手に付け足したかもしれない設定もあるかも 設定書くの難しすぎたのでオメガバース知ってる方は1話目は流し読み推奨です▲ 捨てられたΩの末路は悲惨だ。 Ωはαに捨てられないように必死に生きなきゃいけない。 僕が結婚する相手には好きな人がいる。僕のことが気に食わない彼を、それでも僕は愛してる。 いつか捨てられるその日が来るまでは、そばに居てもいいですか。

処理中です...