68 / 105
恐れていたこと ④
しおりを挟む
終わった……。
全身の力が抜け、その場に膝から崩れ落ち頭を項垂れた。
終わってしまった……。
今まで僕が一番恐れていたことが、最悪な形で訪れて、最悪な結果になってしまった。
どうにかならないのだろうか?
どう考えても、どうにもならない。
サイモンがいなくなる。
こんなこと容易に想像できたことだったのに、どこかで人事みたいに考えていて、いざそれが現実になってしまって、その時はじめて自分事になった。
なのに突きつけられた現実が受け止められなくて、涙も出ない。
体は生きていても、もう心は何も感じない。
ある場所にレオナルドという人がいて、その人を遠くからその人をみつめている。そんな感じがする。
けれど現実の僕は、ただ床に轢かれた上等の絨毯を、見つめてるだけ。
見つめていても、何も現実は変わらないのに……。
そんな時、視界の隅に豪華な靴が見えた。
「顔をあげよ」
頭の上からルーカス様の声がした。
ルーカス様の命令。
頭を上げようとしたけれど、頭が大きな石のように重く、動けない。
「あげよと言っている」
何も言わず微動だにしない僕に対して、ルーカス様の声に苛立ちを感じる。
懸命に頭を上げようとしたが、上がらない。
すっとルーカス様がしゃがむ気配がし、無言で顎をグイッと無理ありあげられる。
「で、これからどうするつもりだ?」
テラスで会った時の優しい眼差しではなく、酷く冷たい視線が突き刺さる。
「……」
「行く当てはあるのか?」
「……」
「聞いているのだが?」
「何も……、決まっていません……」
自分から遠くに行くと行っておきながら、何の計画も立てていなかったことが、恥ずかしい。
「サイモンと番になるのか?」
その言葉がズキンと胸を刺す。
番になりたい。でもあんなにサイモンを傷付けて、今更何を言える?
また黙りこくってしまった僕を見て、ルーカス様は大きなため息をつき、
「今回、サイモンをここに呼んだのんは、サイモンが本当のことを知っているのかを知りたかったからだ。そして問いただすと、サイモンはお前が『死んだのはレオだ』と言った時から、お前がミカエルのふりをしていると気づいていた。気づいていたにもかかわらず、陛下にお前を『ミカエル』だと紹介し、騙したんだ。これはれっきとした重罪だ。サイモンには何かしらの処罰が降るだろう」
「!!」
考えもしないことだった。
僕がサイモンに嘘をつく。
そのことをサイモンが知らずに皇帝陛下に僕のことをミカエルだと紹介して、もし陛下に僕がレオナルドだと知られても、僕だけの責任で処罰される。
でもサイモンは陛下に僕のことを紹介した時には、僕の嘘を見抜いていた。
だからサイモンも陛下に嘘をついたと処罰されてしまう。
迂闊だった。
僕はサイモンにだけ正体がバレなければいいと思っていて、それ以上のことを考えられていなかった。
全身の力が抜け、その場に膝から崩れ落ち頭を項垂れた。
終わってしまった……。
今まで僕が一番恐れていたことが、最悪な形で訪れて、最悪な結果になってしまった。
どうにかならないのだろうか?
どう考えても、どうにもならない。
サイモンがいなくなる。
こんなこと容易に想像できたことだったのに、どこかで人事みたいに考えていて、いざそれが現実になってしまって、その時はじめて自分事になった。
なのに突きつけられた現実が受け止められなくて、涙も出ない。
体は生きていても、もう心は何も感じない。
ある場所にレオナルドという人がいて、その人を遠くからその人をみつめている。そんな感じがする。
けれど現実の僕は、ただ床に轢かれた上等の絨毯を、見つめてるだけ。
見つめていても、何も現実は変わらないのに……。
そんな時、視界の隅に豪華な靴が見えた。
「顔をあげよ」
頭の上からルーカス様の声がした。
ルーカス様の命令。
頭を上げようとしたけれど、頭が大きな石のように重く、動けない。
「あげよと言っている」
何も言わず微動だにしない僕に対して、ルーカス様の声に苛立ちを感じる。
懸命に頭を上げようとしたが、上がらない。
すっとルーカス様がしゃがむ気配がし、無言で顎をグイッと無理ありあげられる。
「で、これからどうするつもりだ?」
テラスで会った時の優しい眼差しではなく、酷く冷たい視線が突き刺さる。
「……」
「行く当てはあるのか?」
「……」
「聞いているのだが?」
「何も……、決まっていません……」
自分から遠くに行くと行っておきながら、何の計画も立てていなかったことが、恥ずかしい。
「サイモンと番になるのか?」
その言葉がズキンと胸を刺す。
番になりたい。でもあんなにサイモンを傷付けて、今更何を言える?
