二度目の人生は魔王の嫁

七海あとり

文字の大きさ
28 / 44

決意

しおりを挟む
重たい瞼をあげる。
視界には見慣れたレイバンスミスの壁画。
真っ白な天井じゃない。

夢から覚めたカルミアの頬には、涙が伝っていた。
カルミアは上体を起こして涙をぬぐった。

辺りは淡い藍色の闇に包み込まれている。
ターニャはまだ帰ってきていないようだった。

カルミアはベッドから降りて、鏡の前に移動した。
ジャラジャラと鳴る、足首の鎖。
いつのまにか足枷をつけられているところを見ると、ギルバートが様子を見にきたのだろう。

鏡に写ってる自分の姿は、酷い有り様だった。
ぐしゃぐしゃの頭。涙で落ちたアイライン。まだらになった白粉。よれよれになった衣服。
せっかくターニャが頑張ってくれたのに、台無しだ。


「(僕が送りたかった人生はこんな人生?)」

鏡の中の自分に尋ねた。

足枷をつけられて、行動を制限させられて、挙げ句は罪人のように監視用の機械も置かれて。
クロエも遠ざけられて。ギルバート以外縋れない状態にして。

幸せとは程遠いこんな生活がしたくて、娼館を抜け出したんだっけ?

鏡の中の自分の姿が、夢の中の最期の樹の姿と重なって見える。

次に生まれてくる時は、自由に生きられるように。幸せに生きられるようにと願って死んでいった彼が送りたかった人生は、こんな人生だっただろうか。

答えは全部否だった。

自由になりたい。そう願って、命がけで娼館を抜け出したのに、状況はもっと悪化してる。

カルミアはギルバートに強い怒りを抱いていた。

いつもそうだ。僕を囚人のように囲って、大切な事は何一つ教えてくれない。何が愛だ。そんな一方的で独りよがりの愛は愛と言えない。

僕にはギルバートしかいない?
そんなことない。側にいないだけで、クロエもヨハンもいる。ターニャだって僕の味方だろう。

子供ができたらギルバートの愛を失うかもしれない?
上等だ。むしろ大切にしてくれないギルバートなんてこっちから願い下げだ。
それにギルバートの愛情は僕じゃなく、クローディアとその子供に向かなくてはいけない。
僕は何を勘違いしていたのだろう。



カルミアはベッド脇のキャビンに視線を送った。そこにはヨハンからの、手紙と魔笛が入っている。
これから先どうするか、なんてもう決まってる。
ーーカルミアの瞳は、強い決意を抱いていた。
しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

従者は知らない間に外堀を埋められていた

SEKISUI
BL
新作ゲーム胸にルンルン気分で家に帰る途中事故にあってそのゲームの中転生してしまったOL 転生先は悪役令息の従者でした でも内容は宣伝で流れたプロモーション程度しか知りません だから知らんけど精神で人生歩みます

冤罪で堕とされた最強騎士、狂信的な男たちに包囲される

マンスーン
BL
​王国最強の聖騎士団長から一転、冤罪で生存率0%の懲罰部隊へと叩き落とされたレオン。 泥にまみれてもなお気高く、圧倒的な強さを振るう彼に、狂った執着を抱く男たちが集結する。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

囚われた元王は逃げ出せない

スノウ
BL
異世界からひょっこり召喚されてまさか国王!?でも人柄が良く周りに助けられながら10年もの間、国王に準じていた そうあの日までは 忠誠を誓ったはずの仲間に王位を剥奪され次々と手篭めに なんで俺にこんな事を 「国王でないならもう俺のものだ」 「僕をあなたの側にずっといさせて」 「君のいない人生は生きられない」 「私の国の王妃にならないか」 いやいや、みんな何いってんの?

魔王の息子を育てることになった俺の話

お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。 「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」 現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません? 魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。 BL大賞エントリー中です。

妖精です、囲われてます

うあゆ
BL
僕は妖精 森で気ままに暮らしていました。 ふと気づいたら人間に囲まれてました。 でもこの人間のそばはとても心地いいし、森に帰るタイミング見つからないなぁ、なんて思いながらダラダラ暮らしてます。 __________ 妖精の前だけはドロ甘の冷徹公爵×引きこもり妖精 なんやかんやお互い幸せに暮らします。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 【ご報告】 最終回まで予約投稿済みです。 毎日8時・20時に更新予定です。

処理中です...