【完結】たとえ彼の身代わりだとしても貴方が僕を見てくれるのならば… 〜初恋のαは双子の弟の婚約者でした〜

葉月

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流行病 ③

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ーもう少ししたら僕は遠くに行っちゃうけれど、僕はずっとレオのことを見ているからねー

 やっぱりミカは僕にお別れをしに来てくれたんだろうか?
 本当にそうなの?
 ねぇミカ、僕はお別れなんてしたくなかった。

 ずっとずっと一緒にいたかった。
 ミカと一緒に外で遊びたかった。
 あの丘の上にある木の下で、一緒に本を読みたかった。
 僕とミカ、服を交換して、また入れ替えごっこのイタズラもしたかった。
 みんなを驚かせたかった。
 またサイモン間違えるかな?って話しながら、笑っていたかった。
 それにサイモンとミカの結婚をお祝いしてあげたかったし、2人で行った感謝祭の話も聞きたかった。
 もっとミカのわがまま聞いてあげたかった。

 もっとミカの笑顔が、見たかった……。
 もっと、もっと、もっと……。

「お別れなんて、嫌だ……。お別れなんて、嫌だ。嫌だ。嫌だ!嫌だ!!」
 ミカとお別れなんてしないし、きっとこれはミカのイタズラだ。
 そうだイタズラだ。
 探しに行かないと。
 僕はミカを探しに行かないと!

 スクっと立ち上がる。
「ミカを探しに行ってきます」
 一歩を踏み出そうとした時、父様に腕を掴まれた。
「レオ、ミカはもういない。どんなに名前を呼んでも、どんなに探してもいないんだ。レオ、ミカはもういない」
 いつもは威厳があり、厳格な父様の目から涙が溢れる。

 ああ、本当にミカは死んでしまったんだ。
 もうこの世には、ミカはいないんだ……。
 父様の涙を見て、ミカの死を認めざるおえない。
「父様、ミカは苦しまずに神様のところに行けたのですか?」
「ああ。微笑みながら天に召されたよ」
 よかった。
 よかったねミカ。
 もう苦しくないよ。

「これからミカが眠るお墓にお花を持って行ってもいいですか?」
 たくさんたくさんミカの好きな花を用意しよう。
 それから毎日ミカに会いに行こう。
「それなんだがレオ、ミカのお墓はない……」
「え?」
 父様が何をおっしゃっているのか、理解できない。
「じゃあミカは、今、どこで眠っているのですか?」
「ミカは眠っていない。今この瞬間から、レオ、お前はミカエルだ」
「!!」
 父様は何をおっしゃっているのだろう?
 今日から僕がミカ?
 どう言う意味なんだ?

「今日からお前はミカエルで、18歳の誕生日が訪れたら、お前はミカエルとしてサイモンと結婚するんだ」
「!!」
 今度こそ何をおっしゃっているのか、何をおっしゃりたいのか理解できない。
「流行病で死んでしまったのはレオナルドで、助かったのはミカエル。お前だ」
「ち、違います!僕はレオナルドでミカエルじゃないです!父様、間違っておられます!」
「間違っていない!」
 今度は父様の声が部屋に響く。

 カトラレル家は子爵だ。
 裕福ではなかったが、それでも土地は豊かで、その税収や隣国との貿易での収入が滞りなくあったため暮らしてこれたが、ここ数年不作が続き税収が減ってしまった。
 そこにきて流行病で風評被害が広がり、貿易での収入が激減した。
 ただでさえ裕福でも力があったわけでもないカトラレル家は、金銭的に困窮し、今回ミカエルが伯爵であるサイモンと結婚することで、カトラレル家は支援してもらえることになっていたのに、ミカエルが死んでしまい、この婚姻がなくなってしまえばカトラレル家は崩壊してしまう。

 そこで流行病で死んでしまったのは僕、生き残ったのはミカにして、僕がミカの代わりにサイモンのいるオリバー家に嫁ぐことにしようという話になったようだった。
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