また黙りこくってしまった僕を見て、ルーカス様は大きなため息をつき、
「今回、サイモンをここに呼んだのんは、サイモンが本当のことを知っているのかを知りたかったからだ。そして問いただすと、サイモンはお前が『死んだのはレオだ』と言った時から、お前がミカエルのふりをしていると気づいていた。気づいていたにもかかわらず、陛下にお前を『ミカエル』だと紹介し、騙したんだ。これはれっきとした重罪だ。サイモンには何かしらの処罰が降るだろう」
「!!」
考えもしないことだった。
僕がサイモンに嘘をつく。
そのことをサイモンが知らずに皇帝陛下に僕のことをミカエルだと紹介して、もし陛下に僕がレオナルドだと知られても、僕だけの責任で処罰される。
でもサイモンは陛下に僕のことを紹介した時には、僕の嘘を見抜いていた。
だからサイモンも陛下に嘘をついたと処罰されてしまう。
迂闊だった。
僕はサイモンにだけ正体がバレなければいいと思っていて、それ以上のことを考えられていなかった。
25
あなたにおすすめの小説
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。
巣ごもりオメガは後宮にひそむ【続編完結】
晦リリ@9/10『死に戻りの神子~』発売
BL
後宮で幼馴染でもあるラナ姫の護衛をしているミシュアルは、つがいがいないのに、すでに契約がすんでいる体であるという判定を受けたオメガ。
発情期はあるものの、つがいが誰なのか、いつつがいの契約がなされたのかは本人もわからない。
そんななか、気になる匂いの落とし物を後宮で拾うようになる。
第9回BL小説大賞にて奨励賞受賞→書籍化しました。ありがとうございます。
義理の家族に虐げられている伯爵令息ですが、気にしてないので平気です。王子にも興味はありません。
竜鳴躍
BL
性格の悪い傲慢な王太子のどこが素敵なのか分かりません。王妃なんて一番めんどくさいポジションだと思います。僕は一応伯爵令息ですが、子どもの頃に両親が亡くなって叔父家族が伯爵家を相続したので、居候のようなものです。
あれこれめんどくさいです。
学校も身づくろいも適当でいいんです。僕は、僕の才能を使いたい人のために使います。
冴えない取り柄もないと思っていた主人公が、実は…。
主人公は虐げる人の知らないところで輝いています。
全てを知って後悔するのは…。
☆2022年6月29日 BL 1位ありがとうございます!一瞬でも嬉しいです!
☆2,022年7月7日 実は子どもが主人公の話を始めてます。
囚われの親指王子が瀕死の騎士を助けたら、王子さまでした。https://www.alphapolis.co.jp/novel/355043923/237646317
ちゃんちゃら
三旨加泉
BL
軽い気持ちで普段仲の良い大地と関係を持ってしまった海斗。自分はβだと思っていたが、Ωだと発覚して…?
夫夫としてはゼロからのスタートとなった二人。すれ違いまくる中、二人が出した決断はー。
ビター色の強いオメガバースラブロマンス。
【完結】君を上手に振る方法
社菘
BL
「んー、じゃあ俺と付き合う?」
「………はいっ?」
ひょんなことから、入学して早々距離感バグな見知らぬ先輩にそう言われた。
スクールカーストの上位というより、もはや王座にいるような学園のアイドルは『告白を断る理由が面倒だから、付き合っている人がほしい』のだそう。
お互いに利害が一致していたので、付き合ってみたのだが――
「……だめだ。僕、先輩のことを本気で……」
偽物の恋人から始まった不思議な関係。
デートはしたことないのに、キスだけが上手くなる。
この関係って、一体なに?
「……宇佐美くん。俺のこと、上手に振ってね」
年下うさぎ顔純粋男子(高1)×精神的優位美人男子(高3)の甘酸っぱくじれったい、少しだけ切ない恋の話。
✧毎日2回更新中!ボーナスタイムに更新予定✧
✧お気に入り登録・各話♡・エール📣作者大歓喜します✧
完結|好きから一番遠いはずだった
七角@書籍化進行中!
BL
大学生の石田陽は、石ころみたいな自分に自信がない。酒の力を借りて恋愛のきっかけをつかもうと意気込む。
しかしサークル歴代最高イケメン・星川叶斗が邪魔してくる。恋愛なんて簡単そうなこの後輩、ずるいし、好きじゃない。
なのにあれこれ世話を焼かれる。いや利用されてるだけだ。恋愛相手として最も遠い後輩に、勘違いしない。
…はずだった。
僕はあなたに捨てられる日が来ることを知っていながらそれでもあなたに恋してた
いちみやりょう
BL
▲ オメガバース の設定をお借りしている & おそらく勝手に付け足したかもしれない設定もあるかも 設定書くの難しすぎたのでオメガバース知ってる方は1話目は流し読み推奨です▲
捨てられたΩの末路は悲惨だ。
Ωはαに捨てられないように必死に生きなきゃいけない。
僕が結婚する相手には好きな人がいる。僕のことが気に食わない彼を、それでも僕は愛してる。
いつか捨てられるその日が来るまでは、そばに居てもいいですか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる