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第一話 The Black Ones (3)
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「アイちゃんはやく!」
到着した海に向かって真っ先に走り出したのは友達だった。
「待ってよー」
砂浜の熱さを足裏に感じながら友達を追いかけ、海の中に走りこむ。
直後にわたしの顔面に海水が襲い掛かってきた。
先に海に入った友達がわたしに向かっておもいっきりかけたのだ。
わたしも負けじとやり返す。
「ちょっと、アイちゃんやりすぎー! 目が痛いってば!」
そんな子供らしい応酬を何度か繰り返したあと、じゃれあいは追いかけっこに変化。
いたずらっ子ぽい顔で追いかけてくる友達から逃げる。
本気では逃げない。わざと捕まってあげるのがルールのように感じるから。
間も無くわたしは追い付かれ、後ろから抱きつかれる。
押し倒されそうな勢いで抱きつかれること自体は予想できてたんだけど、
「ちょ、ダメだって! そんなに強くしがみついたら水着が!」
友達が掴んだ場所はあまりにも危険な場所だったから、わたしは思わず叫び声をあげてしまった。
そしてわたしは抗議の声を上げながらも聞き逃さなかった。
「いいなあ……アイちゃんずるい」
友達がわたしのアレを水着の上からわしづかみにしながらそんなことをつぶやいたのを。
わしづかみにしている部位を比較したと思われるセリフだ。
イヤな予感がした。
このままイタズラの勢いでとんでもないことをされるのでは、そう思った。
その予感は直後に的中した。だからわたしはさらなる抗議の声を上げた。
「ちょ、それは本当にシャレになってないってば!」
くすぐったさと、水着がとれるかもしれないという恐怖感が混ざり合い、黄色い悲鳴に変わる。
その悲鳴が通じたのか、友達の腕はゆるみ、手は止まった。
しかし違った。わたしの抗議を聞いてくれたわけでは無かった。
友達の心は突如あらわれたあるものにとらわれていた。
友達は水平線を見つめていた。だからわたしも同じようにその方向に視線を向けた。
すると瞬間、わたしの心もソレにとらわれた。
そこにはスゴイものがいた。
ファンタジー小説にでてくるドラゴン、ソレはそう見えた。
蛇のように胴が長く、全身が七色に光っている。
ソレは虹を描こうとするかのように、海面から飛び出してはアーチを描いてまた潜るを繰り返していた。
七色に光っているから本当に虹っぽく見える。
そのキラキラにみとれてると、後ろからお姉ちゃんの声が響いた。
「アレはこの海の守り神様よ」
続いて、お母さんの声が響いた。
「夏祭りが近いから挨拶しにきたのね。でもこんな風に堂々と姿を見せにくることは滅多に無いわ」
ふーん、じゃあわたし達はラッキーだと思っていいのかな? 何か御利益を期待していいのかな? そんな思いを抱いたわたしは、ちょっとだけわがままなお願いを海の神様に向かってお祈りした。
……何をお願いしたのかって? それはヒミツ!
◆◆◆
遊び疲れるころには日が沈み始めていた。
夕日が水平線に沈んでいく。
それをわたしは見つめていた。
その時の感覚は……よく覚えてない。
水平線から声が聞こえたような気がした、と思う。
夕日が沈むその海の底から、誰かに呼ばれた、そんな気がした……はず。
すべてがあいまい。夢の中にいるような感覚だった。
だから、
「アイ!」
お母さんから力強く肩を掴まれてようやく、わたしは夢のような感覚から覚めることができた。
気付けば、膝下まで海につかってた。どうやらわたしは沖に向かって歩いていたみたい。
この時のお母さんは何かにおびえているみたいな顔をしてた。
なぜそんな顔をするのか。わたしにはそれを問うことができなかった。
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